新たな1歩
新章開幕という感じです!設定集も更新したので見てください。
旅に出ることを決めてから数か月。この間にこの世界で初めて新年を迎えるなどいろいろ体験したが、いよいよ準備の整った俺たちは今、フィアードの門へ来ていた。
「よぉし、これから旅に出るわけだが、忘れもんはないか?」
「ないのですよ」
「拙者、元よりほとんど何も持っておらぬゆえ!」
俺の言葉に、ヤノン、そしてマツリが続く。
「……それにしても、本当に行くとはね。決断が早いのはいいことなのか、悪いことなのか」
「…あら、遅いよりはいいことだと思いますわよ?」
「そうですね。私もそう思います」
「……ううっ、ヤノンちゃん気を付けてねぇ~」
見送りに来てくれていたアフィやリリィさんなどの『貴婦人の話題』の面々。
「…シィドさん、ヤノンさんお気をつけて!」
「三人とも元気で帰って来るのよ!アタシが待っててあげるからね!」
「ガッハッハ、留守の間もお前らの家はしっかりと管理しておいてやる!安心して行って来い!」
さらに、シェナさん、ルンデルハウスさん、おやっさん。
ちなみに、シェナさんは『青き虎』との騒動の後、フィアードへ残ることにしたようだ。今では、ガルロンさんの下でしっかりと働いている。
何が理由かは知らないが、よかったと思っている。この話をするといつもヤノンをはじめとした女性陣|《マツリを除く》にからかわれるんだけど……なんでだろう?
「……で、これからどういうルートで行くかは決めてるのかい?」
「ああ。それはバッチリだ」
マツリときちんと話し合って基本的には道を通って行くことにしている。これで来る時のように道なき場所を通って道に迷うようなことはないだろう。
――来る時はうんうんコアラを探していたこともあり、基本的に森に入っていたのも原因だったようだ。
「…まずは、王都を目指す。それから国境を超え、隣国を通ってジルバニア公国を目指していくつもりだ」
「基本的には町を通ることになるので、食料なども少なくて済みます。必要経費も一応このひと月で集めておいたので、大丈夫でしょう」
まあ、駄目だったら臨時の仕事を探していけば十分なはずだ。
「……王都によるのですか?」
「ええ、そのつもりです」
「でしたら、マリア……っていつまで泣いてますの!シャキッとしなさい!」
「…うえぇ~、でぼぉ~!」
「……まったく。とりあえず、マリア王都に行く際に渡していた面会状あなたが持っているのでしたわよね?」
「…うん。あるよ…はい」
「……では、シィドさんこれを渡しておきます。もし、王都で困ったことがあったらこれを見せるとよろしいですわ」
そう言ってリリィさんは一通の手紙を差し出した。
「……これは?」
金色のリボンや薔薇の封蝋……、結構重要そうな物に見えるんだが。
俺の疑問にはペルニカさんが答えてくれた。
「それは、王都にいるある人に会うための書状だよ」
なんでも、その人はかつてリリィさんたちと同じクランに所属しており、リリィさんにとっては師匠にもあたる人らしい。現在は冒険者を辞めて王都で友人である身分の高い人の護衛をしているらしい。
その人に会うために必要な書状ってことか。
「…だけど、俺面識ないですけどいいんですか?」
「大丈夫、大丈夫!それを持っている人なら普通に会えるから。私たちは普通に顔パスで会えるんだけど、時間が取り難いからって渡されてただけだし」
後から本人に聞いた話だが、別れてからずいぶん経つ今でもたまに3人のうち誰かを呼びつけて稽古をつけているそうだ。
それからも数人と別れを済ませ、俺たちはフィアードを後にした。
「……次、ここを見る時は俺たちは成長してるかな?」
「おやおや、シィドさん旅立って間もないのにもうホームシックですか?」
「……ホームシック、そうかもな」
俺にとってここ(フィアード)はもう故郷なんだな。
「大丈夫でござる!ラギリ村までは最短で2か月ほど。『男子三日会わざれば刮目して見よ』というではござらんか。帰って来るのに、最短で4か月つまりは刮目どころか目を疑うに違いないでござる!」
((それは、何か違うと思う))
俺とヤノンはそんな風に考えたが、あえて突っ込まないことにした。
これだけの間にマツリの取り扱いだけは異様に慣れて来たな。
「…まあいい。旅に出てみりゃ成長するかどうかなんてすぐにわかるだろう!」
そうして、最後にフィアードの姿を目に焼き付けてから振り返ることなく、旅立った。
次にフィアードを見る時に胸を張って帰ってこられるように…。
「……………」
そんな俺たちをジッと見つめていた人影。その人影は気付かれないように注意を払いながら、その場を後にした。
――ただ、この時は予想だにしなかった。まさか、戻って来た時に平和な町フィアードが大きく様変わりしていることなど。
それこそ、マツリが言ったように目を疑うことになるなどとは…。
「……行ってしまいましたわね」
「そうだね」
シィドたちの背中が見えなくなり、リリィの呟きに応える。
シィドが来てから町が騒がしかった気がするけど、それもいい思い出だな。
「…まあ、シィド君たちは結構使えるようになってるし大抵のことは大丈夫ですよ」
「……そうね。あの3人なら大丈夫よね」
「……戻ってきたら、盛大にお祝いをしてあげないといけないわねっ!」
「「もちろん!!」」
…シィド、君はこの世界でたしかに居場所を作ったんだ。無事に帰って来るんだぞ!
――旅立ちを見送りながらフィアードで待つボクたちは日々の生活を送っていく。




