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Photo memory days  作者: areafa krain
1/6

写真は記憶には残らないけど、記録には残る。お嬢様と執事の切ないラブストーリー

挿絵(By みてみん)

 プロローグ

暁斗(あきと)!助けて!」

「お嬢様!」

 私が最後に見た光景は

 誘拐されて連れられて行く時に

 暁斗が必死に私を取り戻そうと

 全力疾走で

追いかけてきてくれた場面だ。

 そこで、全ての記憶を失った。


 私こと西園寺陽乃(はるの)は5年前に

 悪党に誘拐された。

 身代金と引き換えに家には

 帰ってこれたが、誘拐の

 トラウマで記憶を失った。

 今の私は過去の記憶を

 一切出来ないし、思い出せない。

 勿論、誘拐された時の記憶もだ。

 昨日の記憶さえも曖昧な時がある。


 この物語はそんな過去の記憶が出来ずに

 思い出と言う物を持てない私と

 私が誘拐された時の後悔を

 未だに引きずってしまっている

 執事の菅原暁斗との写真を

 通しての2人の人生の

思い出作りについて語ろうと思う。


1話

「お嬢様、お呼びでしょうか?」

「暁斗、私なんだかとても大切な事を

忘れている気がするんだけど

気のせいかしら?」

「お嬢様は何も忘れてはいませんよ。」

「でも、昨日の事でさえ思い出せないの。

私は過去をどうやっても決して思い出せない。

私は脳の何処かがおかしいのかしら?」

「誰でも全ての過去を覚えている人は

居ませんよ。

お嬢様が昨日の事を覚えていなくても、

私がちゃんと大切な記憶や

思い出を覚えていますから安心してください。」

「分かったわ。暁斗、ありがとう。

下がっていいわよ。」

「かしこまりました。」


俺こと菅原暁斗は5年前から西園寺家に、

執事として仕えている。

西園寺家の一人娘であり、先程

会話していたのが西園寺陽乃(はるの)様である。

彼女と俺は毎日同じようなやり取りを

繰り返ししている。

お嬢様はまだ17歳という若さであるが、

記憶障害を患っている。

詳しい病名は解離性健忘(かいりせいけんぼう)と言い、

作業の手順や物や人の名前、知識などは

覚えていられるが、自分に関する過去は

一切覚えていられない心の病だ。


その記憶障害の原因を作ったのは

俺自身だ。

5年前にお嬢様が悪党どもに

誘拐されてしまった。

その時、俺も一緒に居たのだが、

まだ新米執事で右も左も分からなかった

俺はお嬢様を悪党どもから守りきれず、

お嬢様は連れ去られてしまった。


幸いにも身代金と引き換えに

お嬢様は西園寺家に帰っては来られたが、

その後遺症として記憶障害を発症していた。

そのため、お嬢様自身は誘拐された時の

記憶は勿論の事、昨日自分がどこで

何をしていたのか、

どんな会話をしたのかさえ

上手く思い出せない状況に陥ってしまった。


全ては俺が未熟だったせいで、お嬢様を

守りきれずに記憶障害にしてしまった。

俺の生涯の(ごう)であり、

背負い続ける罪の十字架である。

その経緯もあり、俺はお嬢様に

生涯の忠誠を誓っている。

お嬢様が例え、毎日同じような質問を

してきてもお嬢様を傷つけずに

正面から向き合っている。

それが今の俺に出来るせめてもの

贖罪なのである。


しかし、俺はお嬢様が辛い事を

思い出せないのは良いとしても、

楽しかった記憶でさえ忘れてしまう事に

酷く心を痛めていた。

例え、俺が覚えていてお嬢様に

その時の事をお話ししても、

お嬢様は俺と同じように

過去の記憶が蘇る訳ではない。

そのため、何とかしてお嬢様が

楽しかった記憶を何かの形で

残す事が出来ないだろうかと

模索していたのであった。


2話

俺の父はカメラマンだった。

幼少期から世界中を渡り歩き、

数々の作品を撮影してきた。

俺は父の事を誇りに思っていた。

家に居ることは(ほとん)ど無かったが、

寂しい思いはした事は無かった。

俺には父が撮った写真があったからだ。


父の撮った沢山の写真を眺めていると、

異国の地に居る父を身近に感じる事が出来、

父が何を思い、何を感じてその写真達を

撮影したのかを想像する事が俺の

父との触れ合い方だった。


俺にとって写真は撮影した被写体や

撮影者を通して、思いや感情を

託したり残したり出来る物であった。


俺が西園寺家に仕える事になったのも、

父が西園寺家の当主であるご主人様と

親しい関係にあり、執事としての仕事を

紹介してくれたからだ。


俺は写真に対しての未練はあったが、

当時12歳だった可愛らしいお嬢様を

見て一目で今までに感じた事の無い

切ない気持ちになった。

そして、この可愛らしいお嬢様に

仕えていきたいと決意したのであった。


まだ新米執事だった俺にお嬢様は

とても優しく接して頂いた。

俺がお嬢様の前で粗相をしても、

笑って許してくれ、俺はその笑顔に

救われていた。

しかし、お嬢様と俺の人生は

あの誘拐事件をキッカケに180度

変わってしまったのであった。


誘拐事件を機にお嬢様は

笑わなくなってしまった。

そもそも事件の原因を作ったのは

未熟だった俺のせいだったので、

お嬢様には申し訳なさと後悔で

一杯だった。

しかし、生涯の忠誠を誓うと

決めた時にいつかお嬢様の記憶と

笑顔を取り戻したいと誰よりも

心から願っていたのだ。


だが、あれから5年経ち

少しずつ笑顔を取り戻されては

来ているが、記憶は一向に

戻る気配が無い。

俺は焦っていた。

このまま記憶が戻らずに

大人になってしまったら、

お嬢様の人生はこの先

どうなるのだろうと

考えるだけで不安で仕方が無かった。


そんな矢先、俺は久々に日本に帰ってきた

父と再会していたのであった。

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