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身形はビシッと心はへにゃっと

「うぎゃあああああ!!」

「おらおら、逃げ切れるわけねえだろうが!いい加減に観念しておとなしくしろや!なぁに、悪いようにはしねえからよ」

「いやだいやだいやだいやだぁーー!」

 先ほどから辺り一帯に響き渡るほどの叫び声を上げ、迫りくる男から必死に逃げ出そうと抵抗を試みている。

 しかし、必死の抵抗もむなしく襟首を掴まれるとそのまま服をひん剥かれていく。なんとか止めさせようと全力で押しのけるが、まるで柳に風とでもいわんばかりにものともしない。

 ……とうとう最期の一枚だけを残して全ての衣類がはぎ取られてしまった。

「う~ん、やっぱりいいわねぇ。最高ヨン♪」

「ひぃぃぃっ!ヒゲがヒゲが気色わるいぃ!!」

「あらやだ、アタシとしたことがお手入れ不足かしらん?でも、そんなことは今はどうでもいいの。はぁ~、シィドちゃんほんっとにいい肌触りよ~、同じ男として嫉妬しちゃうぐ・ら・い」

 普段は見せない男の部分を前面に押し出し襲いかかってきたルンデルハウスさんは俺から衣類をはぎ取ると何も纏っていない俺の胸板に濃いヒゲ面をこすり付けている。背筋がぞわぞわしてきて一刻も早く逃げ出したい気持ちに駆られ、なんとか引き剥がそうと試みるが一向に離れる素振りを見せず、むしろ腰に回した腕の力が増していったので諦めた。

 見た目からして筋肉質で二回り近く体格の大きいこの人に力で勝てるわけがないのだ。これ以上抵抗して事態が悪化するようなことはないと思いたいが避けなければならない。

 一応、言っておくがこれは性的に襲われているとかではない。断じて違う!

 つか、誰に言い訳してんだろう。まあどうでもいい。

 話は俺が素材を集め終わったので依頼していた品を作ってもらおうと店を訪れた時から始まる。


 素材を集め終わってフィアードへ帰ってきた翌日。俺は鍛冶師ギルドを訪れていた。

「おやっさん!ルンデルハウスさんに言われてた布の用意が整ったんだ。そっちはどうなってる?」

「…んっ?坊主か。こっちはほぼ準備完了だ。あとはこれを持って行けば終わりだろうよ」

 ポイッと放り投げてこられたモノをキャッチする。それはたしかに留め具のないゴーグルのような形をしていた。

 さらに親方は時間が余ったから造っておいたと俺にあるモノを渡してきた。

 それは、腕に付けるタイプのプロテクターだった。

「お前さん、装備を整えようとするのはいいが防具に関しちゃてんで関心がねえようだからな。余ったクリアイタートルの素材売却分の手間賃代わりとしてそれを渡しとくぜ」

 クリアイタートルの素材の余りは鍛冶師ギルドを通して売却してもらうことにしていた。実際、作ってみないと俺ではどれほど使うのかわからなかったからだ。それに、この方法だと鍛冶師ギルドで売れるように加工もしてくれるので手間がかからず鍛冶師ギルドにも手数料としていくばくかの金銭が支払われる。

 まさに一石二鳥。

「……ありがたく貰っときます。そういえば、この包丁ですが」

「――見りゃわかる」

「そうですね。それじゃあ、また」

 ペルニカさんに鍛えてもらったことを伝えようとしたんだけど…、昔から見てきた人には敵わないな。あれだけ今の彼女に反対してても見るべきところはしっかりと見てるんだから。

 こうしてゴーグルの素材を受け取り、その足で『るんの雑貨屋』へと向かうことにした。


「ルンデルハウスさん、いますか?シィドです。材料を持ってきたんで加工お願いしたいんですけど…」

「あ~ら、シィドちゃんいらっしゃい!待ってたわよ~」

 にこやかにやって来たかれ、彼女を見た時に嫌な予感はあった。だが、いつものことだと対処しなかったのが大きな間違いだったのだ。


「――じゃあ、早速脱いでちょうだい」


 ……はっ?

 告げられた言葉の意味が理解できず呆然としてしまった。そんな俺にじわじわと近づいてくるルンデルハウスさん。この時点で危機感を覚え、逃げ出そうとしたが時すでに遅く、先ほどの状況に繋がったのだ。

 

 


 結局あれは俺の服を新調するのにより正確な体型を把握するためだったそうだ。彼女の派生スキル【ボディタッチ】を使うためとはいえ……なんてややこしい!

 基本的に服の上から触るだけでわかるらしいが、直接触れた方がより正確に測れなおかつ本人も無自覚な癖などを分析し、その人に合った服を作り出せるのだという。

 それはわかってる!だけど、普段からあんな態度を取っていれば誤解だってしたくなるってもんじゃないか!

 

「…着心地はどう?」

「ええ、いい感じですね。やっぱりルンデルハウスさんは(腕は)凄いですね!」

「う~ん、なにか違和感も感じるけど…、喜んでもらえたのなら嬉しいわん!」

 しなを作るな!やっと収まった鳥肌が再発してくるじゃないかっ!

 それにしても…。

「…この服、心なしか着心地が…なんというか、清潔感があるっていえばいいのか上手く言い表せないですけどスッキリする感じがしますね」

「あら、わかってくれる?嬉しいわ~。じ・つ・は、その服には【清浄】っていうスキルを使ってあるの」

「【清浄】ですか?どんなスキルなんです?」

「そのまんまの意味よ。常に綺麗に保つっていってもさすがに永久的に保つのは難しいんだけど」

 スキル【清浄】は簡単にいうと汚れが付きにくく、汚れが残りにくくするスキルであるらしい。冒険者であり、それ以上に料理人として匂いの付きやすい食材を扱う俺のことを考慮して使ってくれたようだ。

「それにしても、ゲブロックの皮は素材としては一級品だけど、扱う側からすれば扱いにくいったらありゃしないわね。もし、ジョブが裁縫師じゃなかったら絶対に扱いたくない素材だわ!」

 それからはルンデルハウスさんの愚痴を聞きながら客が来るまで駄弁っていた。

 

 これでようやく俺の装備も整った。あとは家が出来るのを待ってそれから、始めよう。俺の新生活を…!









・今回の成果

クリアイタートルの甲羅を使用したゴーグル。防御に優れ、かつどんな状況でも視界がクリア。

グローブと服、それに口布にはゲブロックの胃袋および皮を使用。スキル【清浄】のおかげで匂いがついてもすぐに落とすことが可能。

包丁は名無しから『灼月』へ。面積が狭くなった分切れ味が向上。

借金も全額返済完了……持ち金108万92M

はい。ルンデルハウス回でしたね。冒険準備編のラストがこれって、そんな風に思う方もいるかもしれませんが、変えるつもりはありません。ちなみにルンデルハウスは普通に強いですよ。今のシィドだったら10人ぐらいいないと勝てないでしょうね。ただし、シィド(男)の数に応じてルンデルハウスの実力も上がるので意味はありません。

 今週はあと設定集の更新をする以外はしないと思います。本編も早くて来週末辺りになると思いますがそれまでお待ちください。

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