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雨景色  作者: 遠藤 敦子
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 かつてはどこにでもいる仲良しな家族だった。けれど、どうやらそう思っていたのは僕だけだったみたいだ……ーー。

 父が他の女性と不倫していることが発覚してから、両親は常に喧嘩ばかりしている。父のスーツからは甘い香水の匂いがし、知らない女性と電話している様子も見たことがあるので、僕ですら父の不倫には薄々気づいていた。近くで見ている母は尚更で、そんな母は日に日に精神的に不安定になる。

 毎日お酒や薬に溺れ、機嫌が良い時とそうでない時の差が激しかった。ある日僕が帰宅すると、母は台所のテーブルでうつ伏せになっている。近くにはお酒の空き瓶や薬の亡骸が転がっていた。

圭亮(けいすけ)を産んだらあの人は変わってくれるって思ったのに……。こんなんじゃ意味ないじゃない。あんたなんていてもいなくても何も変わらない」

 母は泣きながらテーブルに突っ伏して言う。圭亮というのは僕の名前だ。いてもいなくても何も変わらないという言葉を聞き、頭が真っ白になる。じゃあ僕がいなくなったら良いのだろうかなんて思ってしまった。たまらなくなり、僕はランドセルを置いて泣きながら家から飛び出してしまう。雨が降っているのに傘も持たずに出てきたのだ。

 どこまで走っただろうか。気づけば公園まで来ていた。誰か助けてほしい。僕の気持ちをわかってほしい。そう思ってベンチに座る。


「泣いてるの? 大丈夫?」

 しばらくして、僕より1歳か2歳くらい年上に見える女の子が声をかけてきた。全く知らない子だけれど、僕は先ほどあったことや今までのことを全部彼女に話す。無意識に口から話したいことがたくさん出てきたのだ。彼女は僕の背中をさすりながら

「今まで辛かったね……。話してくれてありがとう」

 と言ってくれる。私は君の味方だと言ってくれ、僕は心強さを感じた。彼女は僕より1歳上で小学5年生だという。

「あ、そうだ。名前なんていうの?」

 と彼女に聞かれ、僕は浅井(あさい)圭亮(けいすけ)とフルネームで名乗る。先崎(せんざき)果歩(かほ)というのが彼女の名前で、僕とは違う学校で隣町の小学校に通っているそうだ。朝日が出てきて、気づいたら早朝になっている。僕は果歩ちゃんと別れ、再び家に帰った。


     *


 ある日、家に警察が来た。父親が不倫相手の女性に高いブランドバッグやアクセサリーをプレゼントしたり、熱海や軽井沢やハワイへ旅行したりするために会社のお金を横領していたことが発覚し逮捕されたのだ。母親はその影響で、崖から海に飛び降りて自殺した。遺書には父親や僕への恨み言が綴られていたらしい。そういうわけで僕は転校が決まり、祖父母と暮らすことになった。

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