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9・錬金術の始祖

「私の従姉が人質に取られていたのよ。突然のことだったし、私は彼女を失わずに、自分が助かる方法を見つけられなかったの」


「あっさり言うけど、一瞬の判断で自分を切り捨てる選択をしたんだろ? さすがの度胸だな」


「逆よ。自分の命を選んで彼女を失うなんて、私の心が耐えられそうにないもの」


「お前……変なところ危なっかしいよな」


「そうかしら?」


「そうだろ。さっきの暴発の怪我だって全然気に留めてなかったし……。頼むから、あまり無茶はするなよ」


 私は返事の代わりに微笑んだ。


 だって正直に「レオルのためなら多少のことくらいやれそうだし無理ね」なんて言ったら、さっきみたいな面倒くさいことになりそうだもの。


「なんだよその笑顔。リシア、俺の頼みを全く聞き入れるつもりないだろ」


「そんなことないわ。私、レオルのためならどんなことだって出来そうだもの」


 微笑み続ける私に、レオルは呆れたようにため息をついた。


「つまり、俺の親切を受けたいのか?」


「ごめんなさい。もう充分よ。許して」


「そこまで拒絶されるのは不本意だけど。少しは大人しくしてろ」


「なんだか、親切を突きつけられていいように扱われている気がするわ」


「そうでも言わないと、お前の度胸が引っ込まないだろ」


 いいように扱っているのは認めるのね。


 そういえば私が小さい頃、魔法の練習をしすぎて手を痛めていることを、ルネはいつも気にしていた。


「レオルって本当に心配性なのね。私の従姉みたいよ」


「あぁ、リシアが自分の命より優先した従姉か。どんな人だったんだ?」


「ルネという名前なの、知らない? 彼女は本当に素晴らしい魔法さばきで彫像を生み出すから、私はずっと憧れていたの。あの時代の有名な魔彫師になったと思うわ」


「千年くらい前の魔彫像はたまに出土するけど、製作者の名前まではわからないだろうな。だけどあれは見事だと思う。魔力で彫ったせいか独特の迫力があるし、優れた魔法だと保存状態もいい。何より本物を前にしたような存在感がある」


「ルネにかかれば本物以上よ。だから私も魔彫像を製作してみたい一心で、ひたむきに魔法の修練を積んだわ」


「なるほどな……だからリシアの魔力はあそこまで練磨されているのか」


「そうかもしれないわね。夢中になって取り組んだ結果、魔力が暴発して特技が破壊になったけれど。全然創造的じゃなくてがっかりよ」


「それならいい話がある。さっき話した魔力暴発のエドラン・ジェスティンは、錬金術の始祖だったんだ」


「錬金術?」


 それは全く聞き馴染みのない単語だった。


「何かしら……魔法士ではなくて?」


「エドランもリシアと同じで魔力暴発を起こしたから、魔法士にはなれなかった。そんな彼は錬金術……素材に魔力を注いで合成する方法を編み出したんだ」


「彼は、魔力の別の使い方を見つけたということね」


 もしかすると……それ、私でも使えるのかしら?



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