日曜市の出品の手伝い
祖母の遺品を片付けることになって、日曜市に出品した。
なぜか祖母が若い頃に踊り手だった頃の衣装を着せられて、客寄せ。
なんだか貴婦人めいたと言ったらいいのかな。
大きな帽子に飾りが沢山ついていて、ちょっと重い。
帽子に「重い」って思ったことがなかったから、意外。
風が吹いて帽子の鍔がそれを受けて、私はよろめいてしまった。
「うわっ」
「おっと・・・大丈夫?」
体勢を崩した私を支えてくれたのは見慣れぬ美少年。
とりあえず女子として胸キュン。
「あ、ありがとう」
「うん・・・何を出品しているの?」
「食器とか、花瓶、あとダンスの衣装とか。ちょっとだけ書籍もあるよ」
「ほう、書籍・・・見ておこう」
「あ、うんっ。どうぞ~」
決められたスペースがあって、その範囲内で売買が行われるから案外と近距離。
真剣に書籍を吟味する彼が、残念そうにため息を吐いた。
「やっぱり、ないかぁ・・・」
「何をお探しで?」
「『ノットタイトル』・・・あと『白魔女伝』、『謎の花園ザーイフ城』」
「えっ、『メヴァンディーニ』あたり知ってますか?」
少年が意外そうに顔をあげて、私を見た。
「僕の好みの作品だけど、君、本好きなの?」
「『ペン剣』とか?」
「えっ、えっ、えっ・・・普通に話したい。僕、名前、ミツユキ」
「私、レイ」
ミツユキは胸ポケットから名刺を取り出して、私に渡した。
「これ、僕のおおむね居る場所」
「ほう、どうも・・・私、名刺は持ってない。時々ここらにいるよ」
「出会えて嬉しい」
「え、嬉しいっ」
「普通に喋りたいけど、今日は家の者が通院日だから留守番しないといけないんだ。今度また会いたい。名前・・・レイで大丈夫?」
「うん、君は何歳?」
「十六歳」
「私は十五です」
「敬語はいいよ。ミツユキ君とかでいいから」
「分かった」
彼は古本の中から一冊、「気になるやつ」を買うと言った。
「250シューイーズです」
金銭のやりとりをして、彼は私に微笑んだ。
「帽子に感謝だ」
とりあえず好みの男子と普通っぽく喋れて、淡い恋心がときめいた。
おばぁちゃんや、妙な帽子を残してくれてありがとう。
◇夕食で特に美味しかったもの◇
・煮込んだ牛肉がごろごろ入ってる辛口ビーフシチュー