導入、語る魔女1
大蛇はすっかり聞き入っていた。それでも、話の区切りが良くなったのをいいことに、大蛇の頭がこう言った。
「もう終わったのか。終わったのなら燃やさせてもらう」
ヘンテルは内心焦るも、それは表に出さずに返答する。
「いえいえ、まだまだ。まだ話の半分もいっておりませぬ」
「だとするなら、早く言ってしまうんだな。そう長くは待つつもりはない」
大蛇の頭が冷たく言い放つ。その目は獲物を見据えた狩人のようだ。
ヘンテルは蛇に睨まれた蛙だ。しかしながら、ここで引く訳にはいかない。
「手向けの言葉を急くとはなんと不謹慎なことでしょう。ゆっくり話も出来ないのですか。この国の民は礼儀が無いと見える。この状況、そんなに余裕がありませんか。あなた方はそんなに追い詰められているのですか」
窮鼠が猫を噛んだ。
「わかったわかった。確かに、不謹慎な物言いだった。それは詫びよう。それでは続きをじっくりと聞かせてもらおうじゃないか」
大蛇の頭は頭を休めた。
ヘンテルはふぅと息をつく。空を見上げると満点の星空が輝いていた。どうやら今日は新月だ。ヘンテルは視線を戻すと、続きを話し始めた。




