終焉の来訪者
「グレンデンより依頼を受けて来た者だ。門を開かれよ!」
――ギギィ
重厚な音を立てながらバリケードで閉ざされていた門が開かれていく。
中からは老人と若い男4人が姿を表す。
先ほどの御者の話が確かならば、若い奴の誰かが新しい代表だろう。
「よう、来てくださった。わしゃこの町の先代町長の父で長老をしておりますチュスコ・エエンカと申しますじゃ」
長老だと?この世界でそんな血縁関係を優先させる意味があるのか?
「そして、こっちが今の町の代表チュスコ・インジャ。その隣におるのが、チュスコ・プシオーですじゃ」
長老に紹介され、なよなよした男とガッシリした男が進み出て来る。
「ど、どうも。さ、ささきほ、ごしょうきゃいにあじゅかりましたインジャです。
い、一応代表をしゃせていたされております」
「おいおい、そんなビクビクしてんじゃねえよ!」
「ヒィッ……」
もう一人に怒られ、もとから頼りない体をさらに縮こませる。
「こんなので悪かったな。俺はプシオーだ。よろしく頼むぜ」
その様子に苛立った男が押し退けて、俺に手を差し出してきた。
こんなんで大丈夫なのか?
長老も同じように呆れた眼で二人を見つめている。
「……まったく。すいませんな冒険者様。こやつらはわしの孫なんですが…、どうにも昔から仲が悪く。いやはや困ったものです」
名前から想像はついてたが、やはり血縁関係か。
二人は呆れる俺たちを尻目にくだらない争いを繰り広げていた。
いや、新しい代表が一方的に攻め立てられているという方が正しいか。
「納得できねえんだよ!なんでてめえが次期代表なんだっ!」
「し、仕方ないじゃないか。ぼくの結界の方が強かったんだ」
「それがおかしいって言ってんだよ!なんで修行が嫌で逃げ出したお前の方が強い結界を出せるんだっ!」
「しっ知らないよぉ。こっちが聞きたいぐらいなんだ」
「だいたい、嫌で逃げ出した奴がなんでまだ修行を続けてるんだ!」
「べ、別に、関係ないだろぉ。お前はさっさと家に帰ってろよ~」
「兄貴に任しちゃおけねえからこうして俺やじいちゃんが出張ってんだろうが!」
「これ、いい加減にせんかっ!せっかく来てくださった冒険者様の前で…」
「……チッ!」
ほほう、この二人は兄弟だったのか。しかも、あのいかにも頼りなさそうな新代表が兄とはな。
話の内容からして一度は役目を放棄して逃げているようだしな。
これはあの弟が怒るのも仕方がない。
その土地の代表の決め方はどこでも同じだ。土地持ちスキルの結界がより強力な者が選ばれる。
普通は前任者の力が弱まって来た頃に力比べをして後継者を選出する。
ただでさえ土地持ちのスキルは修得に時間がかかる。そのために修行を積んでいたのにぽっと出に奪われてはたまらんだろうな。
「(いかにもくだらない人間の思考パターンだな)」
「ペソ~?」
おっと、声が漏れていたか。
幸いペソにしか聞かれていないようだが、気を付けないとな。いつ誰に足元を掬われるかわからん。
「あの、失礼ですが、確認させていただいてもよろしいですか?」
おずおずと連れられて来ていた男たちが申し出る。
こいつらは門番なのか。
一緒に来たはいいが、待ち切れなくなったのだろう。長老も代表も自分たちの話で夢中のようだしな。
「構わない。むしろ早くしてくれ」
急かすように手を出すとこそこそと確認していく。あっちの集団に目を付けられたくないという態度が見え見えだぞ。
ザイ:男 拠点:グレンデン
所属:終焉の来訪者
ジョブ:爆弾魔(A)
「「ア、アーティスト~!!」」
ちょっ!?このバカども!
急いで口を塞ぐが時すでに遅し。
先ほどまでこちらを無視していた3人もこちらに近付いてくる。
「いやぁ~まさかアーティスト(A)の称号を持つ方が来てくださるとは!」
糞ジジイめ。随分機嫌が良さそうだな?
顔に逃がさねえって書いてあるぞ。
クッソ!
思わず悪態をついてしまう。
この依頼は内容次第では断ることできるはずだったのに…。
忌々しい。
怨念を漂わせながら門番たちを睨むがそっぽを向いてわざとらしく口笛を吹いている。
(まあ、いずれバレることか)
こうなったら思いっきり開き直ってやろう。
「それにしても最近よく名前を聞くようになったあの『終焉の来訪者』の方だったとは」
「俺も聞いたことがあるぜ。帝都グレンデンを破竹の勢いで制圧した新進気鋭のクランだってな」
見えすいた世辞を…。
見ろ。貴様らの代表がバカみたいに口を開けてるぞ。
「お嬢ちゃんも一応確認させてね~」
「ペソッ!」
貴様ら……!
騒動の原因のくせに早々と逃げるんじゃない!
ペソ:女 拠点:グレンデン
所属:終焉の来訪者
ジョブ:交信師
「「えっ!?お嬢ちゃんも冒険者!?」」
こいつら、リアクションがいちいちウザいな。
ここは集落と町の間ぐらいの大きさになります。だから、インジャは代表ということで。




