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第2話月へ


「そういや、なんでわざわざ月なんだ? 宇宙治安維持組織に中持ちでもしてもらうのか?」

「そのつもりです、間に挟まれてる地球と月は面倒な状況だと思いますし」

「それもそうか、地球圏の監視しかしてない奴らだけど」


サイガスコロニーを出発して3日。セグレスの食堂でクリス、レーシア、ロイの三人が今後の行動方針を決めていた。


「王宰機とやらは回収したし、次は俺の野暮用だな。ここから月に向かう道中に俺らの補給衛星があるんだが、そこに予備の機体があるからちょっと遠回りして回収したい」

「そんなに重要な機体なんですか?」

「いや、全然。ただの量産型BFだけど8分を超える戦闘になるとどうしてもブラックバードだとな」

「あれだけ戦闘が出来てて物足りないんですか?」

「ブラックバード単体だと活動限界が10分程度しかなくてな、それ以上は動けないんだよ、戦闘さえしなきゃ30分くらいは持つんだが」

「そういえば支援用の戦闘機なんでしたっけ」

「そ、そもそもが誰かの背中に乗ってないと成立しない機体って訳だ」

「じゃあ今から取りに行くのは本体ってことですか?」

「いいや、ブラックバードの本隊は今封印状態だから、勝手に出てこない限りは見つけることもできん」

「なんですかそれ」


「一旦艦に戻って先行して回収しに行ってくるわ、無いと思うけど襲われたら頑張ってくれよ、機体も足りないことだしな」

「了解しました、合流ポイントは月で?」

「いや、離れててもハクライのレーダーなら補足できるから追いつく」

「了解しました」


「月に着いたら上手く事が運ぶといいですね」

「あくまでも地球と月は中立を保ってますから、我々以上の武力を持っているんですから、中立の立場として休戦協定を結ぶ手伝い程度はしてくれるんじゃないでしょうか」

「だといいんですが」


「あ、隊長」

「どうしたネーナ?」

「さっきハッチから生身の人が出てった、ような気がするんですけど」

「え、そんなことないでしょ?」


ハクライと別れ30分ほど過ぎてからの事だった、休息を取っていた部隊員の耳に警報が聞こえる。


「戦闘警報!?」

「火星艦がレーダーに引っかかりました、目標はオウル級、敵BF部隊は出撃を開始してます!」

「各員戦闘態勢! レイエス! 現場の式は任せる!」

「隊長は出ないんですかい?」

「僕の機体は壊れてるから、皆に任せるよ」

「了解です」


クリスを覗く全員が格納庫へと向かい、クリス自身は艦橋へと上がる。


「状況は?」

「大分芳しくないですな、オウル級とまともに撃ち合っては旧型艦のセグレスでは」

「進路をハクライがいるはずのポイントへ向けよう、少しでも早く合流しないと」

「しかし、地球圏を越えた位置にまで敵艦が来ているとは、本国攻撃の噂は本当かもしれませんな」

「偵察の可能性はある、サイガスまであれだけの艦隊が来てて、それが全滅させられたんだから気になって様子を見に来ただけかも」

「ふむ、それもそうですな」


「BF部隊出撃しました、各機が有効射程に入るまでまもなくです」

「援護砲撃開始、艦に敵を近づけないようにお願いしますよ」


「ネーナちゃん、後ろに着いてくれ敵の数は少し多いが各個撃破していく」

「了解」


戦場に無数の閃光が光り、戦闘が始まる。


「敵艦の動きがおかしい、なんで砲撃してこないんだ」

「たしかに妙ですな」

「レイエス機、3機目撃墜です。他の機体もどんどん撃墜してます」

「機体性能で上回るはずの火星軍がこうも簡単に? レイエスと通信を繋いで」


「レイエス、敵の動きに妙な部分はない?」

「奴ら旧型機で来てます、それに動きも悪い。もしかしたら新兵部隊かとしれませんぜ」

「それにしても動きのいい隊長機とかが居てもいいはず、どういうことだ」


「艦長! レーダーに感あり。右舷前方の隕石の影に敵艦が!」

「なに!? なんで発見が遅れた!」

「わかりません、敵艦から熱源検知! 砲撃来ます!」

「回避しろ!」

「間に合いません!」


伏兵艦から放たれた砲撃がセグレスを掠め、一部の砲塔が融解する。


「砲撃初め! 反撃して敵を落とせ!」

「敵艦から3機目BFが出てきます!」

「味方気を呼び戻せ!」

「あの黒いBF」


「目標発見、これより攻撃を開始する」


「クリス!」

「王女! ここは危険です!」

「艦が落ちればどこにいても変わりません! それより王宰機を使いなさい」

「ですがあれは」

「いま使わなくてどうするのです! 貴方が今するべきことはなんです!」

「王女をお守りし、王宰機と共に月へ送り届けることです」

「そのために手段を問う必要はありません、やりなさい」

「わかりました、必ずお返しします」


艦橋から格納庫へと向かったクリスを艦長と共にレーシアは見送る。


「全く、ここまで言わなきゃ動かないなんて」

「軍人の性でしょうな、その点はお兄様とは大違いで」

「そうですね」


「パット! 王宰機を出す!」

「えぇ、受領したばっかでまだロクな武装調整が終わってないですよ!?」

「調整なんてしてたのか?」

「王女様からの命令で隊長用のOS書き換えは終わってますけど」


(そういう事か)


「使える武装は」

「近接用の実体剣のみです」

「それだけあれば十分だ」


コックピットに入りモニターを着けたクリスの目に、機体の型番と王宰機の名前が見える。


【JBF-8 アルバレス】


「いい名前だ」


艦内に爆発音が響く、大きく揺れた艦の中でアルバレスの操縦桿を握る。


「カタパルトが被弾した! 隊長! そのまま出てくれ!」

「了解」


モニター越しにパットへ向け親指を立てる、見えるはずも無いパットは出撃の誘導をしている。


「アルバレス、クリス・エンデバー行きます!」


重装甲のBFがセグレスから出撃し、敵のBF達は狙いをアルバレスへと変える。


「目標のもう1つが出てきたな、アル、ロル仕掛けるぞ」

「了解です隊長」


「なんだこれ、全方位モニターなのに前しか見えない、モニターが故障してるのかっ。

機体が重い、なんでこの重量でスラスターがこれしかないんだ」


慣れない機体に手間取るアルバレスとクリスを敵機が囲む。


「その機体のパイロット、その機体を渡せば命だけは助けてやる、降伏するなら今だ」

「降伏なんてするもんか、かかってこい!」

「愚かな」


圧倒的な機動性でアルバレスの周囲を飛びまわり、翻弄する3機。

モニターが正面しか見えていないクリスは困惑しながらも1機に狙いを定め剣を振り上げる。


「かかったな!」


敵機の腰部から射出されたワイヤーの先端がアルバレスを巻き取り、そのワイヤーから電流が流れる。


「ぐっ、操縦が効かないっ」

「この際の壊れても構わん! 落ちろ!」


拘束している敵機体と他の2機から同時にバズーカ砲が放たれる。


「やられる!?」


ロケットの爆発がアルバレスを完全に包む。

その機影が確認できなくなるほどに。


「やられました、かな?」

「いえ、あの程度では落ちません。それに、封印を最優先で解けと言ったのに。まったく」

「封印?」

「あの重装甲はダミー用の偽装装甲なんです」


「あれ、無事だそれにモニターが見えるようになってる」

「傷1つ着いてないだと!?」


爆煙の中から白い装甲に金のラインが入った騎士に似せたフェイスのBFが姿を現す、騎士のようなフェイスのその機体で剣を握りだし敵機に切りかかる。

先ほどとは大違いの機動性で叩かれた敵機のコックピットが潰れ、数秒間を置いて爆発する。


「まずは1機」


「よくもアルを!」

「待て! 迂闊に仕掛けるな!」


もう1機が近接用のサーベルを構え突撃する。


「落ちろ!」


降りかかるサーベルを回避し、カウンターを仕掛けるように切り返したアルバレスの剣が敵機を切り、もう1機も爆発する。


「あれが王宰機、その性能だけでも記録を本国へ届けねばならんか」


逃げようとした敵機を追いかけ、追い越してしまったアルバレスが振り返って敵機の両腕を切り落とす。


「投降しろ! これ以上無駄な戦闘は望まない!」

「降伏するくらいなら特攻してやる!」


腰部からワイヤーを射出し、アルバレスの近くに浮遊していたデブリへと突き刺したそのまま巻きながらアルバレスへと蹴り入れようとするが、避けられる。


「技量差はどうにもならないか、これで機体性能が同格ではっ!」


反撃で振り下ろされた剣に潰され、敵機体が破壊される。


「圧倒的ですな、あの機体は」

「敵艦後退していきます! 撃墜しますか?」

「いえ、辞めておきましょう、無駄な殺生は私たちの仕事ではありません」

「後退信号も出ていますし、無駄な追撃は必要なさそうですが、もし王宰機の戦闘データを取られていたら大変なことになるのでは?」

「とのことですが、どうしますか王女」

「いえ、こちらも消耗しています。追撃中に敵の増援に襲われても困りますし」

「ハクライの補給衛星で修理をさせてもらうとしましょうか」


敵を退けた一行はそのまま補給衛星へと向かい、ハクライとの合流に成功した。


「ほえーこれが王宰機、完成物は初めて見たな」

「完成物は? 何かを他で見たことがあるんですか?」

「まぁその辺はややこしいから機会があったら話すわ、武装系が使えないんだろ? 俺がいじっていいならここにある武装も含めて使えるようにするが」

「レーシア王女に確認しないとわかりませんが、可能ならお願いします」

「よし、こっちの調整が終わったら何とかなると思う」

「これが言っていた予備の機体ですか?」

「そ、他の機体は持ってこれてなかったんでな。BFB-03カスタムだ、型落ちの機体だがないよりはマシって奴だ」

「BFB型、そんな骨董品の機体を持っているんですね」

「地球で量産されたBFの大本になってる機体だな、というか全てのBFの大本か」

「というか、こんな機体を持ってるなんてロイさんって一体」

「それもややこしいからまた今度だな」


「隊長、先行して出てきた敵機やはり無人機でした火星が無人機の生産に成功していたっていう情報は本当だったみたいですね」

「でも、そこまでの性能は引き出せて無いようだ、そこまで脅威になりそうにはないね」

「ですが戦闘データを取られて改善されたら」

「脅威になりえるか、撤退した敵艦はデータ収集が本来の目的だったのかもしれないね」

「可能性はありますね」


セグレスの修繕にハクライへの予備機の積み込み。

各機体のシステム調整を済ませ、補給衛星内の物資の積み込みも終わった一行は月へと向かい再度艦を進めようとしていた。


「これで予備の武装と腰部レールキャノン、左腕部の隠しビームソード、頭部機関砲、胸部機関砲、あとは脚部の小型バズーカとか、まあ諸々使用できるようにしておいた。マジでバランスのいい兵器だな、流石。俺が乗りたいくらいだわ」

「流石にそれは、随分手馴れてるんですね」

「基本形はうちのと変わらないんでな、自分の機体の調整で手馴れてるんだよ。キョウカ! 衛星を地球に戻すように設定しておいてくれ、補充を指示しておく」

「わかった!」


「地球圏に補給出来る伝手があるんですか?」

「まぁな、月へ向かう途中にもう1回襲撃されたら流石にうちの艦が持たん」


「隊長! 本国から緊急の報告が!」

「何があった!」

「艦橋へ上がってください、ロイさんも!」


慌てながら2人へ駆け寄るネーナに着いていき艦橋へと上がっていく、艦橋へと上がると本国からの通信を受けた王女と隊員たちが集まっていた。


「各地で戦闘指揮を執っていた王族が次々に奇襲を受け、既に第2、第4皇子とレーシア様以外の王女様が戦死なされたという報告が上がっています。

奇襲をした部隊は集結し、木星へと向かっているようです」

「では、本国が」

「おいおい、どうなってんだよ。木星がいくら弱いとはいえそこまでやられるのか?」

「報告によると、木星艦隊の付近に急に出現し次々と」

「お父様は何か?」

「王女様にはなにもありませんが、各機動部隊には本国防衛にあたるようにと」

「なら木星へ戻ります、ここからではかなり時間が掛かってしまいますが」

「ここからサイガスコロニーまで3日、コロニーから木星まで1週間近くかかります。すぐに攻勢が始まらなければいいですが」


「ふぅむ、ジャンプ粒子の技術は木星にも火星にもないはず、サイガスコロニーまで敵部隊が来ていたとはいえ、まだ木星近くにまでは敵は来てないだろ。それなのに

強襲された。なーんか裏が見えてきた気がするな」

「どういうことです?」

「話せることが少なすぎて何とも言えないが、少なくとも俺が付いた方はこっちで間違いなかったってことは確定したな、セグレスの最大速度で木星まではどれくらいかかる?」

「燃料を考えなくていいのなら半分くらいにはなるでしょうな」

「ハクライ単体なら3日で着くんだがな。木星に戻って間に合わなかったら、その場合は停戦協定もくそも無くなる、今とれる最善策は―――。


ハクライに86隊を乗せて木星に直行し、最低限の守りでセグレスを月に向かわせる。危険は付きまとうが、時間稼ぎをしてる間に王女様が停戦の手はずを整えれれば、ワンチャンってとこか」


「ですが危険です、レーシア王女にもしもの事があれば」

「本国の崩壊とセグレスの撃沈が成された場合に木星の王族が全滅する」

「でも、それが最善ね。ありがとうロイさんこの場で的確に冷静な判断をしてくれて」

「よし、キョウカとランペルージュをセグレスの防衛に回す。予備武装と各機の積み替え作業を急げよ!」

「了解!」


「レーシア王女・・・」

「お互いに生きて会いましょう、この戦いが終わるその時に」

「はい!」


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