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魔族の国の驚異的な脅威

作者: ひろ

※本作はフィクションです。実在の法律・人物・団体とは一切関係ありません。

 国王は臨時会議での影の報告に耳を疑った。

 「それは、まことか?真実なのか?」


 影は静かに、しかしはっきりと答えた。

 「はい。真実にございます。

 かの魔族の国は『民主主義国家』でありました。」


 「何ということだ!」


 「あ、ついでに言うとシビリアンコントロールもバッチリです。」


 「マジかぁ〜」


 王、大臣、有力貴族が揃って頭を抱える。



 そんな中、いまいち話の内容を理解できていない勇者くん。

 平民出身の彼は、今日は大事な話があると言うことで会議に特別参加していたのだった。


 「ええと、なにか不味いことなんですか?その『民主主義』って。」


 王は、(こいつを呼ぶんじゃなかった!)と後悔しながらも、言葉を選びながら勇者に説明をはじめた。


 「んーと…あのな勇者くん。いま、この国と魔族の国が戦争状態にあることと、戦況がこちらにとってヒジョーに不利なのは、知ってるよな。」


 「もちろんです。

 その状況を打破するために僕が選ばれたんですよね?」


 「左様。単身で魔王を倒しこの戦局をひっくり返す。それが狙いだったのだ。

 しかし、その前提が崩れた。」


 「ん〜…ちょっとそこがわかんない。」


 国王の説明を軍務大臣が引き継いだ。


 「勇者殿。つまり魔族の国に『魔王』はいなかったのだ。

 唯一無二の戦闘力を持ち、その存在が魔族全体の意思決定に大きく作用する。そんな王の存在は幻だったのだ。」


 「でも、トップはいるんですよね?僕がそいつを倒せば解決だったんじゃ無いんですか?」


 「無駄だ。

 彼の国では、トップというのはただの役割なのだ。たとえ倒したところで替えが利く。何人倒そうと戦争遂行に支障を来さない。」


 「そんなバナナ〜…それじゃあ僕はどうすれば良いんですか?中ボスとかいないんですか?」


 これについては、先程の影が説明を引き継いだ。


 「それも無理ですね〜。

 向こうは軍も組織化されていて、突出した個人の武を誇るような体制じゃないんですよ。各軍団の長はいわば管理職。これも倒されたところで替えが利きます。」


 「え〜。」


 最後に王が勇者に声をかけた。


 「ということでだ。勇者くん、君の処遇や今後の方針はあとでゆっくり相談しょう。

 下がってよいぞ。」



 せっかくたくさん修行したのになあ、と言いながら議場をあとにする勇者。

 それを見届けると、議場が俄に騒然となった。


 「これはまずいぞ。『魔王さえ倒せば何とかなるんじゃね?』という我々の目論見が完全に崩れた。」


 「それどころではない。勇者とはいえ、平民に民主主義の何たるかを知られてしまった。」


 「この国に民主主義の概念が入ってきたら、我々の権力基盤が揺るぎかねん。」


 「そんなことになったら、外も内も敵だらけだ。」



 紛糾する会議。そこにさらに影が爆弾を投下した。


 「魔族と国境を接している地方では、民主化の機運が高まってますねぇ。

 いくつかの地方が魔族の国の傘下に入りました。」


 「うわぁ…ファンタジーにリアルな侵略感、要らないんだけど。」

 王はゲンナリ。



 喧騒が一転、議場を暗い雰囲気が包み始める。


 宰相が口を開く。


 「王よ、かくなる上は勇者を陽動に利用しましょう。

 戦闘能力、隠密性、共に頭抜けた能力を持つ彼を使い、敵上層部を片っ端から暗殺するのです。いくら替えが利くとはいえ、多少の動揺による指揮系統の混乱は期待できます。

 国境付近では魔族に見せかけて集落を襲わせましょう。魔族は危険だという認識を植え付け、わが国への帰属意識を高めるのです。」


 「なんかこっちの方が悪者っぽくない?」

 対する国王。もうやる気ゼロ。


 「必要な措置です。

 現在の国民の知識レベルで民主化などすれば、それこそ国が滅びます。

 かと言って知識レベルを引き上げたら、我々が路頭に迷います。

 アホの国民に君臨する我々。それが我々が生き残る唯一の道です。」


 「うわぁ黒い。うちの宰相黒いわぁ…。」


 「ちょっと待った。

 さっき宰相は言ったよね?『魔族は危険だという認識を植え付け』って。じゃあ実際の魔族はどうなの?」


 「そりゃあお前、別に平民にとってみりゃ害なんか無いわ。

 というより、古今東西、支配者が代わって困るのは旧支配者層。

 そこに暮らす人にすりゃあ、暮らしやすくなりさえすれば、誰が支配者になろうと気にせんわい。

 …ってゆゆゆゆゆ勇者くんっ!!!?」


 「忘れ物をしたので戻ってきました。

 でも、ふーん…そうなんですね。

 因みに、こっちの王様は替えが利きますか?」


 「まままままあ、あんまり利かないかも、しれ、ま、せんね。」


 「なるほどー。

 それと、この国と魔族の国、どっちかが残るとしたら、どっちが残ったほうが、幸せな人が増えそうですかね?」


 「うーん…6:4で魔族かなぁ…。」


 「うん、王様のそういう正直なところ僕結構好きだよ。

 じゃあ皆さんさようなら。究極爆砕魔法(ノーベルインフィニティ)!!」


 「うわあぁぁぉっ!!!!」




 その日、人の王が住む城は爆発四散して地上から消え去る……………事は無かった。


 勇者の脅しに腰を抜かした王は、20年後に国を民主主義体制へ移行することと、移行までの間に国民の公民教育を徹底することを宣言。

 後に、民主化を指導した偉大な王として称えられることになる。



 魔族との戦争も終わった。

 もともとのんびりした性格の魔族は、『なんか弱っちい人間が、やたら絡んで来て面倒くさい』程度の認識で、戦争をしている気すらなかったので、人類が攻撃をやめたら自然消滅したのである。



おしまい

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