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三、再婚5

 ブルトはそう言って出ていった。階下へ降りると、ヒルドが出迎える。プルトは中の様子を報告した。


「大事には至ってないようだ。元気ではないが、話せないわけでもなかった」

「そうですか。それは良かった」


 ヒルドはそれを聞いて胸を撫で下ろす。


「では、次はヒルド様ですね」


 メルトが聞いた。


「はい」


 ヒルドは道中で買ったお見舞いの品を持って、階段を上がっていった。


「失礼します」


 ヒルドが部屋に入る。数歩進むと、やはり医者に止められた。


「そこまでです。それ以上は近付かないで下さい」


 ヒルドは止まって。お見舞い品を突きだす。


「トーラ様。果物は食べれるかしら。お見舞いとして持ってきました」


 ヒルドはトーラに言いながらも、医者の方を見る。医者の方はうんと頷いていた。


「ヒルド様、ありがとうございます。ありがたく頂戴いたします。そこへ置いておいてください」


 トーラがそう言うので、ヒルドは扉付近にあった机にそれを置いた。


「これでは面目ないですね。流行病だなんて」


 トーラが悲観的になってそう言った。


「こればかしは仕方がないと思います。病気は誰にも予測できませんよ。そんなに悲観的にならないで」


 ヒルドは励ますようにそう言う。


「そうではないのです。元気薬を飲めば、病にかからないと言っていた自分が恥ずかしいのです。やはりそんなもの無いのだと思い知りました」


 どうやらトーラは盲信していた薬の効能がないことを悟ったようだ。


「そんなこと。あまり気にすることはありませんよ。効く効かないは人にもよるでしょうし、この病にはたまたま効果がなかっただけかもしれませんし」


 ヒルドがフォローする。


「いいえ、あんな薬飲まないほうが良いのだわ、きっと」


 しかし、トーラの悲観は直らなかった。


「まあ、無理に止めるものでもないのだけど。トーラ様。病は気から、ですよ。あまり悲観的になり過ぎてもいいことありません」

「そうね。確かにそうだわ。でも、どちらにしても薬は止めようと思います」


 トーラは諦めきったような声を出す。


「そうですか。それに関しては、私が決めることではないですし、トーラ様がそう言うのなら」

「ヒルド様はまだ飲みたいとは思わないのですか」


 そう聞かれてヒルドは少し悩む。赤ん坊は産みたい。が、もう一年以上飲んでいる。トーラの言うように効果はないものなのかもしれないとも思う。


「いえ、少し惜しい気もしますが、トーラ様が止めるのであれば私も止めます。元よりいつも用意してくださるのはトーラ様でしたし、あの薬を売っている薬屋も知りませんから」


 ヒルドのその言い方には迷いはなかった。


「そう、そう言ってくれると私としても決心がつきやすくなって助かります」

「そろそろ時間です」


 医者が割り込んできた。


「わかりました。トーラ様。どうぞご自愛を」

「ヒルド様もご自愛を」


 そうして、ヒルドは部屋を出ていき、プルトと共に家に帰って行った。


「トーラ様。これで良かったのですか」


 医者が二人の去った後にトーラに聞く。そう、医者はトーラに頼まれて演じていたのだ。まるでトーラが本当に病気であるかのように。


「はい、ありがとうございました」


 トーラはカーテンを開け、医者にお礼を言った。


「しかし、なんの意味があるのです、これには」


 医者が聞く。


「ヒルド様に薬の服用をやめさせるためです。実際やめることになってホッとしています」


 トーラが説明した。


「わざわざこんな芝居を打つ必要はあったのですか」


 医者が疑問を表す。


「確実にやめさせるためです。私が勧めておいて、私が止めさせるのです。自然に止めさせるにはこれしかないと思いました」

「そうですか。まあ、そういうことなら。では私はこれで」

「はい、ありがとうございました」


 トーラの計画はどうやら、成功したようだ。


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