変態!ストーカー少女
「…………バレた」
そりゃ、そこまで堂々と巻いてりゃばれるわ。
「ぬおおおっ!拙者の褌返すでござるよ~~~」
マツリはプチ混乱状態でピリノンの頭に巻いてある褌を取り返そうと躍起になっている。
「…………快、感」
そして、引っ張られて痛いはずなのにむしろ恍惚とした表情で抵抗し続ける少女。
……こいつってこんな奴だったっけ?
俺がこいつと戦った時は隙をついて攻撃してくるような油断のできない奴ってイメージだったんだけどな…。
「……あのぅ、とりあえずそちらの方を紹介してもらっていいです?」
「紹介、かぁ…」
ぶっちゃけよく知らないしなぁ。
「――ということで、ヤノン。お前に任せた」
「私ですかっ!?」
「だって、お前の方が一緒にいた時間は長いんじゃねえか?」
「いや、同じ町に住んでいたというだけで特に知りませんよ!」
「えぇ~、だって俺にいたっては刺した相手と刺された相手だぞ?」
言うなれば被害者と加害者だ。他に説明のしようがないだろう。
「わかりました。では、簡単に説明を…」
ようやく諦めたか。人間諦めが肝心ってな。特に面倒臭いことに関しては!
「彼女の名前は、たしか~、…そう、ココ・ピリノンなのですよ!」
「ピリノンさんか~。で、どういう人なんですか?」
「ええっと…、私たちが故郷フィアードという町の元代表クラン『青き虎』のメンバーで……それから~」
「ジョブは園芸師。つまりは植物使いだ」
「そう!そして、油断していたシィドさんを刺して倒した相手なのですよ!」
「待て。俺はまだ負けてなかったぞ!」
これはそのまま放置してるわけにはいかねえ。
「でも、ほとんど負けてたじゃないですか」
「あれは、毒を食らったからで、実力で負けたわけじゃねえ」
「…………雑魚」
「おいこら!聞こえてるぞ!」
誰が雑魚だっつーの。というか、マツリを相手にしてるのに随分余裕だなおい!
「――さて、じゃれ合いも済んだようだし…本題に入ろうか」
ごほんと咳払いをして話を切り替える。
マツリの褌はあの後、攻防の末ピリノンが服の中(しかも下着の中)にしまってしまったことにより強制的に諦めることとなった。その時のマツリの目がどこか別次元を見ているように虚ろだったのがとても印象的だった。
そんなことはどうでもいいが、こいつがマツリの褌などを盗んだ犯人ということでこいつに用が出来た。いや、決してマツリの下着を取り戻そうという気はない。欠片もない。
「…本題に入る前に一つ、聞いておきたいことがある」
「…………?」
「お前がマツリの褌やサラシを盗んだ…それは間違いないんだな?」
「…………当然。これぞ楽園への切符」
そう言って、褌を引っ張り出しスーハーと大きく息を吸い込む。
その様子にドン引きしながらも俺は核心をついた質問を投げかける。
「――だったら、お前はここから出ることが出来るか?」
「「「――ッ!?」」」
みんな驚いているようだったが、ピリノンの答えは実に明快なモノだった。
「…………もちろん」
それを聞いた時の俺の感想は『やはり』だった。
そもそも、こいつはどうやったのか俺たちの家に普通に忍び込んでいた。つまりは侵入のスキルか何かを持っている。俺はそう考えた。
「だったら、手を貸してくれ」
俺がそう言うと、少し考えるような素振りを見せ、
「…………条件」
目を真っ直ぐ見ながらそう返してきた。
「――わかった。その条件を呑もう」
ピリノンが出してきた条件。それは――俺たちに同行させろというものだった。
こいつのマツリへの執着からマツリ関連のことだと思っていたが、まさかこうくるとは…。
当然のごとくマツリから猛烈な反対にあったが、緊急事態だということと数の暴力で黙らせた。
だって脱出の手段は多い方がいいだろう?
武器も普通にあるので出ようと思えば出ることは簡単だ。
少なくとも俺、ミルル、キャロルの3人が力技でいいのなら脱出することはできる。だが、理由もなく捕まっている以上…下手に脱出して相手に口実を与えるわけにはいかない。
マツリ、俺たちのために尊い犠牲になってくれ…!
仲間というか、同行者になった途端ピリノンはマツリに仲間同士のスキンシップという名目でくっつき始めた。
仲間同士のスキンシップなのにマツリにしか絡んでいってはいなかったが…。
抱き着かれ、着物の内側に手を入れられて下着を見られ(下着は彼女がプレゼントした物なので問題はないのか?)、匂いを嗅がれ、さらには身体を舐めつくされる。
その行動に声にならない悲鳴を上げながら逃げ回るマツリ。そして、それを尻目に作戦会議を重ねていった。
時折、目が合った時にはいない者として扱うのを忘れずに…。
余談だが、マツリが舐め回されているのを見ながらキャロルがうずうずしていた。おそらく、彼女の中に眠る犬の本能が舐め回したい衝動を起こしていたのだろう。
だが、プライドがそれを許さなかったキャロルは舐めるではなく、まるで撫でろと言わんばかりに全員に頭をこすり付けて回っていた。
一言言っておく。
「うちの犬かわええ……」
この後、身悶えながら撫で回してやったのは言うまでもない。




