一、家政婦ヨーキ2
そんなある時である。
それはみんなでピクニックに行った日だった。プルトの案だ。三人一緒に遊ぶ機会を作ろうというのがプルトの思惑だった。
「さあ、今日は家族水入らずのピクニックだ。思いっきり楽しもう」
プルトが張り切ってそう言う。ここは元ノーシス家の山だ。あの愛の丘がある場所だ。プルト達は街が一望できるその場所に陣取って、敷物を引いた。そして、プルトはテラを肩車する。
「どうだテラ。昔、私とトーラはこの場所でお前を高く持ち上げて、この景色を見せたものだ。懐かしいだろ」
「いやですわ、お父様。そんな小さい頃のことは覚えていません」
テラはそう言いながらもすごく嬉しがっていた。
「いい景色だろ」
「はい」
テラは自分も大事にされていたのだなと思うと、嬉しさがこみ上げてくるようだった。
「お父様、私も」
そんなテラの笑顔を見たからか、エラが羨ましがってせがんできた。すると、プルトはテラを下ろして今度はエラを肩車する。
「ほら、どうだ。高いだろ」
「うわぁ~、高い、すごい」
エラは自分もして貰えると思っていなかったのか、ことさらに喜んだ。
「エラも今や私の子だ。遠慮しなくていいんだぞ」
「はい」
プルトがエラを気遣ってくれたのはエラとしては嬉しい限りだった。最近は優しくしてくれているが、こうして形になるとなおさら良い。
「あの、私もやりたい」
と、ここでアイシャもせがむ。そこでプルトは一度トーラの方を見る、すると首を振っていた。プルトはエラを下ろしてこう言った。
「すまんなアイシャ。少し疲れてしまった。アイシャは昔、山ほどやってあげたから、今日は我慢してくれ」
アイシャは、哀しそうな目を向けて頷くのだった。プルトは心が痛むも、心を鬼にしてその気持ちを押し殺した。テラとエラがアイシャを見てニヤついていた。
続けて食事である。
「お父様、そのサンドイッチ取ってくださいますか」
テラが自分の場所からは取れないサンドイッチを指差す。
「おお、いいぞ、よし、そのまま食べさせてあげるから、口を開けなさい」
「えっ、良いんですの」
テラは戸惑っていたが、プルトが口元までサンドイッチを持ってくるので、素直に口を開けた。
あーん。
テラは小さな口を大きく開けてサンドイッチを包む。
「どうだ、美味しいかい」
ブルトが聞くと、テラは顔を真っ赤にして頷いた。
「美味しいです、お父様」
「私も私もー」
それを見て、エラが口を開けて待つ。さっき、遠慮をするなと言われてからはあまり遠慮をしないようにしている。
「はは、良いよ。ほら」
あーん。
エラは大きく食いついた。
「おおー、良い食いつきだな。どうだ、美味しいか」
「うん」
と、エラは嬉しそうに首を縦に振った。
「あの、父様。私も」
そして、アイシャも遠慮がちに聞く。プルトがトーラを見ると、やっぱり首を横に振った。
「ああ、すまないアイシャ。アイシャには小さい頃たっぷりやってあげたからな。アイシャは自分で食べなさい」
「あっ……、はい……」
アイシャはガックリと肩を落として、自分で食べた。すると、テラとエラはくすくすと笑うのだった。




