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プールハウス

作者: haco

プールの前のどきどきと、

ライブの前のどきどきは何か似ている。


朝起きた時から訪れる、高揚感。

練習してきたけど、失敗するんじゃないかとか。

ギター持つ前にお腹の辺りが寒くなって、

急にトイレに行ったりする感じとか。


水に入ってしまえば、そんなの全部吹っ飛んで

ただ、楽しむだけなのに。


毎回、毎回、そう思う。


15歳でジョン・フルシャンテに憧れてギターを握り、

男の子たちを押しのけ、押しのけやってきた。


赤いジャズマスターは、元ナンバガの田淵ひさ子と同じ。


ローン組んででも手に入れた。


そんなことを本番前に楽屋の端で、考える。

意味なく何度も何度も拭きあげて、不安だったソロの部分を復習する。


ちっとも、慣れない。


どのイベントに出てみても、私より上手い人は山ほどいるし、

センスのある人も、パワーやオーラや、天才だと思わせる人だっている。


そんな人たちと、同じ舞台に立つ。


緊張と威勢が、体中を熱くさせる。


全身の産毛が逆立つ。


そんな感触。


「ミノル、もうすぐって。」

「あっ・・うん。」

「いっちょ、かまそ。」

「うん。」


メンバーは、わたし意外みんな男の子の4人編成。

ギャルバンでくすぶっていた私を引き抜いてくれた人たちだ。


女の子と男の子の違い。

それは、音楽をやっているとよくわかる。


理屈じゃない音楽。

それを、男の子たちとだったらやれる。


怒哀の情をぶつけられる。

むちゃくちゃストイックにもなれる。

ぶらなくていい。


思い切りギターが弾ける。


自分のためだけに。


「ミノル、むちゃくちゃしてね。」

「・・うん。」

暗くなった舞台のはけで、ドラムのサトルが呟く。

「俺、あんま寝てないから間違うよ、たぶん。」

ひひっと片方の上唇を上げて笑う。


そんな笑顔に、少しだけ緊張は隠れてくれる。


舞台に上がると、マーシャルにつないで、設定を合わせる。

それぞれが、少ししまった表情で呼吸を合わせ始める。


暗がりの向こうでお客さんたちのざわめきが大きい。


トゥタタン


サトルの合図で、照明がわっと舞台を包む。


始まる、

始まる、

始まる。


最初のコードはEm


後は、楽しむだけ。


そうだ、忘れてた。


プールの後の疲労感は、何よりも気持ちいいんだっけ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ライブの前の緊張とプールの前の緊張の比較等はよろしかったのですが、読み終わっても何かしらの感動はありませんでした。 ただでさえ平坦になりがちな短編・現代小説では、テーマが非常に重要になってく…
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