トンネルの待ち合わせ
私は、お母さんと一緒におばあちゃんの家に住むことになった。
都会での生活に慣れていたから田舎での
暮らしが不安でたまらない。
友達はできる? 迷子にならない? 幽霊とかでるのかな?
頭の中では、そんなことばかりが過ぎる。
そんなことをよそに私は
新しい学校の新しい教室の前にいた。
「さあ。それでは新しいお友達を紹介します。」
新しい担任の先生がそう言うと私を教室へと入れる。
入ると同時に、小さな教室には6人しか生徒達がいなかった。
きらきらとした目で嬉しそうに
私を見る。
その中で一人だけあきらかに服装が育ちの良いお嬢様な感じの子がいる。
(都会から来た子なのかな?)と疑問に思いつつ
じっと見つめてしまった。
その子もこちらに気づいたのか、笑顔で返してきた。
担任の先生が黒板に名前を書き始める。
書き終えると、中腰になり
「さぁ、自己紹介。できる?」
そう耳元で囁いた。
こくりと私は頷いて
「はじめまして!道川 夏香と言います。
よろしくお願いします。」
明るく振舞った。
言い終えると同時に、拍手が鳴り響く。
その後は席に座って授業を無事に終え、昼休みになった。
鐘が鳴るとみんな運動場へと飛び出して行 度胸試し
小学3年生になって
新学期にも徐々に慣れてきた
ある朝のこと。
一本の電話が鳴った。
受話器をお母さんが耳にあて、話し始める。
話し込んでいるお母さんの表情が徐々に、
深刻そうな顔になっていく。
すると、話が終わったのか ガシャリ と
慌てた様子で受話器を戻し私の方を向き
「夏香!大変!おばあちゃんの容態が悪くなったって」
今にも泣き出しそうな顔でそう言った。
「え・・・?春休みの時元気だったのに・・・」
「突然倒れちゃったみたい・・・心臓発作じゃないかって
病院の先生は、言ってるみたいだけど。」
「・・・」
何も言えなかった。
いつも遊びに行けばお小遣いもくれて、
昔話しを色々してくれたおばあちゃんが倒れるなんて、信じたくもなかった。
お母さんは、慌ただしく荷造りを始める。
「お母さん。今から行くの?」
「おばあちゃんが心配だし、それにお父さんだってあっちにいるんだから。
いつかこうなるだろうとは、思っていたけど・・・」
お母さんの言いかけた口が止まる。
私にも分かった。
何を言いたいのか。
「・・・わかった。」
その一言だけを言った。