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三、再婚1

遅くなり申し訳ない

「愛かぁ」


「僕は、感慨深く呟きました。聞いている僕としては、毒と言われても何もピンと来なかったのだが、その答えが愛と聞いて驚きました」


「あんたにはまだ早い話かもね」


「魔女が茶化します。茶化されたが、そうなんだよな、と僕は納得してしまいます。僕には愛が何たるかはまだわからないのです。母親との絆は愛だというが、当たり前の日常の中でそれを感じることはないのです。好きだと思ったことのある子はいます。でも、愛とは違うものだと思います。僕は、村の中じゃ変人扱いされることが多く、好きな子もそれを理由に僕の告白を断りました。断られた僕もそれ以上は引き下がらずにいました。つまりは愛ではないのだと思うのです。愛とはもっとしつこくて、優しくて、心強いものだと朧気ながらに思うのです。つまり、愛が毒であるというのは、そのしつこさにあるのかもしれない。僕はそう思いました」


「続きは」


「僕は先をせっつく」


「ああ、続きだね」


「魔女が続きを話し出しました」




 それから半年後、セロイド家のホープとルーが毒殺される。犯人はわからないとのことだが、この国ではあまり見ない毒が使われたようである。


 その葬式後、悲嘆に暮れるプルトとヒルドの下に、トーラが来た。


「この度は、心よりお悔やみを申し上げます」


 トーラは控えめの衣装をまとっていた。


「トーラか。久しぶりだな」


 プルトが挨拶する。笑顔は向けているものの、どこかやつれた顔であり、トーラは心配になった。


「プルト様。お元気そう、ではないようですね」

「ああ、まあ、な。当主の仕事とは思った以上に大変なものだ。まあ、こんなところではあれだから、中に入ると良い」


 プルトが中へ促して、二人は奥へと入っていった。

 プルトがお茶を淹れようとするが、まごまごとしているだけでどうにも上手くいかない様子だった。トーラがすぐに助け舟を出す。


「当主ともあろう方が、そのようなことをしないで下さい。私がやります」

「ああ、すまない。あまり自分で淹れたことなくてね」

「ヒルド様は何処に行かれたのですか」

「ヒルドはアイシャと買い物に行っているんだ」

「そうなのですね」


 トーラは手際よくお茶を淹れて机の上に二セット置いた。


「ところで、今日はどんな用件だい」


 プルトがお茶をすすりながら聞いた。


「お悔やみを申し上げに来たのと、ヒルド様とお茶がしたくて」


 ヒルドと、と聞いて少し、訝かしんだ。てっきり自分とだと思っていたのだ、プルトは。しかし、すぐに合点がいく。


「ヒルドと。ああ、そう言えば友達になったのだったな」


 ラルフの葬式の後、ヒルドから話を聞いていたなと思う。その当時もかなり驚いたものだった。トーラが何故ヒルドと仲良くなりたいのかはわからない。ただ、まあヒルドとトーラが仲良くなってくれるのはとても嬉しいことだし、喜ばしいことだと思う。考えてみれば、ヒルドは度々トーラの家に遊びに行っていた。二人はもうそこそこの仲なのだろう。


「では、ヒルドが来るまでは私が相手をしよう。ちょうど一つ聞きたいこともあったのだ」

「はい、何でしょう」

「もう結婚はしないのかね」


 結婚相手の募集とその結果は聞いている。カーキがお眼鏡に合わないとは思わなかった。そして、その結果として、トーラが言い寄ってこないという安心材料がなくなってしまった。もちろん、今のこの態度(少々素っ気ない)や、ヒルドと友達になった経緯を考えると、改心したと思って良いのかもしれない。元々トーラのプルトへの愛というのは長い年月をかけて少々大げさになってしまったところはあるのだ、きっと。そしてそこから目が覚めた。きっとラルフの死を皮切りに。プルトはそう思った。


「わかりませぬ。ただ、しばらくはしないと思います」


 トーラは恭しく答える。


「しかし、それではノーシス家はどうなる。当主がいないままだとそのうちお取り潰しになりかねないぞ」


 妻の友達の家だ。そう簡単に潰れて欲しくはない。もちろん、潰れればもうトーラに悩むこともないのだが・・・・・・。


「それなら既に根回しは済んでいます。タルト氏に相談させて頂きました。向こう三年は目を瞑って頂けるとのことです」

「タルト氏と懇意にしていたのか。なるほど」


 タルト氏は国の有力者の一人だ。今では次期大臣とも目されている人物だ。確かにそんな人物と仲が良いのなら何も心配ないだろう。


「では、三年以内には再婚はするわけだ」

「そうなります」


 トーラはここまで一貫して他人行儀だ。前みたいに恋人オーラを漂わせてはいない。


「ちなみに、テラやエラはどうした」


 話題を子ども達に移す。


「今はメルトが面倒を見てくれています」

「メルト・・・・・・。君の従者か。いや、確かメルトという人物は結婚相手の候補の一人ではなかったか」


 カーキからいきさつを聞いていたプルトはすぐに結びついた。


「ご名答です。彼は私の従者になりました。あまりにもせがむので」


 ということは、トーラはメルトを選んだということだろうか。いや、従者との結婚は許されていない。プルトは少し混乱した。


「君はカーキを選ぶかと思っていたんだ」


 混乱した中で聞きたくなったのはカーキのことだった。


「カーキ殿ですね。確かに素敵な御仁でした。しかし、プルト様。私はメルトを従者にしたのです。結婚したわけではありませんよ」


 トーラがプルトの混乱を紐解いて改めて強調した。


「あ、ああ。わかってる。少し混乱してね。しかし、カーキが素敵だったというなら結婚すれば良かったろう。カーキも結婚には苦労しているんだ」

「ヒルド様からもその話は聞いています。もしもカーキ殿が私の望むものを持ってきてくれていたならば喜んでそうしたでしょう。しかし、実際はそうではなかった」

「それほどに愛は大切か。・・・・・・いや、大切だな、確かに。しかし、カーキに愛がなかったとは思わないが」


 なおもプルトはカーキを推す。親友として推したいのだ。


「試練の公平性の話しもあります。それにもう済んだことです。この話しは終わりにしましょう」


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