風邪をひいたマチルダさん
妙に眠い日が続いていたけど、
家族から「異世界に行った刺激でだろう」と言ってもらえて安心して休めた。
人生初のバイト代二万五千シューイーズをどう使うのか考え中。
リアル、書籍に消えるのかなぁ。
そう言えば新しいマイナスイオンの出るドライヤーとか欲しいなぁ。
そんなことを思いながら歩いていると、見えてきたマチルダさんの家。
そこに、褐色の肌に茶髪をした美形青年が佇んでいた。
ローブよりも民族的な衣で、ウエストに負担をかけない感じのアラビアンな服。
履いているのはゾウリで、どうも事情を持っていそうな表情。
声をかけたらいいのか悩んでいると、こちらの視線に気づいて普通に立ち去った。
もしかしたら庭の植物が珍しかったのかな、とか思って忘れていた。
アレックスに通されて、マチルダさんの寝室前の扉ごしにセキを聞いて。
どうもアレックスから聞くに、「毒風邪」というものにかかったらしい。
それは魔素を持っているものに感染するおそれがあるから、近づくなと言われた。
「そう言えば、アレックスは魔素を持っているの?」
「《なんだか意外だ。俺は人型もとれるぞ》」
「そうなの?機会があったら見てみたい!ケモ耳?」
「《なんだ、「けもみみ」って?》」
そこに遅れてミツユキ君が来た。
「メイドさんたちはいないの?」
「《魔女に移るかもしれない毒風邪、避けたいって》」
「「なるほど・・・」」
ミツユキ君「じゃあ、誰がマチルダさんの世話を?」
アレックス「《俺だよ》」
「「どうやって?」」
アレックス「《今は魔法石の封印で短い間だが、人型をとれるんだよ、俺は》」
「「え」」
寝室の扉の前にいて、中から咳が聞こえる。
アレックスは、俺は魔法のかかった宝石類のアレルギーなんだ、と言う。
そんなことを初めて耳にして、市場へ買い物に行けなかった事情に気づく、
「魔法石の粉もダメなの?」
「《そうだな、苦手だ。人型をとっても無理だ》」
ミツユキ君「そう言えば、その魔法石の粉はどうなったの?」
「《お。こっちこっち》」
アレックスの移動にふたりで着いて行くと、そこには若葉が出てきた植物がある。
青みがかっていて、その中庭に青い薔薇を咲かせる予定の低木なんだそうだ。
関心している私とミツユキ君を見つめ、アレックスが切り出した。
「《なぁ、頼み事がある。謝礼ははずむぞ》」
「「ん?」」
「《俺は魔法石アレルギーだし、泳げない。解毒の水中花を採取してきて欲しい》」
どうも信じがたいけど、その水中花がある湖には、人魚がいるらしい。
きっと「解毒の水中花」を煎じて飲めば毒風邪は治ると言われた。
ミツユキ君を見ると、真剣な顔つきでうなずかれた。
どうもまた、異世界に用事ができた。




