28・恋人はいるの?
「ん?」
「レオルに恋人はいるの?」
「ずいぶんいきなりだな。しかも今さら? さすがにわかるだろ」
つまり全然わからないのは、おかしいのね。
「ごめんなさい。私、そういうことに全く気が利かないの。だからその……知らずに迷惑をかけていたのかもしれないと思うと、夜も眠れないくらいで」
「寝ろよ。身体に悪いし」
また私の心配をしてくれているけれど、その優しさが今はつらい。
「はっきりしないと眠れないわ」
逃げだしたい気持ちに耐えながらレオルを見つめて、はっとした。
彼の青い瞳に映る私は、今にも泣き出しそうな顔をしている。
レオルのてのひらが伸びてきて、私の頭をそっと撫でた。
「そんな顔、するなよ」
私……もしかして、慰められている?
困らせている?
つまり、それって……。
私はとっさに作り笑顔を張り付けてレオルから視線をそらすと、道の先を見つめた。
何か気の利いたことでも言いたかったのだけれど、声が出ない。
変ね。
そうかもしれないって感じていたのに、こんな風に思いを持て余すのは初めてで、どうすればいいのかわからないわ。
だけどようやく、自分の気持ちを思い知る。
膝の上で両手を握りしめると、その上にレオルの大きくて温かい手が覆いかぶさった。
「リシアだろ」
「……え?」
「俺の恋人は、リシアしかいないだろ?」
馬車の進む音を聞きながら、私は目をぱちぱちとしばたき、まだよくわかっていないまま返事をする。
「私に務まるかしら?」
「真面目か」
そうかしら?
ディノが考えるような、レオルを利用するよこしまな目的は持っていないつもりだけれど。
だけどきっと、一緒にいてもいいのよね?
「私、努力するわ」
「……何を?」
「だってレオルの恋人なんて大役……今まで考えたこともなかったけれど、やっぱり古代感が最重要なのでしょう?」
「意味がわからないけど、絶対勘違いしてるだろ。今まで通りでいいから」
「でも、」
「俺はそのままのリシアでいい。それともリシアの方が、俺に何か条件でもあるとか?」
「無いわ」
「なんだ。リシアのわがまま、結構聞いてみたかったけど。本当に無いのか?」
と言うか今、わがままが叶って、胸がいっぱいになっていて……何も言えそうにないので黙って頷くと、レオルは時折見せてくれるあの優しい表情になった。
「でもこれで、色々連れて行きやすくはなるか」
「そうなの?」
「覚悟しとけよ。俺、一緒に出かけて他の男が寄って来ても、問答無用で追い払うから」
レオルは珍しく、言いにくそうな口ぶりで続ける。




