開演
このお話は、たった一人の勇者が死ぬまでのたった一人の勇者の歴史である。
歴史は、「時の権力者が自分に都合の良い形で過去の出来事について語るもの」とされているが、たったちっぽけな一人の歴史はそんな見栄を張る必要はない。
起きたことをありのまま、ただその勇者が生きた証として残すだけのお話である。
歴史なんて言葉は、ただの飾りである。
しかし、本来後世へ伝わる歴史在り方としては正しい在り方をするお話である。
「観察日記に近くなりそうだけどね、この歴史は」
「歴史って使い方間違ってる気がするんだが、いいのかよ先生」
「いいんだよ。結局歴史を動かしたのはお前だろう、ヒイラギ」
たった一人の人生を歴史と呼ぶには大袈裟すぎる。
だから、たった一人が歩んだ人生で変わった国を、世界のお話を交えながら一つ一つ聞いて行こう。
「オレが動かしたんじゃねえよ。
国が、世界が…つまりオレ以外の他人ってやつが勝手に動いただけだ」
たった一人の勇者は語った。
それは都合のいい形でも何でもない、ただの昔話を。
「人はそれを勇者と、…英雄と呼ぶんだよ」
彼の物語は既に終わっているが、彼の物語を今から聞く者たちの中で彼の物語が終わっただなんて言う者は誰一人としていない。
そして、聞き終わった後皆こう言うだろう。
彼は、英雄だ。と。
開演。
のんびり書いて行きます。