表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/151

咲き誇る業火の華

「さて、ペソ周囲に人の気配は?」

 尋ねると首をブンブンと勢いよく左右に振る。

 まるでそういう玩具のようだ。勢いがよすぎてアホ毛だけが取り残されたように存在を主張している。


「よし。なら問題ないな」


 長老たちの話を聞く限り、ここを狙っている魔物は群れで行動している3種類。

 大方行動範囲が広がる発情期に運悪く結界の担い手が交代したんだろう。それで囲まれ、孤立するようでは結界の意味がないだろう。


「それにしても目の当たりにすると圧巻だな!」

 高台に登って押し寄せる魔物の群れを見下ろすというのは癖になりそうな優越感があるな。


 地面は魔物の群れで塗り潰されていき、徐々に見える範囲が少なくなる。

 上手い具合にここを中心に集まってきている。こうなれば、俺の世界が活かせるというものだ。


 ――ドォーン!

「…始まったか」

 大きな爆発音が響き、火柱が上がる。


 ――“地獄の足音(ヘルズステップ)

 ここの周囲はすでに地雷原へと姿を変えている。押し寄せれば押し寄せるほどにその身を滅ぼす。


「理性なき獣にふさわしい最期であろう?」

「ペソソ~」

 こいつもこの光景が気に入ったようだな。


 大分数が減ってきたか。それでもまだ数十体はいるようだな。

「しょうがない。直接焼き滅ぼすか」

 ペソの背中に手を当て、命じる。

「…ペソ、数分後に北側の門を開かせる。そう伝えろ」

 ペソのアホ毛がピーンと伸びる。


『おい、聞こえるか?』

 背中に手を当てたまま念じると俺の声が周囲の人間の頭に直接語りかける。


 ペソは自分の伝えたいことを伝えられない分、圧倒的大人数に同時に情報を届けることができる。

 今回は全体に響かせているが、こいつの好感度によって届ける人間を選ぶことができる。

(こういうところだけは重宝するな)

「………ぺそ?」

「…………」

 振り返ったので、背中に当てていない手で頭をガシガシと乱雑に撫でてやる。

「ペソ~~」

 乱暴なのになぜかこいつはこれを異様に喜ぶ。


 ペソを抱えて移動していくと、命令した通りに北門が開いていき、隙間から魔物の姿が確認できる。


 この世界に来てよかったと思うのは真っ赤に染まる世界を見る機会が増えたことだな。


 俺は高揚する体を抱き締めるように押さえ込まねばならない。

 そうしなければあまりの快感で歯止めが効かなくなってしまうからだ。




「品性の欠片もない下等な化け物諸君。君たちは運がいい!」

 手を広げ、高々に。

 そうすることで世界が俺の観客に一変する。

「君たちは俺が創る美しい世界の礎に選ばれた!!」

「グアオッ!」

 まったくせっかちな奴だ。

「ほれ、これでも食って落ち着きな」

 大きく開いた口にポイッと放り入れてやる。

 それには薔薇の模様が彫られていた。


「ギャウッ!!」

 飲み込んだ瞬間、ボフッと音がすると口の端から煙を漏らしつつ苦しみ出す。


 ――ザシュ


 白く輝く茨が魔物の皮膚を突き破って現れた。茨はうねうねと蠢き新たな獲物を探し始める。


 奴の口に放り入れたのは“茨の導火(ローズィ・リップ)”。

 茨のような爆炎が薔薇が咲いていくように範囲を広げていく俺の開発した新しい爆薬だ。


 茨に絡み付かれた魔物たちが次々と餌食となっていく。それにともない爆発も広がる様はまさに至高。

 これほど美しい光景はそうそうお目にかかれるものじゃない。


 しかし、どこの世界にも芸術を解さない輩は居るものだ。

 別方向から鳥型の大きな魔物が飛来してくる。


「やれやれ。鳥頭め。さっきの奴がどうなったか見ていないのか?」

 実はこいつには腹をたてていたんだ。

 俺の芸術である地雷原をこいつらはほとんど通っていない。別の魔物がかかった爆発に巻き込まれることはあってもこいつ自身が爆風を靡かせてはいない。


 これは、芸術に対する侮辱にも等しい行為だ。


「(さあ、来い…!お前のような鳥頭にも芸術の真髄を見せてやる)」

 

 化け物は俺を諸悪の元凶と見なしているようだ。真っ直ぐに俺に向かってきている。

 飛んで火に入るとは、まさに貴様のことだ!

(さあ、早く来い!来た時が貴様の最後だ。俺は必ず貴様を――『ぺそー♪』――そう、ペソと言わして…………『ペソー』だと!?)

 慌てて周囲を見渡すと化け物が爪でペソを掴んで群れへ戻っていく。

「うおおおぉい、何してんだーー!」

 油断したっ……!?もう一1体いたのかっ!

「ペソソ~♪」

「…………」

 わ、笑ってやがる。人の気も知らないで…!


「おい、待て!止まれーーー!」

 今の俺はひどく不恰好だろうな。以前の俺だったら、自殺モノだ。

 だが、生憎とこの世界では自殺もできん。

 幸いにもこの姿を見ているのは魔物だけ。それもすべて殲滅する。

 問題はない、はずだ。


こんなことなら他の連中も連れてくるべきだった。

 そもそも、あいつと二人だけで行動したのが間違いだったんだ。

 ……というか、大体いつもこんな結果になるのになんであいつと行動するんだろう?


 悪態と疑問が浮かんでくる。

 しかし、そんな場合ではないと頭を切り替える。


「ってか、いい加減にしろぉ!!」

 追い付くよりも先に堪忍袋の緒が切れた。


 俺はこの世界においてあまりに似つかわしくないモノ――拳銃を取り出した。


 実際にこの銃から弾丸が飛ぶ出すことはない。これは言い換えれば砲台いや、砲台よりは照準のようなものか。

 これで狙いをつけ、誘導する。そう考えれば、誘導灯か?

 そんなことはどうでもいいか。

 サッと構えて狙いをつけ、引き金を引く。


 ――カチッ


 軽い音がする。

 言っておくが、不発ではない。断じて違う。

 これの照準で覗いたモノはターゲットになる。それが俺のスキル【追尾】!


「ふっ、この紅き花が咲き誇る中、よく見えるぞ!」

 ターゲットがポワンと淡い光を放っている。そして、その光は俺に繋がる。

「行け!喰らい尽くせ!竜の通り道(ドラゴンウェイ)

 

 光に乗せた爆弾が吸い寄せられるようにターゲットへと勢いよく向かっていく。

 途中、そこを通りかかった魔物が巻き込まれていき、風穴を体に開け墜ちていくがそれでも竜の進撃は止まらない。何もかも喰らい尽くして進む、その道には白い爆炎の華が咲く。

 設定集も更新してます。本編では語られなかった情報も載せてますので、暇な時にでもご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ