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ゲコゲコ鳴くもの

 あと数話で王都のお話は終了予定です。双子やチタニアを出したかっただけでホントにちょろっと寄っただけなので…。

「――こっちこっちよ。ここのお店もいいわねぇ~」

 あれから女王もチタニアさんも自分たちのことを証明できたことで満足するかと思いきや、なぜか一緒に市街を巡っている。

 

 なんでも、『せっかくお城を抜け出したんだから、楽しまなきゃ損!』ということらしいが…。いいのかね?本当に…。


 ちなみに、直属騎士団の団長であるチタニアさんがいるとはいえ、一人だけの護衛ということはない。俺たちの他にも、先程のメイドさんが3人と追加の護衛気付かれないように後を追ってきている。


「あっ!あなた達アレを見なさい!レキシントリア名物のゲコポン専門店よ!」

 興奮気味に駆け寄っていく女王について行った先にはカエルを模した店がでぇ~んと構えていた。


「……カエルか。なんかゲブロックを思い出すからいい思い出はないな」

 あいつは本当に面倒くさい相手だった。

「ゲブロックは特殊な分類ですよ」

「そうなんだがなぁ」

 なんだかな~。

「ヤノン殿、ゲコポンとは何なのでござるか?」

「…さあ?王都名物ということはもしかしたら王都や主要都市でしか売ってないモノかもしれませんね」

「気になるでござるなぁ」

 たしかに、気になる。まさか、そのままカエルを売ってるってことはないよな?


「…こ、これが、ゲコポン!?」

「うわぁ~、面白いですね!」

「……おい、ルルミ。お前のその変な感性は何とかならないのか?」

「えっ?面白くない?」

「……まあ、面白いっちゃ面白いかな?」

 甘っ!ルルミちゃんに甘いな~。

 

 ゲコポンの正体は果実だった。

 大きな緑色の果実で、ゴムボールのような大きさとぶつぶつした皮。柑橘系の独特の匂いもある。


「……色が緑だから、ゲコポンなのか?」

「ふっふっふ、残念!正解は…コレよ!」

 もぎ取ったゲコポンを思いっ切り地面に叩き付けた。

「……なっ!?」

 叩き付けられたゲコポンはバイ~ンと弾んでいく。その際の音がゲコゲコに聞こえないことも…ないのか?

 というか、いきなり何をしてんだ?

「…どうっ!」

「いや、どうって言われても…。何やってんすか?」 

 女王陛下にこんな口の聞き方前なら絶対しなかっただろうな。

「あら?面白くなかった?」

「いや、面白いとかじゃなくて。…それ、一応食べ物でしょ?国の代表が食べ物を粗末にするような真似をするのはどうなんですか?」

 俺は冒険者だが、ジョブは料理人。食べ物を粗末にするような真似はあまり好ましくない。

「違う違う!これはこうやって食べる物なの!」

 へっ?

 よく見れば店内では大人から子供まで老若男女問わずにゲコポンを弾ませていた。

「こうやって弾ませていくことでゲコポンはどんどん黄色くなって甘みが増していくのよ。他の食べ方だとぬるま湯に浸して徐々に火をくべていく方法かしらね」

「ゲコポンの大まかな食べ方はそれだが、弾ませるとさっぱりと爽快な味になり、温めるとほんわか優しい味になる。その状態でさらに加工していくのも料理人の腕の見せ所だな」

「……へぇ~」

 初めて二人がまともに見えたな。


「うまっ!」

 それからはゲコポンの実食だ。

 頼んだのはゲコポンのシャーベットとゲコポンのパイ。

 基本的に冷たい食べ物には弾ませたゲコポンを、温かい食べ物には茹でた物を使うのが一般的らしく。

 食べれたさっぱりするのと内側から温まるような感覚。

 面白い食べ物だ。

「本当に美味しいですね~。なんで王都近郊にしか置いてないんでしょうか?」

「うう~ん、結構売り出そうとしてるんだけど…」

「ゲコポンは木からもぐと途端に鮮度が落ちていくからな。もいだらすぐに処理しなければならない」

「……で、処理したらあまり長い間移動させるわけにはいかない、か」

「そういうことだ。だからなかなか、輸送が難しくてな」

「そうそう。今は幹から改良を重ねているところなのよ」

 上手くいかないもんだ。


 それからもあちこちの店に付き合わされた。

 ウインドーショッピングはもちろんのこと、食べ歩きに、舞台、銭湯(俺とミルルは留守番だったが)など目的もわからない行動に疲れ果てたのは言うまでもない。




「……へぇ~、それは災難だったわね」

 屋敷に戻った俺たちは解放される…わけもなく。そのまま酒宴になだれ込む。

 今はどうしてルルミちゃんたちと一緒に行動しているのかを話していた。


「やっぱり、もうちょっと早くあの伯爵は捕まえておくべきだったわね」

 話がマジックバック事件で捕まったリュード伯爵へと移っていく。

「あの伯爵、家が結構な格式で尻尾を掴まないと手が出せなかったのよね~」

 面倒だったわ~と愚痴りながら酒を飲み、グラスが空になる頃には傍に控えているメイドさんがお酒を注ぐ。


「…そういえば、王都でマジックバックを扱っている店ってもうないんですか?」

 ルルミちゃんたちのためにもこれは聞いておいた方がいいだおる。そんなに高くないのならば俺たちも手に入れておきたい。

「ないこともないけど、昔に比べたらかなり数は減ったわね」

 しかも、数が減って希少価値が上がるとリュード伯爵のようなのが出てくる。だからこそ、取り締まりが厳しくなりわざわざマジックバックを取り扱う店が減っているそうだ。 


「まあ、材料が材料じゃ。仕方あるまい」

「材料って何なんですか?」

 聞いてなかったわ。材料がわかれば自分たちで捕まえ方が早いかもしれん。


「「――ドラゴンよ(じゃ)」」


 ………はい?

「ドラゴン!?えっ、それって…」

 俺の頭にはあんぎゃーなどと鳴きながら背中に翼が生え、火を噴いている姿が思い描かれる。

「…まあ、概ねお前さんが想像しているようなので合ってると思うぞ?」

「大きさは大体数百メートル。災害種にも匹敵すると言われる化け物よ」

 災害種っ!?

 つまりはあの獄炎鬼と同レベルってことか。

「そんなに強くはないじゃろう?災害種は人の手で対処するのがおかしいレベルじゃが、ドラゴンならばまだ倒せないことはない」

「……さすがは元トップクラスの冒険者。言うことが違うわね」


 へえ、んじゃ生息場所を聞いて挑戦してみるのもありかな。そんな思いは続けられた言葉であっさりと挫かれることとなる。

「とはいえ、ドラゴンも最低でもフルパーティクラスの戦力が欲しいところじゃがな」

 フルパーティ…つまりはパーティの最大定員人数10人程度の人数が必要ってことか。言ってしまえば、災害級が対クランクラスと比べると少しは楽程度。

 こりゃ、俺たちじゃ無理だな。

 固定メンバーはヤノンと俺だけ。マツリも目的を達成したら離れていくだろうし…。


「おっと、話が逸れとるな。ちなみに、ドラゴンの中でも次元竜と呼ばれる種になる」

 ……次元竜、強そうな名前だ。

「そのドラゴンは食道…喉から胃を通り、肛門に至るまでが異次元へ通じていると言われておってな。その部分を使えば次元が歪んでおるから多くの物を入れられ、さらには時間も狂っておるようで腐ることもない」

「それだけ聞くと便利だけど、それを取るのは大変なのよね」

「…まあ、実力のない者が行ったところで喰われて終わりじゃろ」

「…だから、素材の入手が難しいのよ」

 なるほど。それは納得。


「でも、ボクたちどうしても欲しいんですっ!」

「そうだぜ!やっぱり、冒険者たる者マジックバックは喉から手が出るってもんだ!」


「――そうじゃな。ならば信用できる店を紹介してやるか」


「「「やった~!」」」

 歓喜の声を上げる双子。

 ……あれっ?一人声が増えてるぞ。

 見ればヤノンまで万歳している。

「…おい、ヤノン?」

「シィドさん、こんな機会を逃す手はありません!私たちもせっかくですから買っちゃいましょう!」

 買っちゃいましょうってお前。

「いくらすると思ってんだ!あの店はぼったくりだったとはいえ、5㎏で20万(メダ)だぞっ!」

「冒険者として活動するなら大体、1クランで数百キロのを1つか2つ持っているのが常識じゃ。あまり少ないと冒険者には心もとないからな」

「ほらみろっ!俺たちは旅の途中なんだ、無駄な金は使えない」

「い~や~なのですよっ!ここで買っておけば色々便利になるではありませんか!」

 駄目だ。聞く耳持っちゃいねえ。


 まるでおもちゃ屋で買ってくれるまでやめないと言わんばかりに床に寝そべってジタバタし始めたヤノンを見て俺はどこかで観念してしまっていた。

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