舞踏会の準備
異世界にまた行くことになったのを家族に言うと、祖母の魔法のネックレスを渡された。
「お守りだ」
「ありがとう。なんだかドキドキする~。舞踏会だよ」
「さっきも聞いた。気をつけなさい。お前は可愛い系だから」
「そうかなぁ」
「せっかくだから楽しんでおいで」
「うん」
――
――――・・・
マチルダさんの家に行くと、そこには見知った白魔女見習いさんたちがいた。
「あ。レイちゃん。こんにちは」
「えーっ、またバイト?」
「そうなんです。ドレス選びと着付けと留守番です」
「わー、よろしくです!」
「よろしく~」
「あ。レイちゃん。聞いて聞いて」
そう言って現れたのは、タキシード姿のミツユキ君。
「すごいっ、なに?」
「マチルダさんが言ってたけど、この服のブランド『クローゼッ塔』らしい」
「クローゼット?」
「ううん。とう、がタワーの塔。日本の魔法使いが立ち上げたブランドらしい」
「ははは。なにそれ、可愛い」
「面白い名前だよね。あ。おはよう」
「おはよう」
「色白さんだし、ネックレスはそれにするって言うし、ヴァイオレット色のドレスにしましょうか。靴はかかとのあるものです」
鏡の前に立たされて、白魔女見習いたちが言う。
「「ベクト・バスク」」
するとキラキラとした光りが私の身体を螺旋状に舞い上がり、いつの間にかヴァイオレット色のドレス姿になっていた。
側に置いてある同系色のハイヒールをはいて、「シンデレラみたい」とときめく。
メイドさんたちも「素敵です」と一緒にきゃきゃとしていた。
「あら、可愛らしい」
そこに現れたのは深紅のドレスにルビーの装飾をしたマチルダさん。
息を呑んでうっとりするほど綺麗。
「あとは会場に向かうだけね・・・」
アレックスが首輪を取ってくれ、と言う。
マチルダさんが外すと、アレックスは人型を取り、タキシード姿になっていた。
「俺も行く」
事前にダンスを軽く習った。
学校の授業でも習ったことがあったので社交ダンスを少し踊れる。
舞踏会で社交ダンス!
胸キュンしてるのか緊張してるのか分からない。
ミツユキ君は私のドレス姿をして、数秒、呆けていた。
「綺麗だ・・・」
「そう?」
しなつくるように身体をよじってみせる。
「うんうん」
「可愛い?」
「僕は今、ドレスを褒めているわけではないのです、きっと」
「ん?」
「なんでもないよ」
カナンが魔方陣から現れて、「馬車を用意してあります」と言った。
白いカボチャみたいな胴体に、白い毛色の白馬の馬車。
「うわー、シンデレラみたいでドキドキする~」
と私の横で、ミツユキ君がハートマークの発音で声をあげた。




