二、世界で最も強い毒6
カーキは軍人だ。毒といえば、武器に塗るものとして知識がある。そして、武器に塗る毒として最も優れたものが、東の方にあると聞いたことがある。ちょうど、国の指令で東の国の様子を探ってきてほしいと言われていたのもあり、カーキは東へ向かった。そこに、数千、いや数万年前から続く少量で死に至る毒があるというのである。東の秘術。それを一山手に入れればトーラは自分のものになる。カーキは期待を胸に出発するのだった。
メルトは世界で一番強い毒をお題にしたトーラに歪を見た。実は自分と同じ種族なのではないかという親近感と、見た目の美貌にこの上ない胸の高鳴りを感じていた。もちろん、最初は上流市民になれるチャンスだという気持ちもあったのだが、日に日にその気持ちよりもあのトーラというミステリアスな婦人への興味が勝っていったのである。メルトはどうにかしてトーラの近くにいたいと思った。無論それはこの競争に勝ち抜けば叶うのだが、下流市民である自分はおそらくかなり劣勢であることを自覚している。仮にも自分の二つ名は騙しのメルトだ。良い噂など一ミリも無い。それ故にメルトはたとえ競争に負けたとしてもトーラの側にいる方法を考えるのだった。
一方でメルトは、最も強い毒は何であるかを考えた。毒が毒だとわかればその時点で対処されてしまう。つまりわかりやすい毒は最も強いとは言えないのではないか。メルトはそう考えた。そして、調査をしたところ、上流市民ないし王族殺しによく使われるという毒を知った。メルトはこれだと思った。そして、メルトは一年かけて溜めたお金でそれを大量に買うのだった。
ラッキーは旅人である経験から、毒についてもある程度知り得ていた。ただ、今回トーラがご所望なのは世界で最も強い毒だ。一体どれが当てはまるだろうか。陸の毒ならばやはりサソリの毒が知りうる中では一番だ。海ならばクラゲになる。この二つのどちらかか……。いや、どちらの毒も甲乙付け難い毒だ。きっとそういうものではないのだろう。では何か。
ラッキーが思案に暮れていると、女性たちの声が聞こえてきた。
「やっぱり年をとるのはいやね。最近皮膚が爛れてきて困ってるのよ」
「あらーあなたも。私もなのよ。どんなに美しくあろうと頑張っても、女性は歳には勝てないわね」
「そうねぇ、若返りの薬があれば良いのに」
皮膚が爛れる。女性は歳には勝てない。若返りの薬。
ラッキーはハッとする。若返りの薬はないが、人を老けさせる薬、もとい毒薬ならあるのを聞いたことがあるのだ。確か、何でも溶かす液体だということだ。かけるだけで効果を発揮するそれは、特に女性にとっては最悪の毒と言えるのではないか。
ラッキーはそう思い、それを手に入れる旅に出るのだった。




