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ピラファ火山⑥乙女たちの戦い

リリィSIDE


 二人とも、大丈夫でしょうか?

 この作戦を考えたのはワタクシですのに、心配してしまいますわね。本来、ゲブロックは複数人数で応戦するのが基本。ペルニカならワタクシが片付けるまで時間を稼ぐことぐらいは余裕でこなせるでしょうけど…。

「問題はシィドさんですわね」

 彼は気概はあってもまだ新人。1人で対応させるのはやはり不安ですわ。……って、そんなことを考えている暇があるのなら素早く倒す方が早いですわね。そうでなければ何のために話し合ったのかわからなくなってしまいますわ。

 長年愛用してきた武器、『バレットパラソル』を構え敵に標準を合わせる。

 向こうもようやく気付いたようですわね。見かけ通り愚鈍ですこと。

「この間は不完全燃焼でしたが、今回は主催者ホスト自ら赴きましたので心行くまで踊り狂っていただいて結構ですのよ?では、第2幕の開演と行きましょうかっ!」


「ゲボゲボゲボボボボオッ!」

「……全く下品な」

 ハンカチで口元を押さえながらパラソルの陰に隠れてはいますけれども、この匂いと不快な音には悪態を吐いてしまいますわね。それほどまでにキツい。できることなら今すぐにでも出ていきたいところですが、そうするとアレがドレスを溶かしてしまうかもしれませんものね。それにしても、いい加減諦めてくださればいいのに。

 普通の布ならば溶けているでしょうけど、ワタクシの武器はそう軟な造りではありませんのよ。

 このパラソルに使われているのは夜空に浮かぶ星を食べると言われている『ジャイキリィバット』の翅と世界一伸縮性の強い蛇『ビヨヨヘビ』の骨。ワタクシだけの世界一信頼できる武器ですもの!

「……とはいえ、このまま防いでいるだけというのも退屈ですわね。ここにはティーセットもないことですし」

 誰に告げるわけでもなく冗談が口をついて出てくる。

(それに……、)

 武器の柄に腰かけながら仲間たちのいる方角を見つめる。

「信頼はしていても、気になってしまいますわね。……あらっ?止んだみたいですわ」

 いつの間にか雨が降り止んでいますし、いつまでも広げてないで行動を開始しましょうか。

 ――そして、再び走り出す。


 得意技が効かないと判断したゲブロックは今度は接近戦に打って出てきた。

 まったく、ワタクシは直接打ち合うような野蛮人ではないといいますのにっ…!

 舌による殴打を防ぎながらも徐々に距離を詰めていく。

 普通の傘ならば骨が折れてしまうような重い連打を受けても、武器は一切ダメージを受けていない。まるでリリィの意志が宿ったかのように真っ直ぐに受け流す。

 その様はまさに舞踏会でナンパを断る誇り高き貴婦人のようでもある。

 自分に相手の攻撃が相応しくない。そう言わんばかりに毅然とした態度で堂々と一切引くことなく直進していく。

(そろそろ、かしらね)

 おそらく、次に取るであろう行動を予測し、一気に距離を詰める。

「……ッ!?」

 攻勢に驚き高く飛び上がったのを見て、自然と笑みがこぼれてしまう。

「ようやく踊っていただけますの?」

 傘骨数本を地面に突き刺し、残りを思いっきり引っ張る。いびつに歪んだその形状はもはや傘とは呼べず。見る人が見れば、こう表現するだろう。

 ――『砲台』と。

 

 これは、リリィのとっておきの一つ。超遠距離からの攻撃を可能にする分、込められる弾丸の数が少ない。

 だからこその一撃必殺。

 この攻撃を外すことは自身の大きな隙を意味し、敗北にも繋がりかねない諸刃の剣。

 しかし、彼女はこの攻撃をここぞという時には使用する。それは、絶対に外さないというプライドと意地を乗せることで目に見えない威力が宿るのを彼女自身が経験から知っているから。

 この技はシィドが世界に来た初日、バフォモス相手に見せた“火精の誕生祭(ボルケーノ・ダンス)”のように火力を集結させるのとは違い、絞って絞って一点を貫くまさに信念の一撃。


(使用できるホルスターは3つ。場所が火山ということは相手は熱には強いはず)

 空中にいる敵に狙いを定めながらも冷静に状況を考察する。

 炎の魔力では有効的なダメージは与えられない。こういう場合、水が有効なのが普通ですけど火山では水は威力が弱まってしまうので水を使う場合は大量に使わなければいけない。

 つまりは水は使いにくい。

 そもそも今持っている魔石はすべて多量の魔力を含んだ大型のモノばかり。とはいえ、3つでは決定打とはいかない。なら、いかずちの魔石を使えばいいんでしょうけど、大型では威力が巻き込まれてしまいそうですわねぇ…。

 まぁ、倒せることに変わりはありませんけど、美しくないですわ。

 クランの仲間からもたまに言われることだが、自分に戦い方を考え過ぎる欠点があるのは知っている。しかし、それを考えた上で一番美しく勝利するのが自分だということもまた理解している。

(さて、どうしましょうか?あまり時間もないことですし。……あらっ?これは…)






ペルニカSIDE

 

「でやあああっ!」

 放った一撃がゲブロックの横っ腹にめり込む。

 しかし、めり込んだと思ったのに、肉厚でぶよんと跳ね返されてしまう。

「……っ!」

 跳ね返されたものの、その反動を利用してさらに追撃を加えていく。

 ゲブロックも猛撃の嵐に耐えかね、未だにそり立っている岩の壁をよじ登るかのように逃げていく。

(逃がすさないよ!)

 すぐさま壁に“ガイアウェーブ”を発動し、ネズミ返しのように部分的に突出させるが、吐瀉物で溶かして上に逃げようとするのでさらに壁を殴打していき大地の波を起こす。

 それにより足場を追われたゲブロックが落下してくる。

 ……しめたっ!

 今度は自分の足元の地面を波立たせ、その波に乗って落下中のゲブロックに迫っていく。

「ゲゲッ!!」

 舌っ!?

 飛び出して来た舌が体に巻きつき、そのまま壁に叩き込まれる。

 ――ぐにっ

 壁にぶつかる瞬間固有スキル【軟化】を発動し、壁を柔らかくしたおかげでめり込む程度で済んだ。

(危なかった~。油断禁物だね)

 気を引き締め直し、ゲブロックと向き直る。

 ……って、あれ!?ハンマー、ハンマーはっ!?

 “ガイアウェーブ”の波に自分が乗る時にはハンマーに乗らないと発動できない。さっきまで足元にあったはずのハンマーを探してしまう。そして、気付いた。

「…あぁー!私のハンマーに何してんのっ!?」

 見ると、ゲブロックがハンマーを舌に絡めてブラブラさせている。

 まるで取れるものなら取ってみろと言わんばかりに見せつけてくる姿にイラッとしてしまう。

「……そう、そんなに挑発するんなら、見せてあげるよ。乙女の怒りを思い知りなさい!」

 溢れる怒りとそれに伴って湧き上がる魔力を制御できるそうにない。

 この想いの丈をあのくそったれなカエルにぶつけたい…!

 …ていうか、人のハンマーをそんな汚い舌で持ってんじゃないわよ!

 背負っていた荷物から鋼や鉄を取り出し、固有スキル【鍛冶】を発動させる。手の中に現れた赤い光に鋼などが吸い込まれ、形を成していく。

「完成!即席ガントレット」

 スキルで作ったモノはすぐに壊れてしまうのが難点だが…。ガンガンと作ったばかりのガントレットを合わせながら意気込む。

 ゲブロックはというと、先ほどから何がそんなに嬉しいのかニマニマと余裕の表情を崩さない。私の武器を取り上げたのがそれほどまでに嬉しいのか?だとしたら、間違いだということを教えてあげよう。

 鍛冶師の戦いは武器を奪われた程度では終わらない。

 

「しゅしゅ、しゅっ!おりゃおりゃおりゃぁっ!」

 ゲブロックをサンドバックのように殴る殴る殴る!

 初めこそ奪ったハンマーを嬉しそうに振り回して応戦していたが、段々と意味がないどころか自分にとっては不利だということに気付いたようだ。

(それでも、放さないっていうのがまたムカツクッ!)

 というか、ハンマーの柄の辺り…微妙に溶けてない?

 目を凝らしてみると、やっぱり溶けてる!?だってジュッって感じでちょっと煙出てるし……。

 さ、最悪だぁー!?

「う、うわああぁ、早く放してよぉ!!」

 涙目になってさらにぶんぶんと手を振って殴りつける。

 もうパニックになってどこら辺を殴っているのかもわからなくなってくる。それでも殴る殴る、殴るっ!

「…わ、わああーーー!」 

 ようやくポロッと落したハンマーを慌てて拾い上げ、その勢いのまま横殴りにして吹き飛ばす。

 う、ううぅ……。私のハンマーがあんな馬鹿の唾液でべとべとになった上にちょっと溶けてるぅ。

 長年、愛用してきた武器のあまりの変わりように凹んでしまう。

 ……あぁ~、なんでこんなことになっちゃったかな。

 なんか、どうでもよくなってきたな~。

 その時、視界の端にのそのそと動く奴の姿が入ってくる。

「……なぁ~にぃ~、逃~げてんだぁ~!!」

「ゲッロォッ!?」

 ビクッと飛び上がったゲブロックと目が合うと一目散に逃げ出していく。

「逃がすかぁっ!!」

 もう後のことなんて考えない!

 怒りを込めて魔力を一気に放出していく。

 魔力に反応してぐにんぐにんとうねった大地がせり上がり、その分少なった大地の割れ目が生じ、まるで地面が大きく口が開いたかのようになっていく。

「……“星の胃袋(ガイアショック)”」

 小さく呟き、ゲブロックが地面に開いた口に食べられまいと逃げる様を見つめる。しかし、逃げ切れずにそのまま呑み込まれて――ぷちゅと潰れる際の不快な音が聞こえてきた。


「よーし、勝ったぞぉ!」

 大地のうねりが収まり、まるで口から吐き出されるかのようにゲブロックの素材と瘴気を解放し小さくなったゲブロックが這い出てきたのを確認し、苛立ちがすぅっと消えていくのを感じながら上げた勝鬨が辺りに響きわたった。






リリィSIDE


 偶然見つけたそれに頬を緩めている間に少し離れたところから轟音と地響き遅れて声が聞こえてくる。

「……ペルニカが片付けたようですわね」

 いつもならば自分の方が先に片づけるのだが、やはり昨日シィドさんを追いかけてからペルニカの気合の入り方が違う気がしますわ。…あとでからかってあげないといけませんわね。

 これからの予定を考えると先ほどから緩みっぱなしの頬がさらに緩んでしまう。

「いけませんわね。ひとまず、楽しい予定を考えるのは仕事を終えてからにしましょう。アフタヌーンティーは憂鬱な朝を乗り越えてから飲むから美味しいんですものね。と言っても、今は夜ですけど」

 見つけた鉱石を拾い上げ固有スキル【錬成】を発動する。その際、派生スキルの【魔力付与】も同時に発動することで水の魔石を作り出す。

 威力は小さ目ですけど、今求めているのはこれぐらいの小規模なモノ。使い終わったらまた売ることにしましょう。

 出来上がったばかりの魔石を含め、3つホルスターに装着していく。

 呼吸を整え、狙いが落下位置を予測して……引き金を引く。

「“幸せの花束(ミルフィーユ・ブーケ)”」

 ――ドゥン!

 真っ直ぐに標的ゲブロックに向かっていった弾丸は逸れることなく標的の口の中に吸い込まれるように入っていく。

 弾丸はゲブロックの口内で一瞬ボンッと膨張し、雷を迸らせながらゲブロックを粉々に四散させた。

 まるで花火のように夜空に咲き誇る雷の花。

 勝利を祝福するかのように咲き誇る花を背に背負い、ワタクシは仲間たちを助けるべく、次なる戦場へと向かっていった。

どうも戦闘描写は苦手です。

あと少しで冒険準備編は終了しますので今しばらくお付き合い下さいm(_)m

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