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導入、魔女の生活

「そう、あの時のことがあるから、こうして話を聞いてやってるんだ」


 大蛇の頭がそう言います。すると、身体の方も蠢き、響めきました。


「今の話を聞いてもわかりませんか、魔女は無害です。無害どころか私達を助けてくれています。実際問題被害を受けたという報告は一度も無いはずです」


 ヘンテルの内心はこれで倒せるとは思っていないが(それほどに村人と魔女の関係は傷が深いと思っているが)、話の流れもあり、ジャブがてらパンチを打ってみる。


「つまりなんだ。だから助けて欲しいと言いたいのか」


 大蛇の頭が鋭い目つきを携えながら聞く。


「そうですね。出来ればそうして欲しい。魔女狩りはあまりにも無意味だ」


 ヘンテルは鋭い目つきに負けぬようにしっかりと目を開く。


「黙れ小童が。魔女狩りは王命だぞ。この国の王に逆らうというのかお前は」


 大蛇が全身を震わせて轟きを上げます。あまりの迫力にヘンテルは数歩下がってしまいます。しかし、すぐに、一歩踏み出しました。


「そうですか。お気は変わりませんか。では、あと少し続く話を語らせて下さい」

「ふんっ、早くするんだな」


 大蛇も話を遮ることはしないようだ。助かった。これならいけるとヘンテルは思った。夜空を見上げると、うっすらと空の端の方が白んできている。


「流行病が治まった翌年のことです。僕は15になり、森への行き来は自由になりました。そこでかねてより、魔女に会いたいと言っていた僕の彼女を連れて行くことにしました。名をグレーゼルと言います。去年、彼女が流行り病に倒れたときに、薬を持っていったことをきっかけに仲良くなりました。村の中では僕の唯一の理解者です。番人のドーキの小屋を抜け、森の中へと入ります。あれから、ドーキとも仲良くなり、今ではたまに話す仲になっています。ドーキも僕が15になったのを知っているため、黙って通してくれました。いよいよ森へ入ろうとするときに、グレーゼルが少し立ち止まります。どうやら、あれだけ話してもやはり森の中に入るのは怖いみたいだ。僕は彼女の手を握って言いました」


「大丈夫、ただの森さ」


「彼女は小さく頷いて一歩踏み出します。僕は彼女の歩幅に合わせて歩くのでした。魔女の家に着くと、彼女は興奮と不安の入り混じった顔になります。僕はそれを満足そうに見て、戸を叩きました」


「魔女さんこんにちは。ヘンテルです。彼女を連れてきました」

「誰だぃ、魔女の家を訪れるのは」


「と、外から声が聞こえてきます。しかも、声も違いました。見ると、体格の良い女性とひょろ長い男性が、大量の食べ物を持ってそこにいました」


「誰ですか」


「ヘンテルが少し警戒して聞きます。村人の中でこの家に来る変わり者はヘンテルくらいしかいないからです。と、そこで扉が開きます」


「今日はだいぶ賑やかだね。入っておくれ、モーリー、ネヌット、ヘンテルとその彼女さん」


「魔女が出てきてそう言います。モーリー、ネヌット、聞いたことある名前でした。そう、魔女の友達たちです。そう気付くと、ヘンテルの警戒は一気に解けました」


「いつも悪いね。モーリーにネヌット」


「魔女が言います。魔女は一人でいつも孤独だと思っていたが、こうしてたまに、差し入れを持ってくる仲間がいたのかと、思います」


「何を洒落せぇ。魔女様のためなら、何なりと」


「ネヌットが言います」


「それより、この二人は何なんだい。見たところ村の子みたいだけど」


「続いてモーリーが疑問を口にします」


「前に少し話したろう。村人の中にも変わり者がいるって」


「ああ、年に一度訪れてくるってあれかい」


「モーリーが納得すると、魔女は頷きます」


「ヘンテルは変わり者ではありません」


「とそこで、僕の後ろに隠れていたグレーゼルが前に出て、そう言いました」


「お嬢ちゃんはさっきちらっと言ってたヘンテル君のお嫁さんかい」


「ネヌットが言いました」


「お、お嫁っ」

「まだ違います」


「僕がそう言うと、グレーゼルは複雑な顔をしました」


「それに一つ訂正させて下さい。これからは年に一度じゃありません。今年からは僕も大人の仲間入りです」


「ほう。成人したのかい。こりゃめでたいね。じゃあ、食材もあるしちょっとしたパーティでもするかね」

「おっ、パーティ。いいねー」


「ネヌットが反応します」


「じゃあ、そこのお嬢さんも嫁入る修行ってことで手伝っておくれ」


「モーリーが言いました」


「・・・・・・はい」


「あれよあれよといううちにグレーゼルはこの輪に溶け込みます。僕はこれも魔女の魔法だと思いました。こうして、魔女の家でのプチパーティが開かれたのです」


「しかし、どうして彼女なんて連れてきたんだい、ヘンテル」


「食事の準備を終え、お菓子作りも終えた頃、みんなで食卓を囲んだところで魔女が切り出します」


「ええ、実は魔女さんから聞いた話を彼女に話したら、彼女もすごく気に入ってくれて、今度一緒に続きを聞こうって話になったので」


「話ってなんだい」


「ネヌットが聞きます」


「馬鹿だねあんたは。ヨーキが話す話と言ったら、あれしかないだろ」


「モーリーが言いました」


「ああ、俺の武勇伝か」


「ネヌットがケロッと言います。すると、モーリーが椅子の上でこけそうになります」


「どうしてヨーキがお前の武勇伝なんかを語るんだい。あんたは脇役だろ」


「そうかい。俺は大活躍したはずなんだけどね。まあいい。ヨーキよ、どこまで話したんだい」


「ネヌットがアイシャを連れて、家に帰ったところだったかね」


「魔女が窺うように聞くので、グレーゼルと一緒に頷きます」


「ほーら、俺の活躍の話だ」


「はいはい、わかったわかった。いいから黙っときな」


「何故か勝ち誇るネヌットと、あきれ顔のモーリーを見て、グレーゼルが笑います」


「ネヌットさん格好良かったですよ。モーリーさんも。魔女さん、続き聞かせてくれますか」


「グレーゼルがそう言うと、穏やかな空気が流れました」


「ああ、いいよ。では王子の話から聞かせてやるよ」


「そうして、少し昔の話が始まりました」


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