幕末とかの幽霊と出会ったら現代人の言葉とか通用すんのかな
「確かに一緒に任務を遂行する上では互いの素性を明かし、信頼して同行すべきだな。私は…」
「ちょっと待て!一緒にその人斬りを退治しに行くのか?大丈夫か?」
「何を臆している。それでも男か貴様は。」
「いや、俺は平気だけどあんたか弱い女の子だろ?」
「はぁ、これだから男と言う奴は。私は凛堂遥。享年17だが、元は忍をやっていた。だから平気なのだ。」
すると、そこらに落ちていた石ころで数十メートル先の木の実を落とした。
「すげー!ってか、霊体なのに石ころなんて拾えるのか?」
「これは霊体になってなお、修行を怠らなかった私の努力の結果だ。霊でも人や物に触れたりする事もできる。ぽるたーがいすとと人に呼ばれるのがその成果だな。修行さえすればだがな。だが霊相手には物体は通用しない、本来人間界にあるものと霊界にあるものは別物だ。しかし、この手裏剣は別だ。」
「(姉貴と違ってちゃんと説明してくれるなこの子。)って、いてぇぇ!!」
俺の腕を遥が投げた手裏剣がかすった。
「なにすんだよ!…ってあれ?物体は霊には当たらないんじゃ…」
「修行を積み、人間界の物体を私物化してしまえば霊界でも通用するようになるのだ。」
「へぇ、ほぼ何でもありって感じだな。あ、そうだ。俺の名前は八神司。18才で。さっきの八神百合奈の弟で、まあ腕っぷしには自信ある。」
「そうか、腕には自信があるか。ならばさっそくだが人斬り幽霊の元に行くとしよう。」
と言って立ち上がり、遥について行き神社を後にした。
しばらくすると遥は立ち止まった。
「つい先程、私はこの辺りでやつを取り逃した。」
「ここって…」
真里奈が通ってる中学校の校門前だ。
「(真里奈…無事だよな。そうだ、後で姉貴に聞いてみるとすっか。)ん、あれ?さっき手裏剣が腕かすったのに傷がねえ。」
「何を言っている。私達は霊だぞ。痛みは感じたかもしれんが、それだけだ。…ん?おい、そこの物陰に隠れろ。」
俺と遥は校門の陰に隠れた。
「…なんだ。どうした?」
「奴が来た。」
俺達が来た反対側の路地から前髪で片目を隠し、ストールの様な物を首に巻いた赤紫色の着物を来た男がやって来た。
「何だあいつ。めっちゃかっけえじゃねえかよ!」
「静かにしろ司。…ん?なんだ?」
「…何か忍の女の子に現代人の俺が名前呼ばれるの照れるわ。…もっかい呼んでくださいお願いします。」
「……なっ、何を言っているのだ馬鹿者!!」
すると俺達の頭上に気配が現れた。
「何をしている。お前達。」
人斬りと呼ばれている着物の男が俺達に気付き、近づいてきた。
「くそ、気付かれてしまったか。」
「おっと。どうすんだ遥?」
「問答無用。力ずくで捕まえてやる。」
そう言うと遥は腰からクナイを取り出し人斬りに向かって突き出した。
だが、これを人斬りは脇差しで払い、もう一本の刀を抜刀し二刀流を構えた。
「そうか、貴様は先程の忍だな。また俺を捕まえにきたか。」
「当然だ。人斬りなぞ時代を越えてもお尋ね者だ。ここで私が引っ捕らえ成敗してくれる。」
俺はこの風景と状況を見て現代劇と時代劇のミックスを見ているようで変な気持ちになった。が、
「遥下がってくれ。」
「なんだと?」
「ここは俺に任せてくれよ。一回ぐれえ侍と闘ってみたかったんだ。」
「これは遊びではないのだ。二人がかりで行くぞ。」
「頼むって遥。俺は侍とタイマンはりてえんだ。な?ここは男のプライドに免じて。」
5秒程遥は黙って考えたが、
「…はぁ、これだから男と言うのは。しかし負けそうになればすぐ私が加勢する。いいな?」
「おう!さんきゅ!」
すると遥は数歩下がって俺に譲った。
「さあーて、人斬りさんよう!せいぜい楽しい喧嘩にしようぜ!」
「ふん、生ぬるい現代を生きていた貴様の様な男が、俺を甘く見るな。」
「おめえこそなめんじゃねえぞ。こんな生ぬるい現代の中でも比較的地獄の隣で生きていたんだ。そんじょそこらの奴らと一緒にすんじゃねえ。…行くぜ!!」