ピラファ火山⑤生まれ変わった魂
「さて、再戦と行きますか!」
「今度は遅れはとりませんわ」
「…うん、準備は万端整った!あとは勝利を掴むだけっ!」
あの敗走から3日。俺たちは再び挑戦の舞台へと降り立った。
気合も十分、作戦も練り武器も整えた。反撃の狼煙を上げる準備はOK。あとは実際に戦って勝利するだけだ。
「…シィド君」
「大丈夫です。ちゃんとわかってますから」
不安げな表情でこちらを見つめるペルニカさんに意志を示すようにしっかりと頷いて見せる。
そうだ。前回の敗走から学んだのは恐怖だけじゃない。惨めさでもない。仲間を信じて全力を出し尽くすという気概を学んだ!だから、もう敗けない。
この二人の顔にこれ以上泥を塗るような真似は絶対にしない!
目の前にいるゲブロッグは3体。逃げた時よりは少ないが、初めて対峙した時よりも多い数。それでも、もはや恐怖心はない。いや、かつての恐怖を超えて勝算を感じているほどだ。
「まだ気付かれていないようですから作戦通りいきますわよ。二人ともよろしいですわね?」
俺たちが頷いたのを確認し、リリィさんは武器を構える。
「では、行きますわ。……“女王に傅く軍勢”」
先端から魔力の弾丸がマシンガンのように連続して飛び出していき、ゲブロック達を襲い始める。
この技は前回、逃亡の際に使った技だ。彼女の魔力が切れるまで連射することが可能で彼女だとそれが長時間可能になる。リリィさんの戦法もこの間の敗戦後お互いをよく知るためにと教えてもらった。
彼女のジョブは錬成師。鉱石などを結晶や宝石に作り変えることが出来る職業。彼女は鉱石にそれぞれ魔力を込めることで魔石とし、それを傘の内側のホルスターに入れることで弾丸を発射する。
敵に合わせて魔石を選び、戦闘スタイルを変えていくそれが彼女本来のスタンス。
「「「ゲブロッ!?」」」
こっちに気付いたみたいだな。
「…じゃあ、次は私の番だね」
ゲブロックが怒りの形相でこちらに向かってくるのを確認し、ペルニカさんが動き始める。
大きくハンマーを振りかぶると、大地に“ガイアウェーブ”を発動する。彼女の魔力を受けて大きく波打った地面がゲブロック達を襲い、分断していく。
考えた作戦は単純なモノだった。集団を分断し、それぞれが対応に当たる。片付けたら近くにいる方へ加勢しに行く。初めにこの作戦にしなかったのは俺の力量不足だった。
俺一人では、立ち向かえない。そう判断した二人が一緒に行動するという選択肢を選んだ。だが、それでは駄目だった。
そりゃそうだよ。二人は多くの戦闘を経験して連携もとれる。だけど、そこに飛び込みで参加した俺が合わせられるはずがない。
だからこそ今回は各個撃破を選んだ。
勝算もある。イケるさ!
俺は新しく生まれ変わった武器をひと撫でして敵へと向かっていく。
――思い出されるのは、ペルニカさんに殴られてからの会話。
「武器の強化?俺の包丁を強化するってことですか?」
「そうだよ。これは初心者用のモノだし、ゲブロック相手には心許ないからね」
「ですけど、今からフィアードへ帰ってからと言うわけには……」
「それなら、大丈夫!ねっ、リリィ」
声をかけられたリリィさんは未だに腫れ上がった俺の顔を見て笑いそうになるのを堪えながらもしっかりと頷いて見せた。
俺は二人を信頼し、武器を預けた。二人も俺を信頼してあることを話してくれた。二人の想いに応えるためにも敗けるわけにはいかない。
そんな思いを込めて抜き放つ。
それは、以前よりも細長く、いかにも切れ味のよさそうな雰囲気だった。光沢を放ち、まるで俺の戦意を反映しているかのようだった。今の俺なら、例え集団であっても倒せてしまえそうな自身が溢れてくる。
(イケる!この前のような失態は犯さない)
「ゲ~ブ!」
分断され、一時的に困惑していたゲブロックだったが、向かってくる俺を視認すると戦意を剥き出しにして威嚇してくる。
(格下だと思うなら、そう思ってろ!)
間合いに入った瞬間に切り付けるが、刃先が相手の肌に掠ることもなく空振りし勢いそのままに近くの岩にぶつかる。
――スパン
ぶつかったかと思った刃先はそのまま岩を両断した。
…すげぇ。こんなに性能が上がっていたのかっ!?
あまりの切れ味に驚愕してしまった。見ると、ゲブロックも切れ味に脅威を感じたようで目を見開きこちらを凝視している。
これが生まれ変わった、いや強化されたってことか。
ペルニカさんに預けた時に行われたのは彼女の持つ派生スキル【蓄積】を用いた修理だった。
そのスキルは、一度彼女自身によって手を加えられたことのあるモノでなければ使えず、一度手を加えたものをさらに強化していくスキル。経験を積み重ね、それを次へと生かしていく…そういう技。
ペルニカさんは自分が未熟だから一度では満足のいく仕上がりができないと言っていたが、俺は違うと思う。これは、何度でも挑戦し、成長することのできる進化するためのスキルだ。
一度手を加えたからこそ、どうすればいいかがわかる。そして、駄目だったところを直していく。時間こそかかるかもしれないが、より良い品を作る為には必要な工程だ。
「やれる。やれるぞ!さぁ、あいつをさっさと倒して二人の援護に行こうぜ『灼月』!!」
猛る想いで生まれ変わった武器の名を叫ぶ。その頭上にはこの包丁のような三日月が浮かんでいた。
ペルニカのスキル名を変更しました。
【重複強化】→【蓄積】




