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三、仮面の舞踏会8

 アイシャが場内に入ると、そこには色艶やかなドレスに身を纏った貴婦人達と、白の衣装に身を包まれた紳士達で溢れかえっていた。中央では、音楽に合わせてダンスをするペアもいる。アイシャとしてはなりふり構ってられない。時間は有限なのだ。零時には帰らないといけないのだから。


「あの、ちょっとお話良いかしら」


 アイシャは、一人になっている男性に声をかけた。


「ええ、良いですよ」


 仮面の下からだとよくわからない部分もあったが、にこやかに対応してくれているようだ。


「急な話で申し訳ないのですが、ご結婚されていますか」


 アイシャはなりふり構わなかった。


「ふふっ、おかしな人だ。してるわけが無いじゃないか。この仮面の舞踏会の参加者は基本的に独身者に限られている。王子を見つけるにしてはナンセンスな質問だね」


 相手の男性は鼻で笑ってそう言った。


「では、セロイド家のアイシャ。その名前を頼りに結婚相手を求めて下さい。お願いします」


 この社会では女性から結婚を取り付けることは難しい風習があった。故にアイシャは男性側に委ねる形を取らなければならない。


「それはなんだい。どういう意味なんだい。僕はそのアイシャという人物を知らないのだが」


 男性は首を傾ける。アイシャはと言うと、言うことを言ったという感じになっており、もう次の男性を探している。


「目の前にいます」


 それだけ言うと、アイシャは次の男性にまた声をかけた。先ほどの男性は鳩が豆鉄砲食らったような顔になっていた。次の男性は恰幅の良い男性だった。


「あの、ちょっとお話良いかしら」

「ああ、構わないよ。君は目が良いんだね。僕に話し掛けるなんて」


 恰幅の良い男性は、ねっとりとした言い回しで鼻高々になっていた。


「あ、ああ。すみません。人違いでした」


 アイシャは即座に生理的に受け付けない感じがして、その場を去った。後ろで、恰幅の良い男性が何か言っていたが、無視だ。アイシャはその後も何人か同じように声をかけていった。と、三人の貴婦人が目の前に来てしまった。


「今どこかで、アイシャって聞こえた気がしたのだけど」


 エラである。声と姿と台詞からアイシャはドキッとしてしまう。どうやらこちらには気付いていないようだ。


「そんなわけ無いじゃない。あんた意外とアイシャのこと気に入ってんじゃないの」


 テラである。周りを見ながら、エラをからかっている。


「そんなわけないじゃない。大っ嫌いよ」


 エラが反発する。


「二人とも、そんなどうでもいいことは気にしなくて良いから、早く王子様を見つけなさい」


 トーラである。アイシャの事など毛ほども気にしていないようだ。


「ねね、お母様が王子様を見つけたらどうするの」


 エラが聞いた。


「何にも。あなた達に教えます」


 トーラはすまして言った。


「そうじゃなくて、私とお姉様どちらに教えてくれるの」


 エラが悪い顔になりながら聞く。


「同時に教えます」


 トーラが少しため息を吐いて言った。


「じゃあお姉様、競争ね」


 エラがそう言いながら、動き出した。と、エラが振り返った瞬間、アイシャとぶつかりそうになる。


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