荷物の重荷
2話連続で神様登場!いい加減に名前を考えないと…。
「――――ペソ!」
「………何をしている?」
目を開けると、小さな体が視界を覆っている。
どうにも寝苦しいと思ったら、また顔に抱きついてやがったな。
「ったく!寝てる時は【凝縮時間】をかけいているから叩いて起こせとは言ったが、毎回顔にしがみつくんじゃねえよ。息ができんだろうが」
乱雑にガキを引き剥がすとじたばた手を伸ばしてくる。その頭部で頭と同じぐらいのアホ毛が存在を主張するように揺れていた。
「暴れるなペソ」
名前を呼ぶと一瞬ビクッと暴れていた手足を引っ込めキョトンと顔を上げる。
そのまま見つめ合うような形になる。
「……………」
「……………」
「……………ペソっ!」
「『ペソっ』、じゃねえよ」
無言で睨み合いを続けていたのに、急にニコニコし始める。
…本当にこいつといると調子が狂う。
それにしても忌々しい夢を見たものだ。あの自称神は次会ったらただじゃおかん…!
勝手に俺をこんな世界に送ったことも、みっともない姿を晒させたことも許せん。だが、それ以上に許せないことがある。
「よくも、この俺を見下しやがったな……!?」
思い出しただけで腸が煮え繰り返る。
あの侮蔑しきった眼――まるで下賤な人間を見るような眼で俺を見やがって…!
「…ぺそ~」
「チッ、わぁ~ったよ。もう恐え顔はしねえから泣くな」
「ペッソ!」
ああ、面倒臭い。なんで俺がこんなガキの面倒みにゃならんのだ。
つってもこいつから離れることもできねえし、なによりこいつの能力は厄介だ。
俺がペソと呼ぶ少女、いや幼女か。こいつは俺がこの世界に来てから最初に会った人間だ。
正確に言えば、こいつはここに来て目が覚めた時にはすでに隣にいた。
それからは俺がどこに行くにも追いて来た。
――あまりに鬱陶しいので、教会に保護という名目で預けようとしたこともあった。だが、それはできなかった。
『……申し訳ありませんが、その子供を預かることはできません』
『――ッ!、な、何故だっ!?こんな小さな子供を危険な目に遭わせてもいいというのかっ!それでも、貴様は教会の人間か!?』
本心を隠し、あくまでこいつのためだと主張するが一向に聞き入れてもらえなかった。
そこでは駄目だと出て行こうとしたところ、再び俺の前に奴が姿を現した。
[――やはり、おんしはこの世界でも変わらなかったようじゃの]
突如として目の前の人間の口調が変わり、聞き覚えのある声へと変わった。
『……ッ!貴様はっ!』
[ほっほ、誰かどうかはわかるようじゃの。感心感心]
誰が忘れるものかっ!
『どうして貴様が……』
[おんしには伝えておかねばならぬことがあるからの。わざわざ妾が出向いたというわけじゃ。まったく、この世界の人間にまで迷惑をかけるでない]
『誰が迷惑をかけたっ!』
迷惑をかけているのは貴様ではないか!
[その子を預けようとしたじゃろう]
それがなんだ。こんなガキがいては思うように行動ができん。当然のことではないか!
『……このガキを連れて行動しろというのか?それで、こいつが死んだらどうする?』
[はっ、言い訳がうるさい奴じゃ。その子供が死んだら?単に自分の思う通りにならんのが我慢ならんだけじゃろうが]
鼻で笑いやがって。
[言っておくが、その子供はおんしに対する前世でのペナルティじゃ。離れることはできん]
『…どういう意味だ?』
[そのままじゃよ。その子供、どういう子供か気になるかえ?]
気にならないと言えば、嘘になる。だが、こいつの思惑に乗るのも屈辱だ。
俺が沈黙したのをどうとったのか、やらしい笑みを浮かべている。
[その子供は、おんしが前世で奪った命の一つ]
『なんだと…!?』
どういうことだ?この世界には生死の狭間を彷徨った人間しか来れないのではなかったのか?
[通常、この世界には生死の狭間を彷徨った者以外は送ることはできん。しかし、そういう人間にも時折例外はおるもんじゃ]
何が言いたいんだ?
[その子供は、おんしのせいで生まれることができなかった胎児じゃ]
『………ッ!?』
バカな、そんなことがあるはずがない…!
告げられた事実に、足元がふらつく。
[当然、胎児に意思表示なんぞできん。だから、妾が強引にその子を成長させ、おんしの傍に送り込んだ。おんしにはその子が生まれられなかった分、その子を幸せにする義務がある]
俺が放心している間に言いたいことだけを言って、奴は帰っていった。
気が付いた時には、奴の気配はなく、もう一度呼ぶように頼んでも呼んだわけではないから無理だと追い出されてしまった。
そうして、手元に置くことになったのがこのガキ『ペソ』だ。
ペソという名前はこいつがペソとして喋らないから俺が便宜上勝手に付けた。なぜか気に入っているようだが。
いつかこいつを追い払う時のために一応の教育を施しているが、その成果は一向に現れない。
(……まぁ、生まれる前の胎児だったのだから成長具合を考えればあと数年はこの状態かもしれんな)
こいつの厄介な点は他にもある。
こいつが泣くことで俺の能力が下がるということだ。
これが奴の言うペナルティだというのか?だとしたら、なんと面倒臭い。
おかげで俺はこいつの前では笑顔を張り付けていなければならなくなった。
「お客さん、見えてきましたよ」
乗り合い馬車のおっさんが声をかけてくる。
見れば、強固なバリケードで囲われた一画が視界に入ってくる。
「あそこが次の依頼場所か。なんとも陳腐なバリケードだな」
「それにしても、あそこに何の用なんですか?言っちゃなんですけど、最近は魔物がうようよしてて危険な土地だって噂ですよ?」
「知っている」
だからこそ、俺が来たんだ。
「どうも、土地持ちが急死したらしいですが、一応候補が結界を張ったらしいんですけど、やっぱりまだまだ見習いレベルで中には入って来ねえけど周囲には魔物がいるらしいんでねぇ~。こっちとしてはあんたらみたいに大金を払ってくれねえと送ることも出来ねえってわけですよ」
やかましい男だ。払った金は安くないんだからせめてマシな仕事をしてほしいもんだが…。
「安心しろ。すぐにマシになる。それまであんたは馬車の扱いでも勉強しているんだな。
……行くぞ。ペソ」
「ペッソ~!」
ペソは外見年齢3歳です。頭の方はともかく、体は成長します。ある人物にゆかりのあるという設定です。次回では爆弾魔の名前が出てきます。




