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新たな2歩

 はい予告通り辛勝突入です。

「さっさとしなさいよね、この下僕共っ!」

 俺たちがしていた食事の用意を掻っ攫うようにやり始めた犬耳メイドことキャトル。名前の由来は向こうの世界の犬種で、命名はルルミちゃん。(自動車事故からも想像はついていたが、俺と同じ世界の出身らしい。いつの時代かはわからないが)

 俺は意地でもチャウ・チャウと付けようとしたんだが、全員の反対を受け止む無く断念した。


 そして、このキャトル。口では反抗的なのに、態度はメイドそのもの。まさに、口がツンで体はデレのツンデレメイドだった。


「(キャロルは本当に口が悪いですね)」

「(…たしかにな。だったら、動きもそっちに合わせてくれた方がいいよな。ややこしいったらありゃしない)」


「聞こえてるわよっ!」

 キャンキャンうるさいなぁ。

 キャロルは犬耳らしく耳もいいし、身体能力も高い。旅に同行することも考えて生み出されたというだけはあるな。


「さあ、食べなさい!下僕共!」

 食事が始まってもキャロルは忙しなく動いて水が少なくなれば注ぎ、口周りが汚れればサッと湿らせた布を差し出す。

 これで性格さえなければ完璧なんだが…。




「――さて、明日にはペンタ連合国の南部主要都市である『サウスト』に入ることになる」

 食事もひと段落した辺りでそう切り出した。

 ちなみに、先程まで騒がしかったキャロルは毛布に包まって丸くなっている。生まれたてだからかキャロルは活動限界が短かった。

 

「ようやく、最初の都市でござるな」

 実はもう既にペンタ連合国領内には入っている。

 ただし、町や村などの人がいる土地には一度も入っていない。いや、正確に言えば入れないというのが正しいか。

 ペンタ連合国は外国と隣接する地域には人を置かない方針らしく、ナイフォワ王国それにジルバニア公国と隣接する地域では主要都市の内側にしか人の住んでいる場所がない。

 そもそもペンタ連合国が内側の結束が強いというのは理由がある。

 実は、首都と東西南北に存在する主要都市を繋ぐ大きな橋があることがわかっている。つまりは、都市間を繋ぐ橋とその都市の周辺に広がる人口密集地という感じだ。

 

「さて、最初の都市になるわけだが……まあ、ここまで排他的とは思わなかったな」

 本来なら主要都市に入る前に1つ2つぐらいの町を通るだろうと高を括っていた。だけど、まったく人に会わずにここまで来てしまった。

 ここまで来ると情報がまったくない。どうしたものか…。


「まあ、とりあえず入ってみるしかないのですよ」

「…それはそうなんだが」

 こうなってくると、マツリが一か所でも通っておいてくれれば話が早かったんだがな~。


「……だったら、二手に別れるっていうのはどうですか?」

 ルルミちゃんの提案はこうだ――まず、一組目が様子見に入り続いて後続が続いていく。そうすることで一緒に巻き込まれるのを避けるのと同時に巻き込まれた方を残った方が助けに行く。

 

「じゃあ、発表するぞ」

 くじ引きの結果、先行隊に俺、マツリそれからルルミちゃん(クレア含む)。後続組がヤノン、ミルルそしてキャロル。

 暴走しがちなメンバーが後続にまとまってる気がしてそこはかなく不安なんだが…。

「しょうがないわね、私が下僕共を安全に誘導してあげるわっ!」

 お前も十分な不安要素だよ。


「まあいいや。なるようになるだろ」

 こうなりゃ自棄だ。




「――で、結局こうなったわけだが…何か言うことは?」

 次の日、入る前に別々に別れた俺たちは南部主要都市サウスト…その牢屋で再び顔を合わせていた。


「……おかしいわね~?私の動きは完璧だったと思うんだけど…」

「そもそも捕まった理由がわからないのですよ」

「オレにも身に覚えがねえ!」


「…それを言うならボクたちもだよ~」

「そうでござるな。ひとまず都市サウストに入ってヤノン殿たちが来るまで大人しくしていたでござるが…」

「ああ。カフェでのんびりお茶を飲んでたらいきなりだったな」

 まったく!意味が分からん。


「そういや、オレたちを捕まえた衛兵が変なこと言ってたよな?」


「…ああ。効果展博とか、チラリズムとかって言ってたあれ?」

「いえいえ、国家転覆、テロリストですよ」

 何をどう聞き間違えたらそんな聞き間違いを…。

 だが、キャロルのアホ発言は置いとくとしても…、随分物騒な話だな。

 

「ヤノン、この国はそんなに治安が悪いのか?」

「どうでしょう?ナイフォワ王国で見た資料にはそれほど治安が悪いとは書かれていませんでしたが…」

「……そもそも、それほど危険ならばチタニア殿やエリザベス殿から一言注意あるいは忠告があるのでは?」

 それもそうか。

「それに、国家転覆もテロリストも国内の治安というよりは諸外国からの外部干渉ということもあるかもしれませんね」

「……ルルミちゃん、難しい言葉知ってるね」

「……?そうですか?元の世界ではニュースとか学校の授業で習いましたよ?」

 う~ん…、俺が考える以上にルルミちゃんたちがいた世界は不安定だったのかな?

「そんなことよりっ!これからどうするのよ!?」

「…そう喚くなキャロル。今考えてるよ」

 とはいえ、事態が把握できていない以上下手に動くのは得策とは言えないな。

 これじゃあ、せっかく二手に別れた意味がないな。

 それに、気になることもある。

 そんな危険人物と間違われているにしては俺たちの扱いがおかしい。

 いや、そりゃいきなり問答無用で捕まってこんなところに放り込まれはしたが…。けれど、武器は取り上げられていないし、クレアも別の檻に入れられているとはいえ一緒にいる。

 もし国に何かしようとしている人間だと思っているならばあまりにも扱いが雑じゃないか?


 そんなことを考えていると、ギギィっと俺たちが入ってきた扉が開き、

「ここで大人しくしてろっ!」

 新たに一人放り込まれてきた。


「…………不覚」


「…あっ!」

「ああ~っ!?」

「おぉ?」

 その人物を見て、俺たちは目を丸くした。


「「「………誰?」」」


「あ、あなたは…『青き虎』の!?」

「……たしか、ピリノンとか申す者でござるな」

 そう、放り込まれてきたのは『青き虎』――いや、解散しているから元『青き虎』と呼ぶべきか――のメンバー。ココ・ピリノンの…はず。


「……どうでもいいけど、その頭に巻いてる白い布って」

 包帯じゃねえよな?凄く既視感が漂うものな気がするんだが…。


「ああっ!?盗まれた拙者の褌っ!!」


「…………いかにも」

 いや、踏ん反り返られても…。というか、何でお前がマツリの褌を持ってるんだ?しかも、頭に巻いてるって…。


 ただでさえややこしい状況なのに、さらにややこしい奴が入ってきた。そう思わずにはいられない乱入者の登場に俺たちはより一層混乱していた。

 マツリの褌事件についてはこの前の閑話をご覧ください。

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