アレックスからの提案
そう言えば、アレックスは目の色にそっくりな緑色の丸い宝石飾りを首にしている。
本物の宝石なのかな、とか思った。
大小の玉が縦に連なる首飾りは陽に透けて綺麗。
「《お。この首輪か。案外と気に入ってる。そんなことよりバイトの話だ》」
ミツユキ君「庭の世話と家の掃除?」
アレックス「《まぁ、基本的にそんな感じ。別件もある》」
ミツユキ君「どんなの?」
アレックス「《あっち側の庭は、今、何もないだろう?》」
可愛いおててで示された方向に振り向き、「確かに」と確認。
わさわさ植物がいっぱいなのに、一部の区切りが枯れている。
私「なんであちらだけ世話をしていないの?」
アレックス「《特殊な栄養がないと育たない植物でな。今のところその特殊な栄養は異世界にしかないんだ》」
ミツユキ君「まさか高いの?値段」
アレックス「《まぁ、それなりに値段はする。レア植物の栄養剤の中でもかなりする》」
私「だから買いに行けなかったの?」
アレックス「《いや、マチルダが外出をあまりこのまない。特に遠出は。ストックがきれても家の中で残念がるばかりだった》」
ミツユキ君「代行とか代理で買えなかったの?宅配とか」
アレックス「宅配?こりゃ意外だな。その栄養剤は市場で売ってるんだ」
私「なるほど・・・」
アレックス「《その栄養剤は宝石の粉。買い物代行を頼んでも盗まれた》」
私とミツユキ君「なるほどな~」
アレックス「《君たちはなぜか、裏切らないような気がしたんだ》」
「「分かる、分かる」」とメイドさんたち。
私「メイドさんたちは買いに行かないの?」
メイドさんのひとり「見習い白魔女は庭の世話でいっぱいいっぱいです」
ミツユキ君は私を見て「どう思う、このバイト?」と言った。
私「正直、異世界の市場って行ってみたいけど、ひとりじゃ怖い」
メイドさんたち「「分かる~」」
ミツユキ君はアレックスに振り向いて、「時給は」とたずねた。
アレックス「《成功したら五万シューイーズ》」
私「うわー。どうしよう??」
ミツユキ君が私に振り向いて「どうする?」と楽しげに聞く。
私「市場に行って、買って帰るだけ、なんだよね?」
アレックス「《まぁ、あらかたそうなんだろう》」
私がミツユキ君に振り向いて「どうする?」と聞いてみた。
ミツユキ君は「レイちゃんがそれでいいなら、異世界に行ってみたい」と勢いよく席から立ち上がった。
アレックス「《まぁ、落ち着きなって。紅茶を飲み終わってからでも遅くはないぜ》」
◇夕食で特に美味しかったもの◇
・祖父が釣ってきた鯛で作った塩焼き