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アースナルド⑪圧倒的勝利すなわち圧勝!

 今まで最長です。アースナルドはあと1話でフィアードに戻って終了となります。次回は金曜日に投稿します。

「ヨッシャー、抜けたぁ~!」

 沼地に降りてから3日。

 ようやくヤノンの傷も癒え、動けるようになった今日。俺たちは見つけ出した上へと続く道へベッドバイソンを押し上げ脱出に成功した。

「長かったですね~」

「……ええ、本当に」

 二人も感慨深げだ。

 

 ――さて、さっさとマリアージュさんたちと合流するかな。この時点で彼女に危険が及んでいるという考えは一切存在しない。




「あっ!やノンちゃん、シィド君いらっしゃい!」

 俺たちを出迎えてくれたのは、にこやかなマリアージュさんと彼女と同様に楽しげに食卓を囲んでいるイリガンさんたちの姿だった。

 ……うん。変なことは一切ないな!

「シィドさん、現実逃避してる場合じゃないと思いますよ?」

 うるさいっ!わかってるよ!

「……私もそう思いますよ?」

 ………ぐっ!

 シェナさんにまで言われると……。

 たしかに、目の前では長閑な食事風景が繰り広げられている。

 ――ただ一点、彼女らが腰かけているのがボロボロに傷を負ったいかにも悪人ですと言わんばかりに人相の悪い男たちだっただけで。

 いや、普通にスルーしたくならねえか?なるだろっ!?なるに決まってる!






 シィドたちが化け物と対峙していた頃、マリアージュもまた行動を開始していた。


「よいっしょっと」

 立ち上がると体を自由を奪っていたはずの縄がバサッと音を立てて地面に落ちる。

 その光景に他の捕まっている人たちが驚愕の視線を向けてくる。彼らが声を出しそうになったがしーっと口に指を当て、いたずらっ子のような微笑みを浮かべると慌てて口に手を当てて声を抑えてくれる。

 その様子を確認し、扉へ近づいていく。

 ついさっき、いなくなったのは足音で大体わかってはいるが、念のため。

 …うん。いないみたいね。

「(じゃあ、ちょっと暴れてきますから待っててくださいね)」

 にこやかに告げて倉庫からサッと出ていく。


 ふんふんふ~ん♪


(この解放感、堪らないわぁ~)

 久々に味わう解放感に思わず鼻歌とスキップをしつつ、るんるん気分で寂れた建物を進んでいく。

 きっと元は小さな集落があった場所なのだろう。

 町と村に明確な差があるわけではないが、村は言ってしまえば子供の作る秘密基地のようなもの。計画性も維持できるだけの下地もないからひょんなことですぐに廃れてしまう。

 この世界で廃村や小さな集落跡はよく見かける。

 …建物が残っているのは珍しいけど。


「…あっ?てめえ、どうやって出てきた!?」

 ……第一村人はっけ~ん。じゃなかった。第一獲物発見ね!

 ……ん~、誰かに扱い雑って言われた気がするけど、気のせいね。空耳空耳。

「おい、聞いてるのか!?」

「あまり騒いでると危ないわよ?」

「ああん?」

 ほぉ~ら、そんなに騒いでるから出て来たわ。

「きいぺっ!」

 男は間抜けな声を上げて、気を失った。

「お手柄だったわね。イルキス」


「ぎゃおん!」


 男の背中の上で誇らしげな声が上がる。

 そこにいるのはライトタイガーと呼ばれる魔物。

 野生だと白銀に輝く様な毛並みは契約の証として黄金色に変わっている。

 私が最も信頼している子で、付き合いも一番長い。この子だけは【召喚コール】の対象から外している。


「……だけど、こいつには聞いておかなきゃいけないことがあるのよね」

 白目を剥いている男。そいつをジッと眺め、思いっきりアル部分を蹴り上げる。

 ――ぷちゅっ!

「○×▽~!!」

「起きたわね。さあ、私の笛の場所を吐いてもらうわよ」

 股間に手を当て悶絶する男の胸倉を掴み上げ、凄みを利かせると涙を浮かべてプルプルと震えていた。



「………あ~あ」

 男に吐かせた笛の保管場所に着いた私は絶望していた。

 床には顔、特に口元を原形がわからなくなるほど腫れ上がらした男と木片が散らばっている。

 ……そう、私の笛の残骸だ。

「結構、貴重な素材なのにっ!」

 

 この部屋に着いて私が目にしたのは、私の笛を咥えている男の姿だった。

 それを見た瞬間、逆上して私の頭の中は真っ白になった。

 

 ――で、結果がこれ。

 やっちゃったなぁ。さすがに、やり過ぎたなぁ~。怒りのあまりイルキスに襲いかからせてしまった。せめて笛を確保してからすべきだったわ。

 残骸を拾い上げながらしみじみとそう感じる。

 これはさすがに直せないわよね。

 しかも、結構騒いじゃったから人も集まって来るでしょうし。そうなると、ここも手狭よねぇ。

「イルキス、炙り出しちゃいましょう」

「ぎゃう?」




「お、お頭ぁ~っ!」

「なんだ、騒がしい!そろそろあの人も来るんだ!大人しくしてろ、馬鹿がっ!」

 まったく使えねえ。

 もし、あの人にこの騒動を見られでもしたら、俺の評価が落ちるだろうがっ!

 酒瓶を一気に呷るが、中身がねえ。クソッ!馬鹿にしやがって。

「……で、何かあったのか?」

「は、はい!実は――」

 どうせ大したことないんだろうがな。大方、馬鹿どもが我慢できずに女に手を出したってとこだろう。

「――人質に取っていた奴らがいつの間にいなくなってますっ!」

 予想を上回る事態に伝えに来た男を締め上げる。

「どういうことだっ!見張りの奴らは何をしてやがった!」

 あの馬鹿どもっ……!

「ぐ、ぐるじ…ぃ」

「ふんっ!」

 苛立ちをぶち撒けるように床に叩き付ける。

 ゲホゲホと咳き込んでるがこっちにゃてめえに構ってる余裕はねえんだよ。睨みつけてやると脅えてベラベラと言い訳をしてきやがる。所詮こいつも半端者だな。


「つまり、アジトで何者かに襲われはじめ、それの対応に当たらせてたらどんどん人数が減った…そう言いてえわけか」

 まったく舐めてるとしかいいようがねえ!

「……まあいい。そいつらには後で俺から灸をすえておく。それよりも、ベッドバイソンのガキは無事なんだろうな?」

「へ、へぇ。そいつは大丈夫でさぁ」

 ならいい。あいつらがいればこの程度の失敗は取り返せる。あの人は『アガサ商会』にも一泡吹かせてやりたかったみてえだが、それは諦めてもらうしかねえだろう。

「そういやあ、奴らの荷物はどうなってる?」

「…へっ?いえ、無事でしたが」

「……無事、だと?」

 おかしい。奴らの装備は武器から食料に至るまですべて没収している。着の身着のままでここから脱出したとしても町に辿り着くのは不可能。それぐらい、冒険者ならわかっているはずだ。

「……っ!今すぐに動ける奴らを集めて保管庫へ向かえ!」

「え、な、なんでっすか?動けるの全員って……」

「いいからさっさとしろ!俺もすぐに行く!」

 迂闊だった…!奴らが自分たちの荷物を持って行っていないとすれば持って行ったのは俺たちの荷物か!

 だとするとマズイ!

 あそこには、あの人からもしもの時にと預かった例のモノがっ!



「おい、どうだっ!中身は無事なのか!?」

「か、頭っ!それが…」

「駄目ですっ!開きません!」

「なんだとっ!」

 クソッたれが!逃げたと見せかけてここに隠れるとはな…!

「おい、火を付けろ!」

「そ、そんなことしたら死んじまいますよっ!?」

「狼狽えてんじゃねえ!俺たちに殺意があろうがどうせ死なねえんだ。それに奴らだって苦しくなれば出てくるに決まってる!奴らをこのまま放置するわけにはいかねえんだよ!」

 脅える手下どもを急かして火を点けさせる。

 これで奴らが死ぬことはないだろうが、重傷を負うのは間違いない。その前に出てきてもこちらにはまだ二十人近くの仲間がいる。

(どうやって数を減らしていったかは知らねえが、これで終いだ)

 

 ……おかしい。どうなってやがる。

 火を点けてから結構時間が経つ。もはや部屋は火の海でこの中にいるとすれば助からない。

 なのに、なぜ出てこねえ!?

 

 ボンッと破裂音が響き、部屋の扉吹き飛ばされる。

「「「ぐわあああーー!!あちぃ、あじぃよぉ~!」」」

 扉の前で構えていた手下たちが突如浴びされた炎に悶え、のた打ち回る。

 この中に火薬なんてねえはずだぞっ!

「……お、おい、逃げるな!戻ってこい!」

 火傷を負った者たちを見て狼狽えた手下がアジトの出口へ走り出す。

 それを追いかけながらも俺自身の足も急くように向かっていく。

(俺が、この俺がビビってるっていうのかっ!)

 

「「「ぎゃああああーー!!」」」


 出口から先に脱出した奴らの悲鳴が聞こえ、向かっていた足が止まる。

「――あら、ようやく親玉のお出まし?」

 

 こいつは……!

 目の前にいるのは護衛に雇われっていう冒険者の女。傍らには虎模様の猫。その足の下には手下が伸されている。

「てめぇ……!」

「あら、怒るようなこと?あなた達が私たちにしたことはこれよりも遥かに酷いことでしょ?」

 女は死なないことを世界と神に感謝しろと告げてくる。

 どこまでも上から目線なアマだ!

「……アジトで部下を襲ってやがったのもそいつか!」

 ギリッと歯を噛みしめながら忌々しげに睨みつける。

「ええそうよ。安心なさい。しばらくは動けないだけで死んじゃいないんだから」

 全く堪えた様子はない。

 明らかに自分の方が優位にあると勘違いしているようだな。俺たちは捕まってもすぐに解放されるということを理解してねえ…!

「……なに、その顔?」

 その優位性に気付いた時、思わず笑みを浮かべていたようだ。

「はんっ、悪いな。嬢ちゃんの浅はかさに我慢できなくなってな」

「…………へぇ~」

 イラッとしたようだな。足元の猫もいっちょ前に毛を逆立てて威嚇してやがる。

 

 ……むぅ~、なんなのかしらこいつの余裕。

 まるで自分の立場が絶対に揺るがないとでも思ってる感じ。質は違うけど、面倒臭い人を思い出すなぁ。

 つい先日まで王都で指導を受けていた相手が思い出されてイラッとしてしまう。

 イルキスはイルキスでイライラしているみたいだし。さっき捕まえた男の付けてた香水がよほど気に入らなかったのね。

 ……あれっ?

 今気づいたけど、こいつからも同じ匂いしない?

(……へぇ~、そういうこと)


「イルキス。()()持ってきてくれる?」

「………ぎゃっ!?」

「ごめんごめん。嫌だろうけど、お願い。ねっ」

 何がしたいんだ?

 女に言われて猫がどこかへ行くのを眺めながらそんなことを考える。

 だが、これは好機だな。あの猫が誰かを呼びに行ったんだとしても、今ならこいつはたった一人。しかも、よく見りゃ武器らしい武器も持っていねえ。

 こんな奴なら楽勝で勝てる…!

   

 ――そう思っていた俺だったが、猫が引き摺ってきた()()を見て考えが変わった。


 あっ、戻ってきた。やっぱり嫌そうな顔してるな~。

 イルキスが行く時よりも増し増しで不愉快そうな顔をして戻ってきた。口には私が頼んだモノを咥えて。

「おかえり」

 話しかけてもプイッとそっぽ向かれてしまう。

 あ~あ、これは機嫌直すまで時間かかりそう。

「…なっ、がぁ、な、ななな、なんで…!?」

 やっぱり、見覚え会ったのね。それにしてもこいつ思った通りバカで低脳だわ。普通そんなあからさまな反応する?

 

「……へぇ~、見覚えあるんだ」

 私はイルキスが引き摺ってきた男の首ねっこを掴み上げ、山賊の親玉に見せつける。

 その様子を見ていたイルキスは少し機嫌が直ったみたい。イルキスここ掴まれるの嫌いだもんね。

「こいつさぁ、私たちがアースナルドの方に逃げてたらそっちから来ていきなり襲いかかってきたのよ」

 し・か・もと私は続ける。

「で、聞いたら商会の人たちが見たことあるって言うじゃない?なんでも、とある貴族・・の――」


「う、うおおおっ!!」


 俺はがむしゃらに突っ込んでいった。

 こいつが連れてきた男は俺の依頼人である王国貴族の使い。もし、このままにしておけば依頼人まで捕まっちまう。そうなればすべてが水の泡だ!

 当然、すぐに釈放されるということはなくなり法の裁きを受けなきゃならなくなる…!

 そうなる前に、こいつを捕まえておく必要がある!


「それは悪手でしょ?ねぇ、イルキス」

 私の声に反応するようにイルキスが前に出る。

 まったく、魔物使い(テイマー)が…いいえ、楽師に連なるジョブの人間は楽器がなければ何もできないと思ってる人間の多さにはイライラするわ。たしかに、楽器がある方が強い。それは認めるけど…。

「……楽器がないと戦えないわけではないのよ?」

 それを今証明してあげる。

「う、ううん。ら~ら~、よっし!」

 ~~~♪

 声高々に歌い始める。

(“戦人の願い(カ・ヲモリ)”)

 

 ――ブルルッ!


(なんだ!?)

 女が歌い始めたと思ったら、猫が体を振るわして始めやがった。

 その様子はまるで、

「……歌を、吸収してるのか?」

 疑問が口を吐いて出る。

 そして、その答えはすぐに判明する。


『GRUAAAA!!』

 小さかったイルキスは本来の虎の本性を露わにするかの如く、猛り狂った獣の咆哮を上げる。その姿は先ほどよりも遥かに巨体になっていた。


「なんなんだてめえはぁっ!!」

 そう叫んだが、勢いに乗った足を今更止めることはできない。

 そのまま奴の射程圏に入った俺の首にはいつの間にやら奴の尾が巻き付き、締め上げていた。


「ぐ、ぐぅおおお……!」

 あら、これで落ちないなんて意外と頑丈?

 イルキスの尻尾に締め上げられた男はなんとか外そうと必死にもがいている。

 子分たちもその様子にどうすればいいかあたふたしてるけど。

 だけど、そんなことしても無駄に苦しみが長引くだけなのにね。

「イルキス。さっさと終わらせてあげなさい」

『―――――!!』

 

 ――俺が最後に見たのは化け猫がデカイ口を開けて迫ってくるところだった。


「……あれっ?イルキス、ストップ!ストーーップ!この人、もう気絶してるから」

 今まさに噛み付こうとしていたイルキスの背中をバシバシ叩いて止めると、渋々男を降ろす。

「うわっちゃあ~、汚ぁーい」

 男は泡を噴いて白目を剥いていた。

 そんなに怖がるなら歯向かわなきゃいいのに……。

「……あなたたちの親玉はこの様だけど、どうする?」

「「「う、うわあああぁぁぁ!」」」

 残っていた山賊たちはその言葉で逃げ出していく。

 笑顔で降伏勧告したのに、失礼しちゃう。


 それからイルキスが鬱憤を発散するかのように獲物(山賊たち)を追いかけ、捕まえ、遊び倒すのを眺めていた。

 全員捕まえたところで近くに隠れてもらっていた商会の人たちと料理人さんたちが姿を現し、ようやくこの騒動が沈静化したのだった。




「――と、いうわけだったのよ。で、あなたたちを迎えに行かなきゃいけないなぁ~とは思ってたんだけど、私も笛がないから【召喚コール】が使えないじゃない?とりあえず腹ごしらえをしようかなって」

 マリアージュさんから説明を受けたが、商会の人たちも大体そんなもんだと言ってることだし間違いはないんだろう。それにしても、なんで捕まえた山賊たちをイス代わりにしてるんだろう?


「ところで、逃げ出した時に捕まえた男ってのは結局なんだったんです?」

「あっ、それ私も気になってたのですよ」

「私も……」

「あぁ、あいつ?」

 マリアージュさんが指さした方には一人だけイスにならずにロープで縛られ、転がされている男。

 その顔は屈辱と怒りで真っ赤になっている。

 何も言わないのは変に口を挟んで追い込まれるのを避けるためか?それとも単純にそんな気力がないのか。

「あいつは今回の事件の黒幕。貴族様の召使いってところかしら」

 

「…………」

「…………」

「…………」



「「「はぁっ!?」」」

 一様に沈黙した俺たちの驚愕の声が被った。

「えっ、き、貴族!?今回の事件は貴族が仕組んだんですかっ!?」

「そうだよ。ほら、元々はこの依頼だってアースナルドから募る予定だったでしょ?それが王国からの使節団が来るからってそっちに人手が回っちゃったでしょ?それもそいつが裏で手を引いてたみたいね」

 はぁ~。この世界に来てもそんな政治的な思惑を聞くとは思わなかった。

「で、でも、どうやって盗賊を潜り込ませたんです?」

「そんなの簡単よ。かけれる範囲の圧力をかけただけ」

「はへぇ~。なんか難しいのですよ」

 お前はもう少し頭を使え。

「まっ、それもこれもすべてここに証拠があるから大丈夫よん♪」

 そう言って彼女は一通の封書を取り出した。

「なっ!!」

 それを見た男が目を見開いている。

 

 ――それにはこの計画の指示書と共に貴族の許可証が入っており、もしも予想外の事態に遭遇した時に使うようにと預かっていた物。頭目が確保しようとしていた例のモノだった。


「これには結構綿密に計画が書き込まれてたわ。黒幕はよっぽど陰険な性格をしてるみたいね。まぁ、これだけの証拠があったら確実に牢屋行きでしょうけど」

「……で、これからどうしますか?」

「そんなのこのままフィアードへ向かうわよ?」

 あっさり言うなぁ。

「ですけど、こいつらどうするんです?」

「それは大丈夫。商会の中に交信師コネクターの人がいるからアースナルドに連絡を取ってもらったからすぐに応援が来るわ。ちょうど使節団も来てるから黒幕も一緒に連行されてくるんじゃないかしら?」

 

 ――その後、マリアージュさんが言った通り豪華な馬車が大量の兵士を引き連れてきて、盗賊団と貴族の使いを連行していった。




 後から聞いた話だが、今回の主犯の貴族はガリメデ・フォン・メッツィ子爵。王国でも由緒ある家柄で、信頼も厚い家柄なのだそうだ。

 そんな貴族様がなぜこのような事件を起こしたのか?

 それは、依頼品のベッドバイソンの子供を狙っていた。実は、フィアードへベッドバイソンを輸送するという噂を聞いたメッツィ子爵は譲れと脅しをかけて来たそうだが、『アガサ商会』はそれを断固として拒否。

 フィアードからは随分前から依頼を受けていたのに、今更それを後回しにすることはできないという至極まっとうな意見だったが、それで恥をかかされたと逆恨みし、狙っていたベッドバイソンの子供を奪うのと同時に商会の人員を人質に身代金もふんだくろうとしていたらしい。

 だが、そんな大それた計画――使節団を動かすまでしたのに、雇ったのは盗賊紛いの素人集団。

 頭でっかちのプライドの塊だった子爵には自由に動かせる兵力は存在しなかったようだ。

 結果としてメッツィ子爵家は取り潰しとなり、30年以上に渡って一族全員で強制労働の刑に処された。


 ――この世界では命を奪えない分、暴力で脅すというのが元の世界よりも遥かに重い罪に問われる。また、責任ある立場として家族も同罪なのだそうだ。

 

 これにより一連の騒動は一応の終結をみせた。

訂正 主犯の貴族がガリメデ・フォン・メッツイとなっていましたが、間違いです。

 正しくは「メッツィ」。

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