心霊スポットは恐らく霊の町内会が行われる集会所
「あなたは死んで、今霊体になっているのよ」
「(ん、すげえ美人でしかも巨乳だぁ!!ってかこの女…)」
どこか見覚えのある女性だが…
「久しぶりー、つかさぁー!!」
「うぉっ!」
そう言っていきなり抱きついてきた綺麗な女性。
「んん!?あ、姉貴かっ!!?」
なんと三年前に敵対していたヤクザに襲撃され命を落とした姉の百合奈だった。
「そうよー!愛しのお姉ちゃんよー!!」
「っ、待てよ。姉貴と今会ってるって事ぁ、俺は死んだのか?」
「うん、さっき言ったよね!でも寂しくないわよお姉ちゃんがいるからねー!」
すると、トシが何かに気づいた。
「さっきから何となくだけどカップルのイチャイチャしてる様な声が聞こえる気がするんだけど。彼女いない俺に対する嫌がらせかな?いや、いつまでも司の兄貴の事引きずんなって事だよな。よし!忘れよう!」
「え!忘れんのお前!?」
そうするとトシは夕日に向かって「バカヤロー!!!」と叫んで階段をダッシュで降りて行った。
「トシのやつ、え…なんなんあいつ…。」
「司、そういう事もあるわ。…そうだ!私たちの拠点に行きましょう!」
「は?拠点?なにそれ?」
すると姉貴は俺の腕を掴んで屋上から飛び降りた。
「ぅおお!!なっ、何やってんだよぉ!!」
着地成功。
「え、もう死んでるからショートカットできる事はするのよ」
「んんー、なるほど?」
「さあ出発!!」
姉貴に引っ張って行かれる状態で近所の山のふもとにある廃神社の前まで連れてこられた。
「てか、途中で姉貴宙に浮いてたよな?浮けるんなら最初から言えよな!」
「えー、幽霊って浮くものじゃない?」
「価値観がちげえーんだよたぶん。てか、どうやって浮くんだ?」
「んー、何か気がついたらできた!てか、到着だよ!」
姉貴が言ってた拠点はこの廃神社の事だった。この廃神社は小学生の頃よく幽霊が出るだの噂があった。霊を見た事なかった俺は馬鹿らしいと思っていたが、本当だったようだ。たぶん、今の俺と同族の様な奴らが数十体いる。
「拠点って言ってたけど組織みたいになってんの?」
「んー、組織って言うか今日は町内会?みたいな感じ?」
「ちょ、町内会!?幽霊に?」
「幽霊にも何か色々あるのよ、まあ説明するのは面倒だから徐々に慣れていくといいわ!」
そう言うと姉貴は廃神社の階段を登って行き、俺はその後をついていく形で階段を登って行った。
「おぉ、お頭お帰りなさいませ。」
一人の老人がそう言うと周りではしゃいでいた幽霊達が列を作って一斉に頭を下げ礼をし始めた。
「おい、組織じゃねえかよこれ!!」
ここにいる幽霊はたぶん一つの組織。しかも姉貴が組織の長みたいだ。
「いやー、わかんないけど何なんだろうねー毎回これ。あ、そうだ!可愛いの見せてあげる!」
と言うと神社の裏に連れて行かれ、そこには何匹か動物霊?がいた。
「姉貴、こいつらも幽霊?」
「そうだよ!ニホンオオカミ君に、ニホンギツネちゃんに、ヤマネコさん!」
「どうも百合奈の姉御。」
ニホンオオカミが口を開き始めた。
「え!うそ!喋れんのこのオオカミ!!」
「なんかー、幽霊は人とか動物とか関係なしに言葉交わせるらしいよー?」
俺は動物と話してみたいと言う夢が片隅にあったため嬉しさのあまりオオカミに股がった。
「なんだ!この小僧は!!」
「よし、お前今日から俺のダチな!名前は狛犬太郎だ!!」
「ワシは誇り高きニホンオオカミの末裔だ!狛犬太郎じゃと?ふざけよって、ややこしいわボケ!それにワシには名前がもうある。小次郎じゃ!!」
そう言って振り落とし、森の方へ走って行った。
「あ、あれ?怒らせちゃったかな?」
「もう司に怒るなんて後でオオカミ叱んないとね!」
「やめとけ姉貴、ブラコンも大概にしろ。」
すると森の中からオオカミが帰ってきた。
「あれ?何やってんの小次郎。」
「何がじゃ?小便に行っただけじゃぞワシは。」
「…姉貴、霊って小便すんの?」
「何言ってるのよー、霊は小便なんてしないわよ。これはオオカミ君の癖みたいなものね!」
そして、日がくれて夜になった。俺は三年ぶりに姉貴と何時間も他愛もない話をしていた。そこに、
「百合奈さん、ただいま戻りました。」
ポニーテールで小柄だが目がつり上がって気の強そうな女性がやってきた。
「あ、遥ちゃんお帰りー。」
「はい…申し訳ありません。例の人斬り幽霊取り逃してしまいました。」
「んー、人斬りの霊ってなに?」
「え?あ、百合奈さん?昨日言ってた浮遊霊を手当たり次第斬りつける侍の幽霊です!」
と遥と言う女性が言うと姉貴は立ち上がり、
「…え、…あとはこの私の可愛い弟に任せるわ。頑張って遥ちゃん、司!」
「えぇ!?百合奈さんどこに!?」
「動物霊の集会に行くの!止めないで!!」
そう言い残し姉貴はどこかに飛んで行った。
「……」
「……。」
「…百合奈さんはお前に託された。弟の司とやらどうするか?」
「そうだな、まずは自己紹介するか…。」