表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/75

一、再会8

 隣りの国の孤児院で、アイシャはすくすく育っていた。五歳になったアイシャは朝を六時に起床して掃除や洗濯などの家事を行い、その後朝食を摂る。その後、朝は勉強の時間だ。読み書きを学習して、ときには院長先生が話を聞かせてくれる。そして、昼食を摂り、午後になると遊びの時間になる。孤児院の子ども達と夕方まで目一杯遊ぶのだった。そして、夕食を摂り、自由時間を過ごす毎日だ。夜は九時には就寝するようになっていた。


「かくれんぼしよー」


 昼食後、誰ともなしにそんな声が上がってくる。いつも昼食の時は午後の遊びの話で持ちきりなのだが、この日はかくれんぼになったようだ。


「うん」


 アイシャは大きく頷いて、ジャンケンの手を考える。グーはチョキに強くて、チョキはパーに強い。そして、パーはグーに強いのだ。アイシャは最近このジャンケンのルールを理解し始めた。それまでもジャンケンをする機会があったが、よくわからないままみんなのマネをしていただけだ。最近はルールがわかったので、戦略的に取り組むようにしている。


 二つ上のトランスはよくチョキを出すから、トランスに勝つならグーだ。十歳のユイはいつも勝っているから、放っておこう。同い年のキロはよくグーを出す印象だ。つまり、グーを出せば勝てるはずだ。


「じゃあいくぞー」


 トランスが元気良く掛け声をかける。


「ジャンケンポン」


 結果はアイシャの読みどおりで、トランスの負けだった。


「やった。勝った」


 狙い通りだったのでつい、声が出る。


「くそー。じゃあ一〇数えるうちに隠れるんだぞー」


 トランスが悔しそうにそう言った。トランスは孤児院の壁に目を当ててから数を数えていく。アイシャ達はキャッキャと騒ぎながら走って行って、隠れる場所に行くのだった。


 アイシャが向かったのは、牛小屋の掃除道具が入っている掃除道具入れの中だった。ここなら、絶対見つからない。牛小屋は普段、子どもだけの出入りが禁止されているのだ。ただ、アイシャがいるのは掃除道具入れの中であって、これは牛小屋の外にある。だから、大丈夫だろうとアイシャは思ったのだ。アイシャは立て付けの悪い扉をガタンと閉める。さらに息を殺して、より見つからないようにした。


 一〇分は経ったか。アイシャの狙い通り、アイシャはなかなか見つからなかった。アイシャは嬉しい反面で、少し寂しくなってくる。少し外の様子を見ようと扉を開けようとして気付いた。


 扉が開かない。


 アイシャは焦る。このままだと見つからない上に出られないかもしれない。五歳になったんだから簡単に泣いちゃだめだぞと院長に言われてるが、どうしても涙が出てきてしまう。


 気持ちが変に冷静で、しかし、闇に中に堕ちていくようなそんな感覚になる。


 誰の子でもない自分。愛されなかった自分。見つけられない場所に押し込められて、忘れられていく自分。そんなことが頭を駆け巡る。そうだ、私は捨てられた子で、忘れられる子なんだと思うと涙が止まらなかった。


「誰か、誰か助けて」


 ぐじゅぐじゅになりながら、そう言葉を落とす。


「誰か助けて」


 二回目は強く言った。しかし、なんの反応もない。


「助けてよ」


 最後は泣き声とともにそう喚いた。


 ガタン


「大丈夫かい」


 扉が開くと、見知らぬ大人がそこにいた。男女の二人組で、男の方が心配そうに覗き込んできている。


「怖かったぁ」


 アイシャは男に抱きつくと、わんわんと泣き喚いた。


「おお、よしよし」


 男の人が頭を撫でてくれる。アイシャはそのおかげでだいぶ落ち着くことができた。


「アイシャ」


 と、ユイの声が聞こえてくる。ユイ達が心配そうな顔で駆け寄ってきていた。


「ユイ、トランス、キロ」

「めっちゃ探したんだぞ」


 トランスがやや怒り気味に言った。


「いなくなったのかと思ったよ」


 そう言うのはキロだ。半泣きである。


「アイシャのバカ。牛小屋は子ども達だけで近づいちゃだめだって習ってるでしょ」


 ユイが説教する。


「ごめんなさい」


 アイシャはしょげかえって反省した。


「さあ、アイシャちゃんも反省したみたいだし、みんなで孤児院に戻りましょ」


 そう言うのは大人の女性の方だった。


「ね、アイシャちゃん」


 その女性はしゃがみ込むと目線をアイシャに合わせてニッコリと笑った。その笑顔があまりに美しいので、アイシャは一瞬見とれてしまう。


「うん」


 泣いていた自分もしょげていた自分もその笑顔に照らされて、なんだか遠く前のことのように思えた。


 その後は、六人で孤児院まで戻る。道中は誰がどこに隠れてて、いつ見つかったとかの話をしていた。大人の二人は笑いながらもあまりしゃべることはなかった。そして、大人の二人はこども達を送ると院長室に入っていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ