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おまけ:その後の集落

 これで番外編終了です。次回は月曜日更新予定で、本編を更新します。

 僕……いや、私の名はチュスコ・イジャン。つい最近ロチーノという小さな集落を亡父から引き継いだ新人の代表です。


 私は臆病な人間です。

 幼い頃から先代の代表だった父に厳しい教育に耐えきれず逃げ出した卑怯者だ。

 

 そんな私に弟はのプシオーいつも無責任だと突っかかってくる。そんなこと言われなくてもわかってる。だから、父からも次期代表の重責からも逃げ出した。


 だけど、他に得意なことがあったわけでもない私が出来ることなどなく、他所に行っても結局逃げ出した土地持ち(オーナー)スキルの修行をしていた。


 数年が経った頃、故郷の祖父から突然父の訃報が舞い込んできた。


『今更何をしにきた!?貴様のような奴にここにいさせる気はない。さっさと出ていけ!』

 戻った私にプシオーは烈火のごとく怒りを顕にする。

 毎日のようにプシオーから責められる日々が続いた。

 そんな私たちに祖父から提案があった。能力ちから比べをして実力が上の方が次期代表に就任しろ。そういう提案だった。


 もちろん私が負けたら追放という条件付きで、だ。


 祖父からの提案に弟は飛び付いた。

 修行が嫌で飛び出した私が修行をしているとは考えもしなかったのだろう。

 ――しかし、勝利したのは私だった。

 弟は猛烈に反対したが、祖父の一声で大人しくなった。

 

 祖父はどうやってか知らないが、私が修行を続けていたことを知っていたに違いない。それと同時に弟がまだまだ修行不足だということにも気付いていたのだろう。

 ただ、祖父の唯一の誤算は修行を続けていた私の力も弟と大差なかったことだろう。

 やはり惰性で嫌々身に付けた力では意味がないということだろうか。


 そして弱い力は新たな問題を引き寄せた。


 結界の範囲が狭まり、バリケードギリギリまで魔物が押し寄せるようになるのと魔物の発情期が運悪く重なってしまった。


「ど、どどど、どうしようじいちゃん!?」

「そうだぜ、早く対処しねえと……」

「落ち着くのじゃ!」


 祖父の提案で外部の冒険者に依頼することになった。

 そして現れたのが帝都で最近名を挙げているという『終焉の来訪者』所属のザイさんとペソちゃんの奇妙な二人組だった。

 はじめはこの二人で大丈夫かな?と不安だったけど、ザイさんの方はアーティスト(A)の称号を持つ凄腕だとわかってじいちゃんは彼らに依頼することに決めたようだ。


「ほっほっほ、その若さでアーティストとは、素晴らしいですな」

 じいちゃんが露骨に態度を改め接待するのを見ていることしかできなかった。

 弟もじいちゃんの意見には賛成らしく、今はザイさんの指示で動いている。


(……これでいいのかな)



 そしてザイさんたちの仕掛けが発動し、魔物との戦闘が始まった。


「うひゃあああ!?」

 地響きの後に爆発が響いてくる中頭を守りながら恐る恐る外の様子を確認する。

「ケッ、情けねえ。こんなのが次期代表とはな」

 そうは言うがプシオー、お前も膝がガクガクと震えてるじゃないか。

 それに引き換えじいちゃんはさすがだ。動じることなくお茶を啜っている。

「てか、こんだけのことが起きて大丈夫なのかよ?」

 ああ、それは僕も思ってた。

 じいちゃんは……駄目だ。知らんぷりを決め込んでる。

 大丈夫かなあ?


 結論。大丈夫じゃありませんでした。

 集落の周りに張り巡らせておいたバリケードギリギリまで一面焼け野原に変貌を遂げていた。


「これでしばらくは魔物も寄り付かないだろう。その間にしっかりと結界の練習をしておくんだな」

 そう言って立ち去ろうとしたザイさんにプシオーが掴みかかる。

「ふざけるな!ウチの周りをこんなにめちゃくちゃにしやがって…!」

「ちょちょっ!?何やってんだよぉ……」

「うるせえ!兄貴は引っ込んでろ!」

「ぎゃんっ!」

 イテテ……、無茶するな~。


「じいちゃん、じいちゃん!どうにかなんないの?」

 止められないと判断しすぐにじいちゃんに助けを求める。

「……イジャン。お前がなんとかせい」

 ええぇぇーー!?


 じいちゃんに突き放され、おずおずと言い争う…というよりも一方的にプシオーが不満をぶち撒けているんだけど。

「プシ……二人とも落ち着いて。話し合えばわかるから」

「兄貴は引っ込んでろって言ったよなあ?邪魔しかできねえんだからしゃしゃり出てくんじゃねえよ」


「……くだらんな。今、身内同士で争っている余裕があるのか?」

 なにも言い返せなかった私と違い、ザイさんの言葉がまるで鋭利な刃物のように空気を切り裂く。


「貴様に何がわかる!?余所者の貴様に…!」

「わからんし、わかるつもりもない」

 プシオーの言葉をザイさんは驚くほどにバッサリ切り伏せる。

 それにはさすがの弟も二の句を次げずあんぐり口を開けてしまった。


「そもそも、お前のはただのやっかみだろう?」

「なんだと?」

 その言葉にプシオーの雰囲気が剣呑なものへと変わる。

「そうじゃないか?昔から次期代表として育てられていた兄を妬み、兄がいなくなってようやく手に入れられるはずだった地位を奪われた。それだけだろう」

「違うっ!」

「いいや、違わないさ。だからこそ戻ってきたことに動揺し結界の精度が低くなる」

「「…………!?」」

 これには私も驚いた。

 やはりアーティストにまでなる人はすべてに精通しているのだろうか?


(気持ちが能力に影響を与える。そんなこと、考える余裕もなかった)


「……そうだな、お前ら二人を合わせたらようやく一人前ぐらいにはなれそうだ。別に一人の土地持ち(オーナー)が治めなければならないって決まりもないのなら、二人で協力したらいいかもな」


「…………」

「…………」

「クソッ!言いたいことだけ言っていきやがって」

「……でも、やってみる価値はある。そう思っているんだろう?」

「たまにそうやって悟るところがムカつく」

「……はは、これからもこんな感じなのかもな」

 だけど――、

「だが――、」

「「やってみる価値はあるね(な)」」


「ふぉふぉ、ようやく前進し始めたの」





 その後、とあるクランから師範ジョブを持つ人物が後始末として送られてきたりして二人の代表制度が形になるのはそれから数年後のこと。

 そうして二人の代表制度を取り入れたこの集落は有名になり、彼ら一族はそれからもこの土地で代表を歴任することになる。


 後年、二人の代表たちは自分の孫たちに道を示してくれた冒険者の名を孫に付けた。

 その風習は伝統として残っていき、いつしか男女二人組の代表にはロチーノを表す名として継承されることになる。


 男性なら――ザイ。女性なら――ペソと。

 いかがでしたか?この番外編、はじめはザイをもっと人でなしにしようと思ってたんですが気付いたらこんな感じになってました。

 ザイ&ペソのコンビはまた番外編で出るかもしれませんし、本編で出るかも…。いつか出したいとは思ってます。

 実はまだ出していない情報もあったりするわけで。

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