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異例の転送

 番外編スタートです。

 ――この世界はなんて醜いんだろう。

 こんな世界に俺のような天才が居ていいはずがない。よし、この世界を俺が美しく生まれ変わらせてやろう。

 

「てめえかぁっ!!」

 ……ん?

 せっかく、美しい世界を築いてあげたというのに無粋な輩だな。たかだか、親が潰れた程度で…。

「まあいい。貴様のような下賤な輩がいるのもこの世界が醜い証拠。もはやこんな世界にいるのもうんざりだ」

 せめて、俺が一緒に逝ってやるから感謝するがいい。


 ――そして、俺の視界は綺麗な深紅に染まった。



 はずだった。

「……なんで、こんな場所に出てしまったのだろうか?」

 見渡す限り白だけが広がる空間。あるのは一本の大樹のみ。

「まったく、胸糞悪い空間だ」


「失礼な小僧じゃの。それが何人もの人間を虐殺した男の言葉かえ?」


「……誰だ?」

「なんじゃ、つまらん。ちっとは驚かんか。妾の登場をなんと心得る?」

 ほう、樹から女が現れるとは。ここが現世でないということは証明されたわけだ。ならばせめて紅で染めるぐらいの気遣いを見せて欲しいものだな。


「ほんに、おんしはつまらんのう。直前に来た小僧はもう少し愉快な反応をしてくれたぞえ?」

「くだらんな。俺とそこらの人間を一緒にするんじゃない。そいつらと俺では人としての格が違うのだよ」

「そうは言うが、おんしも妾から見れば同じようなもんじゃよ」

「……なに?」

「おーこわいこわい」

 なんてふざけた女だ。腹立たしい。

「そもそも、貴様はなんなんだ?」

「おっ、やっとマシな反応を示したのう」

 何、嬉しそうに笑ってやがるっ……。


「妾は神様じゃ」


「はんっ、馬鹿馬鹿しい。貴様が神ならば俺はその上の存在に違いないわ」

「これ、無礼にもほどがあるわい!」

 ぬぐおおおっ…!

「ふふふっ、どうじゃ?思いしったかえ?」

「き、貴様ぁ……な、な、何をした!?」

「大袈裟じゃの。少し腹痛を起こしただけじゃろう」

 何を…!

 いや、そんなことはどうでもいい。この俺がこんなみっともない姿を人前で晒すなど、あってはならんことだ!

 俺は選ばれた人間なのだから!


「自惚れるな。全ての世界に選ばれた人間なんぞおらん。おんしらは平等じゃよ」

「……黙れぇっ、わかったような口を、叩くなぁ!?」

「いくら凄んでも無駄じゃ。少しは無慈悲な裁きというものを理解したかえ?」

「黙れと言っている!」


「おんしには何を言っても無駄なようじゃな。さて、困ったもんじゃ。本来ならばここで道を示すのじゃが、おんしは元の世界に未練が無さそうじゃし、戻っても碌なことしそうにないしのう。あまり異例は作りたくないが致し方ない」

「いいからだまっ――もがっ!」

 な、何を……!?

 強引に何かを口に押し込められそうになるのを必死で抵抗する。

「そう暴れるな。食えば楽になれるぞえ」

 誰が貴様の思い通りになど…。

「ふむ、粘るのう。……これでどうじゃ?」

 ぐおっ!ま、また腹が……!?

「ひ、ひふぁまあ――!」

「往生せんかい!」

 グッと手で押し込まれ、抵抗虚しく喉の奥へと流れ込んでいく。


 次第に薄れ行く意識の中、このイカれた女の顔を目に焼き付けようとしたがそれよりも先に視界を覆われてしまった。

 


「…ようやく行ったか。まったく手間をかけさせおってからに。その分ペナルティを付けさせてもらったがの。

 ――せいぜい新たな世界では悔い改めて楽しんで生きるがよい」

 番外編なので、結構適当です。本来ならいきなり向こうの生活から始めようと思っていましたが、それだと誰かわかりにくと思ったので導入を書いてみました。

 この章は基本的に彼ともう一人によって構成されます。

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