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5・魔力の練磨

 レオルは繋いでいた私の手を開くと、擦り切れたように赤いてのひらを見つめた。


 気づかれていたらしい。


「これは俺に向けて打ったあの暴発のせいか?」


「そうよ。久々だったし、あまり冷静でいられなかったから少し反動が出たの」


「それならさっきの話は忘れてくれ。無暗に使わない方が良い」


「これくらいなら平気よ。怪我と呼ぶほどでもないし」


 私の説明にレオルの切れ長の目が鋭くなったので、慌ててつけ加える。


「それに小さな暴発なら、落ち着いて使えばこんなことにもならないの。本当よ」


 私は森を見回すと、少し離れたところに木の枝からぶら下がった蜂の巣を見つけた。


 猫なのに甘党のディノから「蜂蜜が食べたいなぁ」とねだられて、たまに取ってあげたことを思い出す。


 傷のない方の手を振りかざすと、目に見えない魔力が流れて空気中で破裂し、直撃を受けた蜂の巣が落下する。


 私は少し傷ついた右手と使った左手を見比べてもらう。


 レオルは検品するかのような疑り深さで、私の両手に目を細めた。


「確かに今回は傷もなさそうだな……」


「そうでしょ? 少しだけなら、そんなに心配することもないの。あなたの剣を握りつづけた硬い手と同じようなものだし」


 周囲の蜂は魔力暴発で気を失っているため私は遠慮せずに進み、落とした巣を拾ってレオルに渡す。


「蜂蜜は好き?」


 レオルは信じられないという顔で蜂の巣を見つめた。


「あの暴発を受けて、こんなに巣の状態がいいのか? 魔力の加減と精度がここまで細やかにコントロールできるのか……」


「従姉に憧れて魔法の特訓をしたから、その成果が出ているのかもしれないわ。魔力が暴発するだけで、魔法は使えないけれど」


「すごいな。見れば見るほど、卓越された魔力の練磨だとわかる。ここまでの技術は今までに見たことも聞いたこともない」


 レオルの驚いた様子に、私はぽかんとする。


 私はただ、ルネのように魔法が使いたくて夢中になっていただけだし、周囲からも白い目で見られていたのに……そういう風に捉える人もいるのね。


「だけど乱用はしないほうがいいな。さっきの手の傷はきっとフィリシアの……いや、リシアの魔力が強すぎて、発現させるときに体へ負荷がかかったせいだろうから」


「涼しい顔して、レオルって意外と心配性なのね」


「当然だろ、あの物騒な暴発を一度食らってるんだから。頼むから俺の首は狙うなよ」


「本当ね。あの時仕留めていなくて良かったわ」


「しれっと言いやがって……。だけどあの力は加減すれば、採取にも便利だな」


「そう?」


 破壊的だと思って好きではなかった力だけれど、そう考えると悪くない気もしてきた。



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