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ピラファ火山①逃げ出す札束

冒険準備編の佳境ピラファ火山編スタートです。

「「……暑い(ですわ)」」

「二人とも何してんの、さっさと来ないと置いてくよ~」

 茹だるような暑さに参っている俺とリリィさんを置いてペルニカさんはただ一人ぐんぐん登っていく。

 俺たちは俺たちでこのままここにいても始まらないと気力を絞ってペルニカさんについていくというのをずっと繰り返している。目指す山頂付近まではまだかかるが、このペースで行くと上りきる前には茹で上がっちまうんじゃねえか?

 今現在、登山中の山を見上げながらそんなことを考えてしまうのがこの暑さでは仕方ないと思う。

 俺たちが今いるのはフィアードから一番近い活火山のピラファ火山。

 なぜいつもはいないリリィさんまで連れてわざわざ暑苦しい火山を登っているのか、…事の発端は2日前に遡る。




 家ができるまで退屈だし、何もしていないわけにもいかないと考えた俺はピリカラシシ団子の改良。つまりは、カラシシの実を使う方法を模索していたのだ。

 さすがに冒険者ギルドや町中でやるわけにもいかないので場所はフィアード近郊の川辺だが。先日会った前町長に安全なポイントやアフィからは結界ギリギリを教えてもらったおかげと言えばそうだろう。

 その際、また言い争いに巻き込まれたが……。まぁ、大きなことに挑戦する前に小さな障害が立ちはだかるのはよくあることだ。そう思うことにしよう。

「先に花で試しておくか」

 口布で鼻と口を塞いでから花びらを川に突っ込んですり潰していく。

 ……くっ、やり辛い!

 当たり前だが水中で花びらを抑えるのもすり潰すのもやり辛いったらありゃしない。そもそも、水中だと粉にしても流れていくから駄目じゃん!仕方ないので濡らしてからすり潰す方法に変更する。

 ゴリゴリ、ゴリゴリ

 うん、少しは刺激が弱められてる。ただ、その分味が水っぽい気もする。団子にするときはここで使う水の分、ネリネリネの粉末に混ぜる水を少量に抑える必要があるかもしれん。それは、今後の課題ってことか。

「次は…っと」

 カラシシの実を取り出したはいいが、本当に試すかどうかは悩んでしまう。今度問題を起こしたらマジでやばいかもしれないんだよなぁ。

 ……まっ、それでもやるはやるんだが。一応、ちょっと離れたところでやった方がいいだろう。

 結界の外に出て、周りにカラシシの粉末を撒いておく。こうすれば、魔物もあまり寄ってこないだろうしな。ただし、カラシシの粉末は直接かければ逃げ出すが、撒いてあるだけだと近づきにくくする程度なので早めに取りかかろう。

「………(ごくっ)」

 さすがにあんな事件を引き起こした後だと使うのを躊躇しちまうな。

「ええい、なるようになれ!」

 川に突っ込んである程度表面を擦ってから潰していく。

 

 …ゴボッ、ゴ…リ、ゴリ


 さすがに水中だとそれまでひどくはないな。ただ、微妙に川が赤く染まって来てる気がするけど……。

 若干、目や鼻に刺激を感じながらも作業を続けていたが、視界の端に何か漂っているのを見つけてたが、そちらを見ると魚がぷかーと浮いているではないか!

 よく観察してみれば川下を中心に魚が浮いている!こんなことをしてる場合じゃねえ、急いで集めねえと…!

 借金生活をしている俺からすれば、その光景は札束が浮いているように見えない。川の流れは緩やかとはいえ、早くしないと流れて行ってしまうと思い、慌てて川の中へと入っていく。

 ガッ、ずりっ…ドボン!

「いってぇ~、なんだぁ?」

 何かに躓いてしまったので辺りを足元を探してみるが、何も見えない。結構デカいモノに躓いたと思ったんだけどな。

(……んっ?なんだこれ?)

 転んだ付近に手を伸ばしてみると、何か硬いモノに触れた。

 …だけど、何も見えない。

 ペタペタとその何かに触ってみるが、たしかに大きくて硬いモノがある。……大体60㎝ってところか?にしても、触れるのに、見えないって不気味だな。

「よい、しょっ!」

 持ち上げてみると、岩みたいな透明な物体だった。水がぽたぽたと滴り落ちているが、一体なんなんだ?重いし、岩かな?

 見つめていると、手を押しのけるように何かが内側から出てこようとする。

「うわっ!?」

 驚いて放り投げると「きゅう」という音がして、光が上がる。

「これ、魔物か?」

 光が収まるころには素材が出現しているし、魔物だったのは間違いない。にしても何だったんだ?

 俺は、知らず知らずのうちに倒していたらしい魔物の正体が気になってしょうがなかった。素材によってはその魔物独特のモノがあるのでギルドへ持って行けばわかるのだろうが、今後のことも踏まえてどんな魔物だったのか確認しておきたかった。

(目を凝らしてもわからないような擬態をする魔物にいきなり殺されてました何てごめんだからな)

 そんな思いが強く、本来なら魔物が逃げ出すのを待つのだが、確認したい気持ちを抑えきれずに素材の山をかき分けていく。

 すると、姿を現したのは小さな亀だった。

「……お前がさっきの魔物の正体、か?」

 姿は見えなかったので確証はないが、この亀の甲羅も周囲に溶け込むような色彩なのでまず間違いはないだろう。

 俺の姿に驚いたのか必死で逃げだそうと素材の山に脚をかけてひっくり返って起き上がれなくなったようだ。

 じたばたともがいているのを見ているとなんだか微笑ましくなり、知らない間に頬が緩んでしまう。

「……しょうがないな。ほれ、待ってろ」

 俺は亀を抱えて川に放してやる。

「もう捕まるんじゃないぞ~。って捕まえたのは俺か」

 なんだか気分は浦島太郎だ。だとしたらあの亀がいずれ俺に恩返しに来るなんてこともあるかもな。

 ……ハッ!そういえば、魚はっ!?

 あんなことがあってすっかり忘れてたが、魚を回収しなきゃいけないんだった!

 水面を見ると先ほどまでぷかぷかと浮いていた魚たちは流されたのか、それとも意識を取り戻したのかほとんど見当たらない。慌てて川に入っていくが、バシャバシャと音を立ててしまったことに驚いたのか僅かに残っていた魚たちも意識を取り戻し水中に逃げていく。

「ちくしょう!逃がしてたまるかっ!」

 なんとか一匹捕まえたが、そいつも手の中でビチッビチと跳ねて俺の手をすり抜け泳ぎ去ってしまった。

「……マジか」

 札束が逃げていく後姿をただ呆然と見送ることしかできなかった俺はしばらく放心して立ち直れなかった。

基本的にシィドは諦めが悪いです。しつこい男なんです。女性に嫌われたらどうするんでしょうね。

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