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「好きだよ、凛」
「好き“だった”よ、薫」
分かってる。全てが手遅れだったんだよな……
でも……それがどうしようもないことでも、俺は拒まずにはいられない。拒まなければいけない。
「なあ凛。もう、何もかも駄目なのか? まだ、まだ何か──」
「薫」
欠片程もない希望にすがりつこうとする俺を、突き放すように、それでいて優しい口調で俺の名前を呼ぶ。
「ごめんね」
俯いていても分かる。その綺麗な長い黒髪が顔を被おうとも分かる。どれだけ平常な声を出そうが分かる。
今、お前の淡雪のような白い頬には涙が流れてるんだよな。
泣かせてるのは他でもない俺。
ずっと、笑顔でいさせようとした相手を、そう思い、願い、誓った奴が泣かせてる。
──最低だ。
これ以上ここにいても泣かすだけだ。
それに分かる。俺だから分かる。
こいつの我慢してる涙も、もう限界だ。
じゃあ最後に一つだけ……
俺が出来る最大の恩返し。
一度下を向き、呼吸を整える。
「凛!」
今までで一番醜いだろうが、今までで一番の、心からのとびっきりの笑顔で……
「今まで、今までありがとな。凛」