一、家政婦ヨーキ4
プルトは家に帰って考える。やはりこのままだといけない。アイシャが孤立してしまう。そう思った。そんな折に、家政婦のメリーが訪ねてきた。
「あの、ご主人様、良いでしょうか」
メリーは非常に中立的に振る舞っている。これはセバスもだが、二人はバランス良く子ども達と接しているように見える。
「どうした、メリー。今考えごとをしているんだ」
プルトがそう言って今は一人にしてくれと間接的に伝える。
「それは失礼しました。しかし、少し大事な話でして」
しかし、メリーはそんなプルトの意を汲まずに、自分を通そうとしてきた。
「んっ、わかった。聞こう。どうしたんだ」
流石に、プルトはメリーが大事な話を持ってきたのだと気付く。
「申し訳ないですが、今月いっぱいでセロイド家の家政婦を辞めさせていただきたいと思います」
メリーはそう言って、頭を下げた。
「どうしたんだ、いきなり」
寝耳に水だった。プルトは理由を聞く。
「いえ、今日、実家からお手紙をもらいまして、母が危篤になったようなのです。医者に言わせるともう長くはないと。最後に親孝行がしたいのと、父を一人にするわけにはいきませんから」
メリーが申し訳なさそうに言った。
「おお、そうなのか。それは確かに大変だ。そういう事情なら仕方ない」
プルトは了承をするも。悩み事が増えてしまった。三人の従者でギリギリ回っていたのに一人抜けたら明らかに人手が足りなくなる。しかもこちらは今月までと来た。従者を募集するにしても、その従者が使い物になるかはまた別だ。この家に馴染むのにも時間がかかるだろう。何より、アイシャのこともある。新しい従者が変にテラやエラに肩入れするようだと色々なバランスが崩壊する。今はどちらかというとアイシャの味方が欲しい。こちらの指示とは関係なく、アイシャを愛し、味方してくれるような人が良いだろう。しかし、そんな人が簡単に見つかるとは思えなかった。と、ここで一人の女性のことを思い出す。
ヨーキだ。
確か、ヨーキには酒場を与えてそれきりだった。二度とアイシャとは会わせることはない。そういう手はずだったが、そんな可哀想なことはないだろう。もちろん、今は誰かと結婚してちゃんとした子どももいるかもしれない。そうなれば、逆に迷惑な話になるが、どうだろう。彼女が仮にここの従者になってくれるのなら、全てが解決する。そうは思わないか。仮にもアイシャの実母であり、血の繋がった親子だ。身分を明かしてはいけないが、大きく成長したアイシャと一緒に生活出来るのなら、ヨーキにとっても悪い話にはならないはずだ。プルトはそう考えた。とにもかくにも状況を確認したい。プルトはセバスを呼んで、情報を集めさせるのだった。




