一路西部へ…!
ジュリアンさんから依頼された俺たちは予定を大幅に変更し、本来は通る予定のなかった西部主要都市『ブゲキ』行きの汽車に乗っている。
ペンタ連合国は主要都市同士を結ぶ路線があり、さらに首都にも繋がっている。つまり上から見れば炎の中に☓印が描くように地形が形成されている。
「…シィドさん、ジュリアンさんがおっしゃっていたこと。どういうことだと思います?」
「……ん~、何だろうな?」
出発前にジュリアンさんが言っていたことは実は俺も気になっていた。
『皆様、ブゲキでは十分お気を付け下さい。あそこの代表は酷い疑心暗鬼で、それでいて決闘好きな方です。何かしら目立つ行動をしたらすぐにでも厄介ごとに巻き込まれることとなります』
疑心暗鬼なのに決闘好きってなんかイメージが結びつかないんだよな…。
だけど、代表にも会っておかなければならない。俺たちがこれからすることは代表を無視して行動できることではないんだから…。
「……ジュリアンさんが言っていたように、もしこの国の代表に危機が及んでいるなら…しかもその時に俺たちがその場所にいるならなんとかしねえとな」
みんなを見渡しながら告げると、こくっとしっかりと頷き返される。
いや、ピリノンはマツリにしがみ付いて寝ているから正確には全員じゃないんだが…。マツリはもう抵抗するのに疲れたようでされるがまま。しかもどこか表情が虚ろだ。
「……ここ?」
ブゲキの駅に着いたわけだが、そこはサウストと比べると一気に文明レベルが低下している。
「…まるで西部劇の世界だ」
そう。ミルルの言うとおりだ。荒廃した大地、乾燥した空気。まさに西部劇の舞台のような光景が広がっている。
同じ国内でどうしてここまでの格差が広がるんだろう?
少なくとも車窓から見えていた景色はそんなに変わらなかったんだが…。
「っと、こんなところで止まっているわけにもいかねえな」
時間が後どれぐらい残されているのかわからない以上早急に行動に移さなければ。
「ひとまず、代表に会えるかどうか確認に行くか」
「「「皆様、お気をつけて!」」」
車内まで来ていた護衛の人たちに見送られながらもブゲキの代表のところへ向かう。
「で、来てみたが…」
代表がいるという場所。それはジュリアンさんから聞いてはいたが…。
「……酒場じゃねえか!」
もう見た目は完璧に酒場だった。
「……とりあえず、入るか」
「ぎょわああーー!!」
扉に手をかけようとしたその時…!突如として扉を破って男が飛び出してきた。
「……はぃ?」
「シ、シィドさん…!?本当にここに入るんですか?」
「そうですよ!あの男の人なんで飛び出してきたんですか!?」
「……飛び出したっていうか、吹き飛んできたんじゃね?」
明らかに引いている子供たち。
「ったく!何を吹き飛んで来てんのよっ!私の前を汚さないでくれる!」
キャロルは平常運転でツン風のセリフを吐きながら手当てをしている。やめろ~!明らかにそいつには関わっちゃいけねえ雰囲気ができてるだろうが~!
「……おいおい、大丈夫かぃ?」
中から図体のデカイおっさんがぬぅっと姿を現した。
もうデカすぎて天井に頭擦れてんじゃん…。
「……お主でござるか?」
その男の前に立ちはだかって、睨み上げるマツリ…って何してんのっ!?
「あぁん?」
ほらぁ!怒らせた!
「あの御仁を吹き飛ばしたのはお主かと聞いておる!」
「…そうだが?」
「なぜあのようなことをしたっ!」
今にも一触即発の空気になりかけたが、それを止めたのは意外な人物だった。
「いやぁ~、勘違いしちゃいけないよ。僕が頼んだのだから」
そう、先程吹き飛ばされてキャロルに手当てを受けていた男だった。
彼は二人の間に流れる空気を無視するように間に入っていくと、マツリを引き剥がす。
「それにしても、君は強いね~。見た目通りのいい体だ!」
そして、こともあろうに自分を吹き飛ばした男の腕や胸板をポンポンと叩いて感触を確かめ始めた。
「何を――」
「――どうだい?僕に仕えてみないかい?この、西部主要都市ブゲキ代表の僕に、さ」
払い除けようとした男の腕を掴んでずいっと顔を近付けた男はそんなことを告げたのだった。




