…… 私の騎士さま 4
兄様の夏の休暇が終わるまで、ジョンとは毎朝、馬に乗った。
…… 土砂降りの雨の日以外は。
でも、昼間、ジョンと話す事はなかった。
食事の時間くらいしか一緒になる事はなかったから。
食事の時間は苦痛だった。
姉様達がジョンにつまらない事ばかり話しかけて困らせるから。
でも誰も止めない。
…… 無作法だから?
だけど困らせるような話をする方が無作法じゃないの?
聞きたいけど、聞かない。
こんな事なら、子供部屋でミス・キャサリンと食べる方が良い。
ミス・キャサリンは無作法を許さないから。
それに、子供部屋にジョンはいない。
…… 助けにはなれないけど、見ているだけだけど。
夏の休暇が終わって、ジョンは帰った。
最後の乗馬の時にさよならをした。
ジョンは楽しかったと言ってくれたが、また来るとは言わなかった。
それ以来、ジョンは来ない。
休暇のたびに兄様は友達を連れて来るけど。
…… ジョンはもう来ない。
姉様達が兄様にしつこく聞いてた。
誘ったけど断られたと言ってた。
…… 姉様達がしつこいからだよ。
そう思ったけど、言わなかった。
言ったらお母様に言いつけられて、叱られるに決まっている。
姉様達がバースのフィニッシングスクールに行ってしまった後は、子供部屋は平和になった。
弟達はミス・キャサリンが侮れない人物だと既に悟っていた。
ミス・キャサリンの方も弟達を既に掌握していた。
…… 時々褒めると、実力以上に頑張ると。
ただ、その時々の匙加減が難しい。
ミス・キャサリンは教材選びも巧みだった。
円卓の騎士の物語は、男の子の冒険心をくすぐった。
次第に学ぶことの楽しさを知った弟達は次々と成果を上げていった。
ラテン語やギリシャ語の基礎も取り掛かっている。
勉強は楽しい。
分からなかったことが、知れるから。
弟達と先を争うように問題を解きあう。
…… もちろん、勝ち過ぎないよう気を付けて。
姉様達がバースのフィニッシングスクールを終えて帰って来るらしい。
…… このシーズンにお披露目をするのだ。
何が楽しいのか分からないけれど。
…… 恐ろしい話を聞いた。
私がバースのフィニッシングスクールに行かせられると。
弟達をパブリックスクールに入れる事にしたので、ミス・キャサリンは辞めて貰うのだ。
…… 私ひとりのためには家庭教師を雇う必要はないのだろう。
でも、私がバースに行ったら、誰がバターカップの面倒を見るのだろう。
…… 毎日運動をさせなければならないのに。
それでもお父様とお母様の決定は変わらないだろう。
…… いつだってそうだった。
お母様に内緒でお父様にお願いしたけれど。
それでもある日、お母様に呼ばれた。
新しく作られる公爵夫人の学校に入る事になったと。
よく分からないがバターカップを連れて行っても良いらしい。
…… 他はどうでも良かった。
でも、何故、公爵夫人が学校を作るんだろう。