異世市の市場
祖母が白魔女だったこと、家族がそれを認めていたことがきっかけで相談をしてみた。
アレックスが提案した異世界バイトのことを。
すると祖父が、「良い経験になると思うぞ」と言ってくれた。
家族もしぶしぶ、普段は家の手伝いとかちゃんとしてるし、しょうがない、と。
それから「いいひと」ができたことも言った。
姉「どれくらい展開してるの?」
私「キスも、まだ・・・」
母「そろそろキスくらいなら、いいんじゃない?」
父「今度、家に連れて来なさい」
そんなこんなで、異世界に何か持っていくものは必要なのか祖父に聞いてみた。
すると仏間から木製の箱を取り出して来て、目の前で開けて見せた。
「ネックレス?」
「魔法のネックレス。護りがついてるだの、才能が芽吹くだの言っていた」
「持っていっていいの?」
「ああ、かまわん」
「かりますっ」
「うんうん。彼がどんなひとだ?」
「読書が好きだよ」
「ほ~・・・勉強家なのかい?」
「んん~・・・趣味が丸かぶりだから、生き残る可能性が高そうだと思った」
「なるほどな~。まぁ、いい」
――
――――・・・
バイト当日、ミツユキ君はマチルダさんの家の庭で合流した。
「許可もらえたの?」
ミツユキ君はかぶりを振った。
「友達の家に泊まるかもって言った」
「なるほど・・・早めに用事をすまそう」
「うんうん。あ。ネックレス・・・不思議な感じがする」
「祖父から借りた祖母の遺品」
アレックス「《ほう、護りが入ってるなぁ。こりゃ高値じゃねぇが上等品だ》」
なんだか嬉しくてうなずく私「うん、うん」
メイドさんたちが「着替えを」と言ったので初めて家の中に入った。
基本的に木造の家で、棚に酒に漬けた薬草なんかが置いてある。
曲線を描く階段を上がって、二階の部屋に通されて着替え。
私「なんだかドキドキする~」
メイドさん「異世界はドキドキしますよね~。私は無理~」
私「そうなんだ~」
着替えたら、姿見で確認。腰のくびれを強調する大きなリボンがあるローブドレス。
メイドさん「これ、最近の流行なんですって~」
私「異世界で?」
メイドさん「そう。あ。これも、一応、貸し出しをします」
メイドさんが示したのは指輪で、「藏之助」と言うらしい。
「まほうせきくゆびわくらのすけ・・・?祖母が言ってたやつだ!」
メイドさん「あなたには魔素があるので渡しておくんです」
私「まそ?」
メイドさん「大丈夫、大丈夫。買い物に行って、帰ってくるだけです。おそらく使いません」
そこに部屋のドアにノックがあった。
別のメイドさんが「もう着替えは終わりましたか」と言う。
私「あ。はい!終わりましたよ~」
部屋を出ると、「一階で彼がお待ちですよ」とメイドさんが教えてくれる。
二階から曲線を描く階段を降りていくうちに見えてくる人物はミツユキ君。
ローブと着物とチャイナドレスかアオザイにパンクを合わせたような服。
――かっこいい!
ミツユキ君「可愛い・・・ゴスロリ要素?みたいなのリボン?」
私「よく分からない」
アレックス「《おい、時間だぞ》」
そう言うと床に光る魔方陣が現れて、風が吹き出した。
事前になんとなく説明があったので、ミツユキ君とうなずきあって魔方陣の中に入った。
魔方陣の円の部分が縦に伸びるように光を強くして、たちくらみを起こす感覚が起きた。
気づくとそこは説明された「最寄りの魔方陣駅」。
今回の場合、目的地が市場だったので最寄りの魔方陣が異世界に設置されているらしい。
これは異世界でもまだ珍しいことなんだそうだ。
気づくと光が消えていって、つむじ風がふんわりと情景を撫でた。
「ここは、もう・・・異世界、ってこと?」
「ひゃっほーう♪」
渡された小荷物があって、そこに地図がある。
おそらくそこらへんにいるであろう、「栄養剤商人」の店を示している。
「少しくらいなら、見て回ってもいいのかなぁ?」
「まるで本の中だ!」