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「キャアアッ!」

 口を押えていた手に噛み付き、地面に放り投げられ悲鳴を上げる。

「今です!【ステルス】発動」

 スキルを発動したことで姿がすぅーっと背景に溶け込んで消える。


「……まったく、手間を掛けさせるな」

 はぁ~と呆れたようなため息を吐き、手を組むでむむむっと力む。

「……“分身の術”!」

 カッと目を見開いたかと思うとデヴィオが10人に分かれていく。

『てやあっ!!』

 円を組むように集まっていた10人が一斉に攻撃する。


「……ぎゃん!」

 攻撃を受けたことで【ステルス】が解けたヤノンが再び地面を転がる。


「ぬぬぬ…」

「諦めたらどうだ?お前では俺には勝てん」

 膝を着き、俯いているヤノンを見下ろしながら告げる。

「………それで」

 告げられた言葉に反応し、ぽつりと何かを呟いた。

「…んっ?」

「それで諦めるぐらいなら最初から抵抗などしないのですよ」

 顔を上げた時、その顔には髑髏のマスクが付けられており、まるで笑っているかのようだった。

「そりゃそうだな…」

 ニイッと笑って後ろに飛び退く。

 ――ボンッ!

 飛びのいた直後、何かを炸裂させたような音がしたかと思おうと煙が広がっていく。


(……二度も同じ手を食うかよ!)

「酒場では突然のことで反応が遅れたが、そんな見え透いた手に……、手に」

 ――グラッ

「…クッ!」

 足元がふらつくのを気力で持ちこたえさせる。


 今回ヤノンが使ったのはヘベレケ玉。しかも遠慮なく希釈をしていないのを使っている。

 これで倒れないのは単にデヴィオが忍者装束で口布を使っていて吸い込む量が少なかったからに過ぎない。


 ――バアン!

「ぬおおおっ!」

 ふらついていたところに突如吹いてきた爆風によって吹き飛ばされる。

 アルコールが充満していたところにヤノンのドッキリクラッカーから放たれた爆炎が引火し、誘爆を引き起こしたものだった。


 今のうちに…!

 ――ガンッ!

「(いつつ…。なんなのですか、もうっ!)」

 駆け出したと同時に何かにぶつかり、尻餅をついてしまう。

 マスク越しに顔を押さえつつ、何にぶつかったのかを探るが、見えるのは路地だけ。

「………?」

 おかしいと思いつつ宙に手をやると何かに触れた感触がある。

 コンコン。触れれた部分を触っていくと目には見えないが、壁のようなモノがあるようで、軽いノック音が聞こえてくる。

(……まさか、彼のスキルの正体は)


「……どうやら気付いたようだな」

「……そんなっ!?あれをどうやって掻い潜ったのですか!?」

 ヘベレケ玉の原液タイプなんて人間が吸い込めばそう簡単に復活できるものではないのですよっ!?

「やっぱり、お前は罠師ギミッカーだよ。こんな簡単な失敗にも気付かないなんてな」

 ……失敗?いったい何のことです。

「それにすら気付いてない、か」

 ムカッ!その言い方は癪に障るのですよ!

「…だったら、教えてやる。お前が起こした失敗はあの爆発だ!」

 そう言って未だに爆炎が燻っている地面を指差す。

 ……爆炎?あれの何が………あっ!

「ようやく気付いたみたいだな。そうだ。あそこで爆発なんてさせるからせっかくのアルコールの煙に引火しちまったんだよ」

 つまりは、煙が出始めたばかりでまだあまり充満していなかったのに、炎で消してしまった。そういうことですか。

「惜しかったなぁ。もうちょっと待ってりゃあ俺も少しは吸い込んでさらには爆炎でダメージを負っていただろうに…」

 体を見せてきますが、表面に軽い火傷こそあるものの深刻なダメージは見受けられない。


「……ですが、そのおかげで私もあなたのスキルの正体に気付きました」

 負け惜しみにしかなりませんが、ここはこう言うしかないです。

「……はんっ、負け惜しみだな。時間を置いても気付くことはできたかもしれんぞ?」

「…あなたのスキル。それは幻ですね?」


 そう、それならば説明が付くのです。幻だったら避けたと思った攻撃が当たるのも、いつの間にか背後にいるのも納得できるのです。

 おそらく背後に回る時には【隠密】とやらも使っていたに違いないのです。

 

「……うう~ん、少し惜しいな。俺のスキル…いや、ここはジョブにならって忍法とでも言っておこうか。つまり俺の忍法は【幻術】だ」

 【幻術】つまりは幻を見せる術。

 荒唐無稽すぎて対策が思いつかないのです。

(………そういえば、なんでシィドさんの攻撃は当たったのでしょうか?)


「さて、もういいか。それじゃあ、眠っててもらうぜ」

 もう…打つ手が。


 ――パン、パパァン

 覚悟した時にその音はたしかに耳に届いた。




 『――バアン』地上したから響いてきた。

(………ぐ、今の音は?)

 ……ヤノン、か?今ので倒せたとは思えねえ。あいつにヒントを教えてやらねえと。

 少し休んだおかげで少しずつだが体に力が戻ってきた。

「……、ぬ、ふぉっ、ぬおおお!」

 なけなしの力を振り絞りうつ伏せから仰向けに変わる。

(……よしっ!ヤノン、気付けよ)

 上へ向かって【フレア】を放つ。

 メッセージを乗せて上昇していった火の玉が弾ける。


(あの、合図は…)

 シィドさんとパーティを組んでからいくつかの行動パターンは決めた。その中には当然、声を上げられない場合もある。そうした時に必要な合図を決めておいた。

 そして、今上がった合図。その意味は……。


「やってやるのですよ」

「あん?何言ってんだお前?この状況で何が…ぐっ!」

(やった!成功した)

 畳み掛けるように武器ドッキリクラッカーを構え、ほとんど直接当てる位置で引き金を引く。

 バンッ!と飛び出たグローブがお腹にめり込み、「ぐふっ」という声を漏らす。


 先ほど上がった合図。あれの意味するところは『同時に』。つまり、この男の【幻術】は一方向あるいは一人にしか効力を発揮しない。

 だから、あの時のシィドさんの攻撃を避けることが出来なかった。

 そして、私の【影追い】。派生スキルは個人によって違う。つまりは予想することなんてできない。知っていたとしてもこの状況で答えに自力で辿り着くとは思わなかったので対策を取らなかっただけかもしれませんが…。

 普段は囮にしか使えないスキルですが、注意を向ける程度になら活用することが可能です。


「うわあああああっ!!」

 バン!パアン!パパン!何度も、何度も炸裂音が響いていく。その度に上がる呻き声を聞きながらも、さらに引き金を引き続ける。

「…………」

 ドサッ。そして、ようやく男が気を失った。

 力なく横たわる男にロープを巻きつけて拘束し、勝利の雄叫びを上げました。

「勝ちましたですよーー!!」

 ――パン

 そして、それに応えるかのように空に上がって弾ける火の玉。

 『青き虎』サブマスター:グリオラ・デヴィオとの勝負はヤノンの勝利で終わった。彼、デヴィオはシィド&ヤノンのチームワークによって敗れ去った形となった。

 



 ――ヤノンとデヴィオの勝負が着いた頃、もう一つの戦いにも終結の時が訪れていた。

 

 全身に花を生やし、横たわる人影とそれを見下ろす人影。

 見下ろしていた方の人影が地面に落ちていたネギを拾い上げる。

「……ふぅ、なかなか手強い相手でござった」

 キンと鍔鳴りが静けさに染み込む。



 ――少し前のこと

「…………【成長】」

 少女のか細い声が聞こえ、彼女の足元に生えていた雑草が急激に成長していく。

 少女――ピリノンをすっぽりと覆い隠すほどまでに急成長した雑草。

 ――ビュッ!

「せいやっ!」

 突如向かってきたモノを払うようにネギを振るう。

 辺りを覆い隠すように生い茂った雑草と共に蔦が地面に落ちる。

「……なんと!?」

 しかし、切った雑草はすぐさま成長し元のように生い茂っていく。


 ――ヒュンヒュンヒュン!!

 縦横無尽に放たれる蔦の嵐。

「はああっ!」

 それをすべて切り伏せていくマツリ。

「読めたっ!“宵明けの刻”」

 ポンと軽い音を立てネギの先に黄色い花が咲く。咲いた花びらを撒き散らしながら斬激が飛んでいく。

「手応えあり!取ったでござるよ」

 斬激の放たれた先で何かを斬った音、それに続きドサッと倒れるような音が聞こえてきた。


 慎重に近付いていく。

「……これはっ!?」

 あったのは人形をした木の塊だった。

「……図られたかっ!」

 ――ザシュ!

「…ぬあっ!な、何!?」

 木の塊から目を離しし、周囲を見渡していると塊の中から現れたピリノンによって切りつけられる。


 そして、マツリもシィド同様に崩れ落ちる。


「…………紅潮」

 ナイフに付いた血を舐めとりながら呟いた少女の頬はたしかに紅潮していた。


 先ほどのマツリとは違い、堂々近付いていくとおもむろに顔を近づけ、彼女の頬をぺろぺろと舐めはじめる。

「……んっ、美味」

 そのまま何を思ったのか仰向けにするように体を起こそうとし、――ヒュパ!という風切り音を耳にする。

「…………痛覚?」

 下を見ると先ほどまで横たわっていたマツリの姿はなく、代わりにところどころ切り裂かれた自分の衣服が視界に映る。切り裂かれた衣服の下からは血が噴き出し、傷口からは花が芽吹いていた。

「…………くっ、【腐敗】」

 植物なのに園芸師ファーマーである彼女にも操ることが出来ず、スキルを使っても枯らすことのできないその花は彼女の血液を養分として桃色の花を幾輪も咲かせ、やがて彼女の体を埋め尽くしていく。


「…………満足」

 自らの敗北を悟ったのか、はたまた戦いの行く末に満足いったのか。咲いた花を見つめ、ピリノンはそのまま倒れた。

 

「……まったく、だまし討ちとは卑怯千万!」

 自分も同じようなことをしておきながら棚に上げてよく言ったものだ。

 ぽんぽんと肩を叩くネギには今度は桃色の花が咲いていた。

「“桃源郷への誘い”。この技を食らったからには起きる頃には正気を取り戻していよう。……現実から目を逸らすことなく精進するでござるよ」

 

「……さて、シィド殿たちの方の戦も片が付いたようでござるからな。

 刀を仕舞ったマツリはシィドたちの下へと足を進めた。


 『青き虎』所属:ココ・ピリノン……欲に溺れ敗北。

 しかし、その寝顔は敗者であるにも関わらず実に満足そうな表情かおであった。

 これにて三幹部との戦いは終結。いよいよボスとの戦いが幕を開けます。とはいえ、ボスとの戦いは期待しないでください。考えているのはかなり呆気ない終わりかたですので。

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