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友人と鬼

「撫子。桜井とは、ただの友人だ」

「……そうですか」

そのわりには主人公との会話を邪魔されてめちゃくちゃ不機嫌そうですけどね! 主人公に恋でもしちゃったのかしら。


 私たちは、許嫁。


 悪鬼等討伐庁の長官を輩出している深碧家当主の一人娘の私。そして、その分家筋にあたる緑谷家の政隆さん。私たちが結婚した暁には、深碧家の当主に政隆さんがなる。由緒正しき深碧家の次期当主として、政隆さんは日々を送ってきた。


 今さら、私たちの関係を壊すようなことをしない──と思いたいけれど。攻略対象者だし、そうとも言い切れないのがなんともあれだけれど。


 でも。私たちは今まで許嫁として、日々を重ねてきた。お互いに恋情はなくとも、親愛の情はある、と思っている。


 だから。


 政隆さんが、ただの友人だと言うのなら、信じましょう。政隆さんも生徒会の副会長だし、主人公と話していてもおかしくはないものね。


 その後はいつも通り、二人で昼食をとりながら、話をして過ごした。



 放課後。生徒会の仕事を終えると、主人公に話しかけられた。

「ねぇ、深碧さん」

「なにかしら?」

「私、深碧さんにお話があるんだけれど、少し話せない?」

私に? 主人公が話? なるべく主人公とはかかわりたくないんだけれど。特に用事もないし、ここで断ると角がたつかしらね。


 「わかったわ」

そうして、主人公に連れていかれたのは裏庭だった。人気の少ないこんな場所で、いったい何の用だろう。


 裏庭に着くと、主人公は深呼吸をした。そして。

「単刀直入に言うね。緑谷くんを解放してあげて」


解放? 私が、政隆さんを? 解放ということは、そもそも政隆さんは何かに縛られているのだろうか。

「どういう意味かしら?」

「そのままの意味だよ。緑谷くんは、深碧家の当主なんてしたくないの。だから、解放してあげてよ。深碧さんなら、それができるでしょう?」

政隆さんから、深碧家を継ぎたくないなんて聞いたことはない。深碧家の分家筋はなにも緑谷だけじゃない。本当に、政隆さんが当主になりたくないのなら、この婚約は解消することはできたのだ。それをしないということは、政隆さんには継ぐ意志があるのだと思っていたけれど。


 「政隆さんがあなたにそういったの?」

「ううん。緑谷くんは、軽々しく不満を口に出してくれないよ。でも……、私にはわかるの」

口に出さなくてもわかる。失礼かもしれないけれど、それは。


「桜井さんのただの想像じゃないかしら?」

私がそういうと、彼女は顔を真っ赤にした。

「そんなことない! 絶対、緑谷くんはそう思ってるもん! とにかく、そういうことだから」

主人公が去っていく。相手の思ってることが想像じゃないなんて、彼女は超能力でも持ってたのかしら。首をかしげつつも、私も寮に帰ることにした。何より昨夜一睡もしてないせいで、とても、眠い。


 夕食をとり、お風呂に入った後の私は深い眠りへと落ちていった。



 「……ん」

どのくらい寝ただろうか。瞬きをして、目を覚ます。

「!?」

ぼんやりと辺りを見渡して、ようやく気づいた。ここは、私の寝ていた自室じゃない。辺りを紫の靄が包んでいる。なぜ? まだ夢の続きを見ているのかしら。


 「ようこそ、我が世界へ」

後ろから、声がした。ぞくり、と肌が粟立つ。この感覚を私は、知っている。振り向きたくない。それなのに、体が言うことを聞かない。強制的に振り向かされ、翡翠の瞳と目があった。

「我が愛しの花嫁」

うっとりとした声で囁いたのは、そう。

「……鬼」

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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