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姉貴のレストラン

 女の子の服は感心する。機能的で利にかなった形だ。あと男みたく見えると見苦し物とか逮捕されそうなものが、無いので、その点心配ない。トランクスのボタン閉め忘れ息子が何てことは皆無なのだ。ただマキから譲り受けたブラジャーとズボンはダメだった。前者は小さすぎ、後者はブカブカだった。「軍曹、私は悲しいです。」蚊の鳴くような声でマキは泣いていた。トイレから嗚咽が聞こえていたらしい。何がそんなに悲しいのか理解に苦しむ。

 PXに買い物に行くと、マキが不思議そうにクンクンしている。「軍曹、私と同じ石鹸ですよね?香水使って無いし、何でいい香りするんですか?」確かに支給品なのだが、少し加工してある。おかずに出た果物を教わった魔法とやらで行っている。俺のオリジナルなのだが、「私痩せてるから」と言っておく。また夜中布団の中で泣くのだろう。

PXのスタッフに採寸と品物を持ってくるように頼み、最低限揃えよう。姉貴の家にいけば買いに行く暇も有るし。

病院暮らしもいい加減飽きたころ、マキと俺は退院となった。軍服に着替え機関車で4日もかけ祖国の首都に着く。これから貯まっていたお休みを取るように書面を渡された。「軍曹これからどうします?」マキと共に二ヶ月の休暇、溜まっていた有給とはいえ、休み慣れていないので余りピンと来ない。「取り敢えず姉貴の嫁ぎ先に行くさ。親は死んじまったし、兄貴も戦死した。姉貴の旦那は帰還兵で足が悪いがコックでね、レストランやってる。甥っ子も見たいしな。」マキは元気なく頷いた。「私、お父さん戦死したので一人なんです。軍曹のところ寄せてもらえませんか?」仕方ない。部下の窮地だ。「いいよ。話付けてやる。泊まるとこは任せとけ。」じゃ行くかと姉貴のレストラン目指し歩き始めた。

 市電に乗り少し郊外に出て駅から5分店が有るそうだ。「ここか、まあまあいいじゃない。」茶色い壁に白い扉、店の看板が取り付けてあり、なかなか洒落てるな等と感心しながら眺めた。「あの、どちら様でしょうか?」後ろから声を掛けられ振り向くと、幼い男の子をつれた女性が立っていた


子供と散歩して自宅兼レストランの我が家の前に帰って来ると、女性が二人立っていた。一人は茶髪で普通の帝国人もう一人は珍しいシャンパンゴールドの髪でおまけに背が高かった。 「あの、どちら様でしょうか?」問いかけると二人が振り向いた。シャンパンゴールドの髪の女の子(とても若そうに見える)が緑色の大きな目で見つめてきた。「姉貴、ただいま。生きて帰ってきたよ。」女の子は私の手を握りしめ涙を浮かべている。私は混乱した。だってこんな妹いた覚えもないし。おとーさん、隠し子いたのー!等と思い悩んで居ると女の子の口から強烈な一撃が「レイだよ、俺だよ。忘れたのか?」

 

 姉貴はポカンと口を開けて見ていた。「レイ?随分綺麗になって。」まだ混乱していた。「中隊長から手紙来なかった?」姉貴はコクコク頷く。「来てた、でもご近所の息子さんみたいに、大事な物とか負傷して女の子の格好してるのかと。」男所帯で元々そう、お姉系に目覚める若い兵士もいる。ストレス、体の負傷様々だ。「違う。完全に女だ、」少し声が大きくて、思わず回りを見渡した。多分、可愛そうな兵士のに見えるだろうな。

「彼女はマキ ローム、同じ小隊にいたんだ。悪い休暇の間ここに居られる?」「多分大丈夫。旦那に相談するけど、まあ入って、立ち話も何だし。」

二階が住居のレストラン。余り大きくない居間に通され、待っていると、姉貴がコーヒーを持って現れた。「いやー驚いた。手紙頂いたときは冗談かと思ったわ。ところで、休暇はいつまで?もうすぐ戦争終わるなんて言ってたけど、兄さんも帰って来ないし、レイだけが最後の家族。心配したの。このまま此処に居て欲しいくらい。」姉貴は幼い我が子を抱きながら悲しそうに目を伏せた。「溜まっている二ヶ月分まとめて取った。その間に終わるといいな。正直、仲間には悪いけど前線飽きたし。」此方を見つめる甥っ子の頭を撫で笑いかけると、嬉しそうに笑った。「じゃ此処で、ノンビリ出来るのね。お店でも手伝って貰えたら助かるわ。」


 店のオーナーである旦那に挨拶して(彼は仕込みのため厨房にいた)部屋を分けて貰うと、軍の知り合いに頼んで荷物を運んで貰う。「何故か沢山貰ったんだ。」高そうなブランドもの洋服を運んで行く。彼が元々、男の子と言う事実は上層部で隠蔽されている。何も知らない人から見れば、物凄い美人が(゜ロ゜)!になった。大量のブランド物も、頷ける。本人は「物に罪は無いし、買いに行く手間が減る。」と、上機嫌だった。

 基本的に、ここは首都郊外。近くに中規模の軍需工場があり、そこの工員さんや女性従業員の集まる場所だ。秘密のはずの内容も筒抜けで、ベアリング工場とみんなが知っている。だから此処に店を構えたそうだ。平和になっても工場は無くならない。なかなか考えているなと感心する。「今日はゆっくりして。明日から手伝いお願い。ユニフォームは準備しとくわ。」旅の疲れもあり、掃除もそこそこにベットに倒れるように寝てしまった。


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