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雨景色  作者: 遠藤 敦子
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 母方の祖父母と暮らし始めてから、今までのことが嘘のように感じられるくらいのびのびと過ごすことができている。不倫で家を空けられることもなければ、暴言を吐かれることもない。夫婦喧嘩とも無縁だった。祖父が面白い話をしてくれ、常に僕と祖母を笑顔にさせようとしてくれた。笑い声がする食卓で食事ができる幸せを噛み締めている。やっと普通の生活というものができている気がした。

 転校先では友達にも恵まれ、楽しい学校生活を送ることができている。クラスのメンバーもこのまま持ち上がりで、中学生になってもメンバーは変わらないらしい。中学生になってからは部活と勉強で忙しくしていたけれど、小学校時代の友達とは今も息抜きにゲームやスポーツをして遊んでいた。


 中学3年生になり、本格的に進路について考える時期がやってくる。僕は大学進学を考えていて、なるべく祖父母に金銭的な負担をかけたくなかったので県で2番目に偏差値が高い公立高校を目指していた。他の友達は塾に通い始めていたけれど、僕は塾には通わず進学ゼミという通信教育のみで勉強する。高い塾代を出してもらうのは申し訳なかったからだ。

 勉強の甲斐もあり、僕は第一志望の高校に合格する。中学校の制服は学ランだった。高校では白いブラウスに黒いブレザーとパンツに赤いネクタイを身につけ、少しだけ大人になったような気がする。入学式当日、掲示されたクラス一覧を見て自分の教室を探した。

「新入生? 何組?」

 案内係の腕章を身につけた女子生徒が僕に聞いてくる。僕は彼女を見て、もしかしてあの時の果歩ちゃんではないかと確信した。大人になっていたけれど、あの頃の面影が残っているような気がしたからだ。

「僕、3組です。違ったら申し訳ないんですけど、先崎果歩さんですか?」

 僕はダメ元で聞いてみた。違ったら申し訳ないし、穴に入りたくなるくらいの恥ずかしさではあるけれど。

「覚えててくれたの? 浅井圭亮くんだよね?」

 果歩ちゃんから聞き返され、僕はうなずいた。もう2度と会えないと思っていたのもあり、高校で再会できて嬉しくなったのだ。また果歩ちゃんが僕を覚えてくれていたことも嬉しかった。小学生の時のことだしもう忘れられているような気がしたからだ。

「3組はあっちだよ。楽しい高校生活を送ってね」

 と言う果歩ちゃんに僕は手を振り、自分の教室に向かう。果歩ちゃんにふさわしい人になりたいと思いながら廊下を歩いた。

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