窓硝子の蛾
虫は苦手です。
窓硝子のむこうにとまった蛾
脚をひらいて 膨れた腹を晒してる
そんなとこまで見せてくれるのは
嬉しいぜ なんて
にやけたおれは とんだ 間抜けだった
窓硝子の反対側
おまえの そっち側に
翅を綴じた その背中を見てる
やつがいたときに 気がついた
窓硝子の違う側にいるからこそ
見せてもかまわない腹があるんだな
窓硝子の同じ側にいるなら けっして
見せちゃいけない腹があるんだな
そんなふうに思ったら
無防備に晒された おまえの腹が
むしろ 憎らしくなった
窓硝子のこっちにとまった蛾
翅を綴じて ぴっちり 背中を覆ってる
たまにゃひらいて見せてくれなくちゃ
さみしいぜ なんて
ぼやいたおれは てんで わかっちゃいなかった
窓硝子の反対側
おまえの むこう側に
脚をひらいた その腹を見てる
やつがいたときに 気がついた
窓硝子の同じ側にいるからこそ
見せちゃいけない背中があるんだな
窓硝子の違う側にいるなら べつに
見せてもかまわない腹は硝子ごし
そんなふうに思ったら
翅に覆われた おまえの背中が
むしろ 愛おしくなった
ガラスのむこう側の、蛾やカエルって。
図鑑を観る感覚で、見ちゃいます。
触れる危険がないので。
気持ち悪いんですけど、美しいとも思います。