66・望み
大地から突き上げる一筋の光が、澄んだ夜空に向けて昇っていく。
ぱぁん、と華やかに弾ける音が空気を震撼させた後、世界は静まりかえった。
次の瞬間、闇の中にいくつもの眩い筋が現れると、柔らかな軌道を描いて降り注ぐ。
満天の流星の群れの中に、私たちはいた。
「うううっ……」
岩の上に座ったディノは空を見上げているのではなく、手元のケーキを見つめて感極まったように涙を浮かべている。
もちろん私は芸術から身を引き、作り直したケーキは無難な形となった。
そのことにディノは文句を言っていたけれど、今は頭上に目もくれず夢中になって食べている。
そんなディノとは対照的に、レオルは空に吸い寄せられるように見上げたまま、立ち尽くしていた。
「リシアが自分のために作ったものって、流星の石だったのか」
「そうよ。コシマさんとイライナ様にも完成した話を伝えたから、今頃気づいているはずよ。フロイデン達も驚いて、きっとみんな賑やかに見上げているわ」
「確かに、この夜空を見上げたら誰だって圧倒されるだろうな」
相変らず流星が降り注ぎつづける夜空に向かって、私は色々なことを話した。
「私はここへ来てから、ルネに伝えたいことがたくさんあったから。これをきっかけに、みんながそれぞれの誰かにお話しできたらいいと思っていたの」
「そうだな。俺も姉さんに伝えたいことが、たくさんあった。それから、リシアにも」
「私?」
「まだ俺が別の名前を持っていた頃の話だよ。その頃の俺は、自分の周囲で色々なことが渦巻いているのを感じていたんだ」
珍しく、レオルが普段はあまりしない過去の事を口にしたので、意外に思いながらも黙って聞く。
「まだ小さかった俺は、時々自分の意識が潰れてしまいそうに苦しくて、気が狂いそうになることもあったよ。だけど宝物庫に逃げてフィリシアの石像を見つめていると、そばにいると……心が凪いでいくようで、助けられた。何度も。数えきれないほど。お前に救われたよ」
「そんな、私……」
「だから俺はこんな夜、星が流れることを期待しながら、お前に話しかけていたんだ」
レオルは改まったかのように、私に向き直った。
「俺のことを助けてくれて、ありがとう」
その言葉を受けて、私はようやく、自分が従姉のルネに憧れていた理由を知った。
魔法の技術もそうだけれど。
千年前の私はいつだって、国中から恐れられ避けられていたから。
誰か一人でも、私にとってのルネのような存在に、自分もなってみたかった。
「レオルって、私が望んでいることを、なんでも叶えてしまうのね」
レオルはひるんだように、私から目を逸らす。
「自信ないけど」
「レオルが?」
「なぁリシア……その」
「? 何かしら」
レオルはしばらくの間、闇を走る数多の流星を瞳に映していたけれど、不意に決心したかのように私へ向き直った。
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