実は生まれる予定間違えた!?
「おぬし、あわれよのう。」
声が聞こえる。
だれ・・・
「そうか、魂の記憶すらなくなったか、だがこれも宿業、おぬしの選んだ運命の一端。」
うんめい・・・
「そうじゃ、800年前、おぬしが選んだ宿業により繰り返されるおぬしの罪、弟を、死なせるものかと選んだ末に弟に裏切られるまでに運命がこじれるとは思わなんだ。故に滑稽。」
確かに今思い返せば弟を恨んだことはこれが初めてだ。
「だが今世ではかの者が解き放たれた、故に”減刑”つまりリセットじゃ、だが此度は弟と仲良くせい、さすればこの因果からも釈放されるであろう。」
・・・あなたは・・・一体・・
「そうじゃなおぬしとは初対面ではないがこれで最後かもしれんしのう、さすれば改めて名乗ろう!我が名は幻龍ビアス、この世の音と想いを司るもの、おぬしに我が叔母、双竜神ソルランディアの加護あらんことを。」
――――――――――――――
ランぺ王国歴750年
この年、王族に新たに双子の男児が生まれた。
第四王子シベル・リング・ランぺ、第五王子イナ・リング・ランぺ
そして、3年後
ランぺ王宮・玉座の間
この日王族の習わしである魔力総量を測る、測定の儀があり
この世界では3歳までに希少種以外は魔力総量が決まる。
「では王子たちよこの水晶に手をのせてください。」
赤いローブを着た魔術師が説明する。
「兄さま!僕が先にやっていいですか!。」
今世の弟のイナ、あの義弟とは違い、かわいいやつだ。
「うん、いいよ。」
僕は快く返事する。
水晶は緑に染まり水晶の中で風が渦巻く。
「おお!これは多大な魔力量と希少な風の適性!おめでとうございます王子!。」
「やったー!兄さま父さま母様、僕やりました風です!。」
それを見て弟ははしゃぐ。
「よかったわねお母さん嬉しいわ!。」
母は微笑む。
「おお!さすが俺の子だ!。」
父、国王は弟に肩車をする。
「おめでとう。」
俺は少し苦笑気味に。
祝っていないわけではない、魔力の適性は炎、風、水、生、呪、気、暗、この七つからなり最も数が少ないのが風だ、理由は分かっていないが比較的少なく魔力量も低い、その中で弟は風の適性を得、さらには多大な魔力量を誇る、いわゆるエリート、だが俺には喜べない理由があった。
「さあシベル王子も。」
と言い、魔術師は水晶を俺の前に置く
ここで水晶は多分反応しない。王宮でまことしやかにささやかれていたうわさを聞いたことがある、『第四王子は魔力がない能無し』、この世界にとって王族にとって魔力がないというのは恥さらしでしかない、生きる価値がない、前世で義父に拾われるまでスラム街で生きていくしかなかった理由の一つだ。
そして俺は水晶に手を置いた。
・・・・・・ 水晶に反応はなかった。
「・・・こ、これは・・先ほどのイナ様の測定で調子が悪くなったのかもしれません、すぐに新しものをご用意します。」
これには赤ローブの魔術師も唖然としていた。
何度やっても結果は同じ、だって魔力がないのだから。
「・・・残念ながらシベル様に魔力はございません・・・クス・・・プ・・フッフっ。」
赤ローブは王の前だから笑いをこらえているが、抑えきれていなかった。
しだいに周りにいた数名の衛兵、侍女たちもこらえながら笑っていた。
「にいさま・・・・。」
泣くな弟よ
この世界で魔力がないのは能無しの証、嘲笑の対象。
いかに王族とはいえこれは避けられようもない。
「黙れ!私の息子を笑うな!!。」
そこには怒り狂う王座から立つ父の姿があった。
そして赤ローブに近づき剣を抜いた。
「ひっ・・・王よ!私が何をしたというのですか!。」
「・・・・・・・・・・・そうか、死ね。」
・・・・バシュ!
赤ローブは首が切られ倒れた。
「宰相!、全員黙らせろ。」
宰相のマントから細かな光が飛び
王の怒声がなるまで笑っていた衛兵と侍女が倒れる。
そして王は俺に近づき抱きしめた。
「すまない、辛かっただろう。」
温かい、前世では感じなかった感覚だ。
「兄さま!。」
弟も飛びついてきた。
「シベル!。」
母もだ。
う、少し苦しいけどこれはこれで悪くない。
だって温かいのだから。
――――――――――――――――
前世の記憶を持ったまま暗殺されたはずの第四王子におれは生まれ変わっていた。
王宮の図書館にある貴族名鑑にちゃんと前世と照らし合わせてここが過去の世界だと認識できた。
義父と義母を確認できた。
だったら元の俺はどうなるのかどうしているのか
第四王子シベルと第三王子イナが生まれたのは750年、前世で義父に拾われたのは5年後
何もしないでいったら、また義父を失い災害が起きる。
起きるのは今から七年後当時の俺は家の地下に使用人たちと避難していたから助かったが義父は先頭に立って戦い討ち死にした。
それまでに多くの力をつけなければいけない。
――――――――――
能無しと呼ばれるものには魔力ではない力が宿るといわれている、実際、前世では魔術でも治せないものを治す治癒の力がありそのおかげで義父に拾われた、でも今回もそうとは限らない、そもそもそんな力があるなら能無しと言われないだが発動条件が分からない限り使えないしそもそも気づかない人もいるらしい。
だからそんな力たちに頼らず、まずは一番確実な剣をとることにした。
「はて、わしに師事したいというのですかシベル様。」
「はい、そうです!。」
俺は今、聖剣士第七席ガルー老の休憩室に来ていた。
聖剣士ともなれば任務などで王宮にいないことは当たり前
ランぺ王国が誇る聖剣に選ばれた、七人の剣士。
その一人、『天翔剣のエゴール』
「なぜ、わしにそれこそわしより強いものなら上に今、五人おりましょうに。」
確かに適合者がいない一席以外、五人ともガルー老より強い。
だけどそれは魔術や聖剣の力を使った場合だ、剣術だけで言えばガルー老はこの国最強の御仁と言われている。
「僕は、剣術を学びたいんです、そしてあなたが一番強いと聞きました、父上の許可は必ず取ります!どうかお願いします。」
ガルー老は眼は灯のように見えた。
「ほお、いい眼をしている、いいでしょうあえて理由は聞かんでおきましょう、わしも衰えた、此度の任務でそれを痛感するに至りました、そしてもう私も長くはない、王もお暇をくださるでしょう、その間でよければ引き受けましょう。」
「ありがとうございます!」